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共変微分と平行移動の同値性

ここ最近書いている一連の記事はゆるく関連しています。

「共変微分と平行移動は同値な概念である」というよく知られた事実を、できるだけハッキリと記述したいなー、と思っているのです。「共変微分と平行移動の同値性」は、次の過去記事である程度は取り上げました。

しかし、この過去記事の内容は、一部分だけ切り出して述べているだけで、全体的な構造は明らかではありません。(一部分だけの)定式化も未整理な印象があります。「共変微分と平行移動の同値性」を全体的・包括的に、かつスッキリと記述したいのです。

「共変微分と平行移動の同値性」を明らかにするには、次の3つの質問に答える必要があります。

  1. 共変微分とは何か?
  2. 平行移動とは何か?
  3. 同値とは何か?

共変微分ベクトルバンドルに載る作用素なので、ベクトルバンドルEと作用素∇を組にして (E, ∇) をコジュール接続と呼びました(「コジュール接続の圏」)。単一のコジュール接続だけではなくて、コジュール接続の圏 KoszConnection も定義しました(詳細は書いてないが)。これは、「共変微分とは何か?」に答えたとみなしていいでしょう(もっとちゃんと書けばね)。

同様に、「平行移動とは何か?」に答えるには、ベクトルバンドルEとなんらかの仕掛けΠを組にした (E, Π) を対象とする圏 ParTransport を明確に定義すればいいでしょう。

「同値とは何か」と言えば、圏 KoszConnection と 圏 ParTransport が圏同値であることです。実際には、圏同値より強く圏同型がいえそうです。つまり、下の、圏と関手の図式が可換になります。

 \require{AMScd}
\begin{CD}
{\bf ParTransport}  @>{F}>>  {\bf KoszConnection} \\
@|                           @| \\
{\bf ParTransport}  @<{G}<<  {\bf KoszConnection}
\end{CD}

そうなると、やるべきことは次のようになります。

  1. ParTransport を構成する。
  2. 関手 F:ParTransportKoszConnection を構成する。
  3. 関手 G:KoszConnectionParTransport を構成する。
  4. 上記の可換図式が成立することを証明する。

これで、共変微分=コジュール接続の世界と、平行移動の世界を自由に行ったり来たりできるようになります。この往来の応用例がないとつまらないですね。例えば曲率概念を、コジュール接続の世界と平行移動の世界でそれぞれ定義して、相互関係を見るとかは面白そうです*1

ParTransport の構成の第一歩として、ベクトルバンドルE上の代数的平行移動を定義してみました。これでは不十分で、なんらかの方法で局所的・無限小的構造を与える必要があります。

局所的・無限小的構造に、バンドルの自明化が絡むとは思うのですが、とってつけたような定義は気分も悪いし理解もしにくいでしょう。「そりゃーそうなるよね」的な自然な定式化はないのかなー、と、ゆるく思案中。


[追記]ここから下は追記。[/追記]

ニュートンライプニッツの定理〈微積分の基本定理〉は次の形をしています。

 {\displaystyle \int_{a}^{b}}f(x) dx = F(b) - F(a)

共変微分においてこれに相当する等式はどんなものでしょう。おそらく、

 \overline{\displaystyle \int_{e}}_{\,\gamma} (1 + A\, dt) = \Pi(\gamma) \: : E_p \to E_q

こんなんでしょうね。

出てきている記号を説明すると:

通常のニュートンライプニッツの定理における積分は「無限の足し算」ですが、共変微分版の積分は「無限の掛け算」です。パスγの両端のあいだのマクロな線形同型写像が、微小量である接続係数の積み重ねで表現できる、という内容です。積み重ねるときに「無限の掛け算」を使います。

ニュートンライプニッツの定理を、足し算版と掛け算版に分けて考えたほうがよさそうです。

  • 足し算版ニュートンライプニッツの定理: 無限小の差を全部(無限に)足し合わせたら、有限の加法的量が得られる。
  • 掛け算版ニュートンライプニッツの定理: 無限小の比率を全部(無限に)掛け合わせたら、有限の乗法的量が得られる。

足し算と掛け算は指数・対数で行き来できます。

*1:具体的には、アンブローズ/シンガー定理〈The Ambrose–Singer theorem〉の解釈とか。

騙されるな、接続係数(クリストッフェル記号)の仕掛け

コジュール接続の圏」で、共変微分の話をしました。そこで次のようなことを書きました。

選んだひとつの共変微分に対する、他の共変微分の“差分”(End1Form(E)Ab の要素)がいわゆる“接続係数”を定めます。ただし、共変微分の空間 CovDer(E) には、特別な基準点は存在しません。一様というかノッペラボウ。

「いわゆる“接続係数”」という言い方 -- これはね、接続係数って誤解されている気がするんですよ。接続係数は差分なんだけど、差分とは思ってない人がいそうです。

  • 単一の共変微分があっても、それから接続係数を決めることはできません。
  • 2つの共変微分があってはじめて、差分としての接続係数を定義できます。

てなことをこの記事に書きます。「コジュール接続の圏」を読んでいる必要はありません。

内容:

設定と約束

共変微分を接バンドルに限る必要はないので、一般のベクトルバンドルE上の共変微分を考えます。

  • Eの底空間はMとします。Mの次元は m 。どうでもいい話だけど、M, m と大文字・小文字を揃えたかった。
  • ベクトルバンドルEの階数〈ファイバー次元〉は r とします。
  • 文字'Γ'は、バンドルのセクション空間を表すのに使います。接続係数をΓと書く習慣がありますが、記号がかち合うので、接続係数は A, B などにします。

記述を簡略にするために、次の略記を使います。

  • Φ(M) = C(M)
  • Ξ(M) = ΓM(TM) = (M上の接ベクトル場の空間)
  • Ω(M) = ΓM(T*M) = (M上の1次微分形式の空間)

Ξ(M)とΩ(M)は、関数の可換環Φ(M)上の加群と考えます。Ξ(M)とΩ(M)は、Φ(M)-加群として双対で、その標準スカラー積を <- | -> で表します。Mの開集合Uに関しても、Φ(U), Ξ(U), Ω(U), <- | -> を使います。

ΓM(E), ΓM(U, E) も短く書きたいので、Σ(M), Σ(U) とします。総和記号と紛らわしいですが、'Σ'は sections の S だと思ってください。

うまく開集合Uを選んであげると、Σ(U), Ξ(U), Ω(U) すべてが有限階数の自由加群になります。つまり、Σ(U), Ξ(U), Ω(U) それぞれに、Φ(U)-加群としての基底を取れます。加群の基底に1から始まる番号を付けたものをフレーム〈frame〉といいます*1。選んで固定した各加群のフレームを次のように表します。

  1. Σ(U) のフレーム: e1, ..., er
  2. Ξ(U) のフレーム: X1, ..., Xm
  3. Ω(U) のフレーム: ω1, ..., ωm

ここで、X1, ..., Xm と ω1, ..., ωm は互いに相反フレーム〈reciprocal frame〉だとします*2。その意味は:

Uが座標近傍のときは、 X_i = \frac{\partial}{\partial x^i}, \: \omega^i = dx^i と決めることが多いでしょうが、そう決める必要はありません。計算が不便になる(実用上は困る)のを覚悟するなら、X1, ..., Xm と ω1, ..., ωm が相反フレームであるという仮定も不要です。

接続係数

∇をベクトルバンドルE上の共変微分だとします。∇は、ライプニッツ法則を満たすR-線形写像です。∇の代数的な表現に関しては、「双線形写像のカリー化」を読むとよいかも知れません。

多様体全体Mとその一部分Uでは事情が違うので、

  •  \nabla^M :\Sigma(M) \to \Sigma(M)\otimes_{\Phi(M)}\Omega(M)
  •  \nabla^U :\Sigma(U) \to \Sigma(U)\otimes_{\Phi(U)}\Omega(U)

のように、∇の肩にMやUを付けるべきですが(興味があれば「ビッグサイト微分幾何と自然変換の上付き添字」を)、面倒だから省略します。また、以下では開集合Uに関して話をします(局所的議論)。

共変微分∇は上のような写像だとして、s∈Σ(U), X∈Ξ(U) に対して、

  • X(s) := (∇s)(X)

と定義します。これは若干イイカゲンな書き方で、右辺の (∇s)(X)(∇s に、Xを入力している)では、∇s を“Xを受け取る関数”とみてますが、それは次の同型を使った同一視をしてます。(R-Lin(-, -) は、R-線形写像の空間。)

  •  \Sigma(U)\otimes_{\Phi(U)}\Omega(U) \cong \Phi(U)\mbox{-}Lin(\Xi(U), \Sigma(U))

そして、∇の接続係数Aは、次の等式が成立するように定義します。(1..r = {1, ..., r} です。)

  •  \mbox{For}\: \beta \in 1..r,\: \nabla_{X_i}(e_\beta) = \sum^{\alpha \in 1..r}_{i\in 1..m} A^\alpha_{\beta\; i} (e_\alpha \otimes \omega^i)

共変微分∇だけから接続係数Aがちゃんと決まるじゃないか、って? いやいやいや、それは騙されている。 A = (A^\alpha_{\beta\; i} )^{\alpha \in 1..r}_{\beta \in 1..r,\; i \in 1..m} は、∇だけで決まっているんじゃないんですよ。

Σ(U) のフレーム e1, ..., er を選んでいるでしょ。この段階で、基準となる共変微分 ∇' を固定しているのです。接続係数 A は、∇と∇'との差 A = ∇ - ∇' として決まるのです。

フレームが決める標準共変微分

共変微分∇があるとして、セクション s∈Σ(U) を∇で微分したらゼロだったとします。このとき、セクション s は ∇ に関して静止している〈stationary〉といいます。「静止」は物理・力学が起源なんでしょうが、あまり言葉を気にしてもしょうがないです。次の定義(だけ)を頭に入れてください。

  • sが(∇に関して)静止している :⇔ ∇s = 0

Φ(U)-加群 Σ(U) のフレーム e1, ..., er のメンバーであるすべてのセクションが静止しているとき、このフレームは静止している静止フレーム〈stationary frame〉だ)といいます。

次に、共変微分は特になくて、フレームありきの状態を考えます。e1, ..., er が Σ(U) = ΓM(U, E) のフレームです。さて、このフレームを静止させるような共変微分は存在するでしょうか? ∇' をそうなるように作っちゃえばいいのです。

まず、

  • ∇'(eα) = 0 (α∈1..r)

eα に関数 f∈Φ(U) を掛け算した feα に関しては、ライプニッツ法則から、

\:\:\:\: \nabla'(f e_\alpha) \\
= df \otimes e_\alpha + f(\nabla' e_\alpha) \\
= df \otimes e_\alpha

 df \otimes e_\alphaテンソル積の左右を逆に書いたほうがいいけど、「テンソル積の順序はテキトー」でいいとします。

Eの任意のセクション s∈Σ(U) は、 s = \sum_{\alpha\in 1..r} f^{\alpha}e_\alpha と書けます。その微分は、

\:\:\:\: \nabla'(s) \\
= \nabla'(\sum_{\alpha\in 1..r} f^{\alpha}e_\alpha) \\
= \sum_{\alpha\in 1..r} \nabla'(f^{\alpha}e_\alpha) \\
= \sum_{\alpha\in 1..r} d(f^{\alpha})\otimes e_\alpha \\

以上で、 \nabla' : \Sigma(U) \to \Sigma(U) \otimes_{\Phi(U)} \Omega(U) が完全に決まりました。もちろん、∇' に関してフレーム e1, ..., er は静止しています。そうなるように作ったので。こうやって作った共変微分 ∇' をフレーム e1, ..., er標準共変微分canonical covariant derivative〉と呼ぶことにします。

書き方の注意

通常、関数 f∈Φ(U) をベクトル場 X∈Ξ(U) により方向微分したものを Xf = X(f) と書きます。僕、この書き方きらいです。Xにfを掛け算したいとき、右からの掛け算 Xf が禁止されてしまいます。それがイヤッ。

微分作用素を d:Φ(U)→Ω(U) としたとき、外微分の定義から df(X) = <df | X> は方向微分と同じです。なので、Xf の代わりに df(X) が使えます。とはいえ、方向微分の気分を出したいので、dXf = df(X) という書き方も使うことにします。

こうすると、共変微分の書き方と整合します。

共変微分 微分
 \nabla= \nabla^U\; : \Sigma(U) \to \Sigma(U)\otimes_{\Phi(U)}\Omega(U)  d = d^U\; : \Phi(U) \to \Phi(U)\otimes_{\Phi(U)}\Omega(U)
\nabla s \in \Sigma(U)\otimes_{\Phi(U)}\Omega(U) d f \in \Phi(U)\otimes_{\Phi(U)}\Omega(U)
 \nabla_X s = \nabla s(X) \in \Sigma(U)  d_X f = df(X) \in \Phi(U)

計算するときは、次のような同型/同一視を(ときに暗黙に)使います。

  1.  \Phi(U)\otimes_{\Phi(U)}\Omega(U) \cong \Omega(U)
  2.  \Sigma(U)\otimes_{\Phi(U)}\Omega(U) \cong \Phi(U)\mbox{-}Lin(\Xi(U), \Sigma(U))
  3.  \Phi(U)\otimes_{\Phi(U)}\Omega(U) \cong \Phi(U)\mbox{-}Lin(\Xi(U), \Phi(U))
  4.  \Sigma(U)\otimes_{\Phi(U)}\Omega(U) \cong \Omega(U)\otimes_{\Phi(U)}\Sigma(U)

この書き方と同型/同一視を使って、ライプニッツ法則を幾つかの形で書いてみましょう。

  •  \nabla(fs) = (df)\otimes s + f(\nabla s)
  •  \langle \nabla(fs) \mid X \rangle = \langle (df)\otimes s \mid X \rangle + \langle f(\nabla s) \mid X \rangle
  •  (\nabla(fs))(X) = ( (df)\otimes s)(X) + (f(\nabla s))(X)
  •  \nabla_X(fs) = (d_X f) s + f(\nabla_X s)

[追記]
f(...) と書くと、関数fに引数"..."を渡したように見えちゃうなー。関数とセクションの掛け算には、明示的な掛け算記号(ドット)を付けることにすると:

  •  \nabla(f \cdot s) = (df)\otimes s + f \cdot (\nabla s)
  •  \langle \nabla(f \cdot s) \mid X \rangle = \langle (df)\otimes s \mid X \rangle + \langle f \cdot (\nabla s) \mid X \rangle
  •  (\nabla(f \cdot s))(X) = ( (df)\otimes s)(X) + (f\cdot (\nabla s))(X)
  •  \nabla_X(f \cdot s) = (d_X f)\cdot s + f \cdot (\nabla_X s)

 \langle \omega \otimes s \mid X \rangle = \langle s \otimes \omega \mid X \rangle = s \cdot \langle \omega \mid X \rangle  = \langle \omega \mid X \rangle \cdot s とかも使ってますね。厳密に言えばイコールじゃないけど。
[/追記]

フレームの取り替え

Φ(U)-加群 Σ(U) = ΓM(U, E) のフレームを選ぶと、自動的にベクトルバンドルEの(U上の)標準共変微分を特定したことになります。そして、他の共変微分∇を標準共変微分との差として記述することになります。共変微分∇を別なフレームから見れば、別な見え方になるでしょう。その様子は、次のような絵に描けます。

この絵では、共変微分を点で、接続係数(差分)を矢線で表しています。実は雰囲気的な絵じゃなくて、(無限次元空間における)幾何的状況を割と正確に表現した絵なんです。なぜなら、共変微分全体の空間は、E値微分形式*3のアーベル群 Σ(U)\otimesΩ(U) を構造群とする主等質空間であり、実数上のアフィン空間でもあるからです。詳しくは「コジュール接続の圏 // 共変微分の空間」を参照。

もう一度上の絵を見てください; ∇'はフレームの標準共変微分です。∇'から∇を見たときの接続係数(差分)がAです。∇''は別な(第二の)フレームの標準共変微分だとします。∇''から∇を見たときの接続係数(差分)がBですね。そして、2つのフレームの標準共変微分の差=接続係数がCです。次の関係は明らかでしょう。

  • C + B = A
  • B = -C + A = A - C

接続係数Aが分かっている状況で、第二のフレームによる接続係数Bを計算したいなら、∇'から見た∇''の接続係数Cを求めて引き算すればいいのです。

C = ∇'' - ∇' を求めましょう。∇'を決めているフレームを eα(α∈1..r)、∇''を決めているフレームを gγ(γ∈1..r)とします。フレーム eα とフレーム gγ は、Φ(U)係数のr×r行列でお互いに移りあえるはずです。

  •  g_\gamma = \sum T_\gamma^\alpha e_\alpha
  •  e_\alpha = \sum S_\alpha^\gamma g_\gamma

 T = (T_\gamma^\alpha)_{\gamma \in 1..r}^{\alpha \in 1..r},\; S = (S_\alpha^\gamma)_{\alpha \in 1..r}^{\gamma \in 1..r} は、関数(Φ(U)の要素)係数の正方行列で、互いに逆行列になっています。

第一のフレーム 第二のフレーム
 e_\alpha \:(\alpha \in 1..r)  g_\gamma \:(\gamma \in 1..r)
標準共変微分  \nabla' 標準共変微分  \nabla''
 \nabla' e_\alpha = 0  \nabla'' g_\gamma = 0
 e_\alpha = \sum S_\alpha^\gamma g_\gamma  g_\gamma = \sum T_\gamma^\alpha e_\alpha

∇'から見た∇''の接続係数(差分)Cは、次の等式で規定されるのでした。

  •  \nabla'' e_\beta = \sum C_{\beta\; i}^{\alpha} (e_\alpha\otimes \omega^i)

接続係数Cを別な方法 -- 行列による変換にライプニッツ法則を適用する方法で計算してみます。

\:\:\:\: \nabla'' e_\beta \\
= \nabla'' (\sum S_\beta^\gamma g_\gamma) \\
= \sum \nabla''(S_\beta^\gamma g_\gamma) \\
= \sum ( (dS_\beta^\gamma) \otimes g_\gamma + S_\beta^\gamma(\nabla'' g_\gamma)) \\
= \sum ( (dS_\beta^\gamma) \otimes g_\gamma) \\
= \sum ( (dS_\beta^\gamma) \otimes \sum T_\gamma^\alpha e_\alpha) \\
= \sum ( (dS_\beta^\gamma) \otimes T_\gamma^\alpha e_\alpha) \\
= \sum ( (dS_\beta^\gamma)T_\gamma^\alpha \otimes e_\alpha)

ここで、総和は上下に出現する添字に渡って取る、というルールを使っています。まだ、計算は終わっていません。一般に、関数の外微分 df は次の表示を持ちます。

  •  df = \sum (d_{X_i}f) \omega^i

局所座標から誘導されるフレームの場合はお馴染みでしょう。

  •  df = \sum (\frac{\partial f}{\partial x^i}) dx^i

 dS_\beta^\gamma = d(S_\beta^\gamma) をこの表示で展開して:

  •  dS_\beta^\gamma = \sum (d_{X_i}S_\beta^\gamma) \omega^i

これを使って計算を続けます。

\:\:\:\: \sum ( (dS_\beta^\gamma)T_\gamma^\alpha \otimes e_\alpha) \\
= \sum ( (\sum (d_{X_i}S_\beta^\gamma) \omega^i)T_\gamma^\alpha \otimes e_\alpha) \\
= \sum ( \sum (d_{X_i}S_\beta^\gamma) T_\gamma^\alpha) ( e_\alpha \otimes \omega^i)

以上で、テンソル加群の二重添字フレーム  e_\alpha \otimes \omega^i (α∈1..r, i∈1..m)に関して、Cの成分表示が2種類得られたので、これらを比較すれば:

  •  C^\alpha_{\beta\;i}   = \sum (d_{X_i}S_\beta^\gamma) T_\gamma^\alpha

おわりに

記事タイトルに出した(第二種の)クリストッフェル記号とは、リーマン多様体Mの接バンドルTMの、計量から導かれる共変微分∇の接続係数のことです。接バンドルのフレーム(通常は局所座標から作られるフレーム)を選ぶと標準共変微分が決まるので、それに対する∇の接続係数=差分の成分表示が、クリストッフェル記号ですね。

特別な状況を仮定しない一般的なベクトルバンドルでは、局所座標/局所座標から作られるフレーム/計量などと関わりがありません。色々な概念が一緒に入り込むと、どうしてもゴチャゴチャになるので、プレーンなベクトルバンドルの共変微分を調べておくほうがクリアな理解が得られる気がします。

*1:Φ(U)-加群Σ(U)のフレームとは、ベクトルバンドルEのフレーム場(あるいはフレームセクション)です。それはまた、Eのフレームバンドル frame(E) のセクションでもあります。

*2:双対フレームと呼ばれることが多いですが、普通の意味の双対じゃないので「相反」とします。

*3:ベクトルバンドル(のセクション)が係数となる微分形式の書き方は色々あって分かりにくいですね。必要があれば「拡張された係数を持つ微分形式の空間の書き方」を参照してください。

代数的平行移動

最近、ベクトルバンドルと共変微分、つまりコジュール接続について考える機会があったのですが、共変微分と同値な概念として平行移動があります。共変微分の代わりに平行移動が使えるのなら、

となります。

この話題については以前述べたことがあります。

上記の記事では、平行移動から共変微分を作り出すために、局所的・無限小的な議論をしています。そのため、ゴチャゴチャした印象があります*1

ここでは、いったん局所的・無限小的なことは忘れて、平行移動の代数的、あるいは圏論的な構造だけに注目してみます。代数的に定義した平行移動は、それだけでは共変微分に結び付きませんが、スッキリはしています。

内容:

ベクトルバンドルのアイソ圏

これから出てくるベクトル空間はすべてR上のベクトル空間なので、いちいち「R上の」は言いません。また、幾何的な対象物はすべてなめらかなので「なめらかな」も原則的に言いません(例外あり)。

多様体Mとその上のベクトルバンドルEを選んで固定します。点 p∈M に対してファイバーEpは有限次元ベクトル空間なので、Ep∈|FdVect| です。FdVectは有限次元ベクトル空間の圏です。

ベクトルバンドルEのファイバー達を全部パランパランに切り離して、それらのファイバー・ベクトル空間のあいだの線形同型写像の集まりを考えると、それは圏になります。この圏の作り方の詳しいことは次に書いてあります。

Eのファイバー・ベクトル空間と線形同型写像からなる圏は、Eのアイソ圏〈Iso圏 | Iso category〉と呼ぶことにします。ファイバー達は分離され〈isolated〉、射は同型射〈isomorphism〉だからアイソな圏です。

上記の過去記事では、ベクトルバンドルEのアイソ圏をIso(E)と書きましたが、ここでは IsoCatE とします。次の性質が重要です。

  • |IsoCatE| = |E| = M = (Eの底空間)
  • IsoCatE(p, q) = IsoFdVect(Ep, Eq) = (線形同型写像の集合)

この圏では、対象=点のあいだの位相的・幾何的関係性は完全に失われています。

区分なめらかな終端付きパスの圏

「曲線」「経路」「パス」は区別しないで同義語として扱います。いずれも、実数区間から多様体への写像の意味です。注意すべきは、実数区間の形です。開区間と閉区間では事情が変わってきます。開区間からの曲線と閉区間からの曲線を区別する言葉がないですね。開曲線/閉曲線はまったく別な意味だし。ここでは、閉区間からの曲線/経路/パスを、終端付き曲線/経路/パス〈ended {curve | path}〉と呼ぶことにします。閉区間からの写像なら、端点〈end point〉があるので。

連続写像としての終端付きパス [0, r]→M が、閉区間 [0, r] の有限個の点を除いてなめらかなとき、区分なめらか〈piecewise smooth〉といいます。多様体M上の、区分なめらかな終端付きパスの全体を PSEPathM と書きましょう。

(γ:[0, r]→M)∈PSEPathM のとき、次のように定義します。

  • src(γ) := γ(0) ∈M
  • trg(γ) := γ(r) ∈M
  • param(γ) := [0, r] ∈CRightInterv(R)

paramはパラメータ区間のつもりです。CRightInterv(R) は、[0, r]の形をした実数の閉区間〈closed interval〉全体の集合です。

γ:[0, r]→M, δ:[0, s]→M が2つの区分なめらかな終端付きパスとして、γ[r] = δ[0] ならば、γとδを繋いだパス [0, r + s]→M を作れます。繋いだパスを γ;δ と書きます。

一点 p∈M での自明なパス trivp は、[0, 0]→M で値がpであるものとして定義します。γ:[0, r]→M, γ(0) = p, γ(1) = q のとき、trivp;γ = γ;trivq = γ です。

既にお分かりと思いますが、(M, PSEPathM, src, trg, triv, ;) は圏をなします。記号の乱用で、この圏のことも PSEPathM と書きます。

  • PSEPathM = (M, PSEPathM, src, trg, triv, ;)

圏のホムセットは:

  • PSEPathM(p, q) := {γ∈PSEPathM | γ(0) = p かつ γ(1) = q}

実数の右閉区間(CRightInterv(R) の要素)の連接 # を次のように定義すると、[0, 0] を単位とするモノイドになります。

  • [0, r]#[0, s] = [0, r + s]

もちろん、モノイドとして (CRightInterv(R), #, [0, 0]) \cong (R≧0, +, 0) です。モノイドは圏とみなせるので、param:PSEPathM→CRightInterv(R) は関手になります。

圏論からのいくつかの概念

C上の自己反変関手 J:CopC が次をを満たすとき、Jを厳密対合関手〈strict involutive functor〉、または単に厳密対合〈strict involution〉と呼びます。

  1. Jは、対象の上では恒等〈identity-on-objects〉である。i.e. For A∈|C|, J(A) = A
  2. '*' を関手の結合記号(図式順)だとして、 J*J = IdC 。i.e. For f in C, J(J(f)) = f

Cがすべての射が可逆である圏のとき、J(f) := f-1 とすると、Jは厳密対合になります。ベクトルバンドルのアイソ圏はすべての射が可逆なので、この方法で厳密対合を持つ圏になります。

(C, J), (D, J') が厳密対合を備えた2つの圏として、関手 F:CopDop が J*F = F*J' を満たすなら対合を保存する〈preserve involution〉といいます。なお、CopDop の関手とは、CD の関手と思っても同じです。

2つの圏 C, D が対象類を共有している(|C| = |D|)とき、関手 F:CD の対象パートが恒等写像ならば、Fは対象上で恒等〈identity-on-objects〉だといいます。厳密対合Jは対象上で恒等な(反変)関手です。

代数的平行移動

ベクトルバンドルの話に戻ります。ベクトルバンドルEが与えられると、そのアイソ圏 IsoCatE と、底空間上の区分なめらかな終端付きパスの圏 PSEPath|E| という2つの圏を作ることができます。2つの圏 IsoCatE と PSEPath|E| の対象集合は、どちらも |E| = M です。

前節で述べたことから IsoCatE は厳密対合(射を逆にする)を持ちます。実は、PSEPath|E| も厳密対合を持ちます。パス γ:[0, r]→M に対して、パラメータ付けを逆転します。

  • γ(t) := γ(r - t)

γ \mapsto γ は、圏 PSEPath|E| 上の厳密対合になります。

以上で、対象集合を共有する2つの”厳密対合付き圏”が出来上がりました。これで、代数的平行移動を定義できます。ベクトルバンドルE上の代数的平行移動〈algebraic parallel {transport | translation}〉とは、厳密対合付き圏 PSEPath|E| から 厳密対合付き圏 IsoCatE への、対合を保存する対象集合上で恒等な関手です。

この定義から、平行移動 Πとは、PSEPath|E|→IsoCatE という関手です。が、対象集合 |E| = M 上では恒等なので話は簡単です。射に対する対応だけを考えることにします。関手 Π のホムセットへの制限を Πp,q:PSEPath|E|(p, q)→IsoCatE(p, q) と書くことにして:

  1. 結合を結合に移す: Πo,q(γ;δ) = Πo,p(γ);Πp,q(δ)
  2. 恒等射を恒等射に移す: Πp,p(trivp) = idEp = (Ep→Ep の恒等線形写像)
  3. 対合を保存する: Πq,p) = (Πp,q(γ))-1

冒頭で述べたように、この定義では、局所的・無限小的性質は無視しています。本来の平行移動にするには、代数的平行移動の“微分可能性”を定義して、それを条件に付け加えます。

とりあえず、代数的(圏論的)部分だけを要約するなら:

  • 代数的平行移動とは、対合を保存する対象集合上で恒等な関手 Π:PSEPath|E|→IsoCatE である。
  • ベクトルバンドルE上の代数的平行移動の全体は、関手の集合 InvIooFunctor(PSEPath|E|, IsoCatE) (対合を保存する対象集合上で恒等な関手の全体)である。

関手の集合を関手の圏にしたいなら、代数的平行移動のあいだの射(自然変換)*2を導入する必要がありますが、今日はこのへんで。

*1:局所的・無限小的な議論がある程度複雑になるのは致し方ないのですが、もう少し整理できないかな、改善できないかな、と考えています。

*2:[追記]射が自然変換だとは限らないですね。[/追記]

双線形写像のカリー化

カリー化と線形代数微分幾何に関する小ネタです。

内容:

設定と約束

RとFは可換環で、R⊆F (RはFの部分可換環)だとします。A, B などはF-加群だとします。R⊆F だったので、A, B などはR-加群でもあります。文字の使用法は次のように約束しましょう。

文字 用途
α, β Rの要素
f, g Fの要素
a, b, a', b' A, B の要素
K 双線形写像

微分幾何での想定(あくまで一例)は:

  1. R = R
  2. F = C(M) (Mは多様体
  3. A = ΓM(TM) (TMはM上の接ベクトルバンドル
  4. B = ΓM(E) (EはM上のベクトルバンドル
  5. K = ∇ : ΓM(TM)×ΓM(E)→ΓM(E) (二変数とみなした共変微分

各種の写像〈関数〉の集合を次のように書くことにします。

  1. Map(A, B) : 集合(とみなした)Aから集合(とみなした)Bへの写像の全体
  2. R-Lin(A, B) : R-加群(とみなした)AからR-加群(とみなした)BへのR-線形写像の全体
  3. F-Lin(A, B) : F-加群AからF-加群BへのF-線形写像の全体
  4. R-BiLin((A, B), C) : R-加群(とみなした) A, B から C へのR-双線形写像の全体
  5. (F, R)-BiLin((A, B), C) : F-加群Aと、R加群(とみなした)Bからの、左変数〈第一変数〉に関してF-線形、右変数〈第二変数〉に関してR-線形な双線形写像の全体

Rに関する双対と、Fに関する双対を次のように書きます。

  • A{}^{\underset{R}{\ast}} := R-Lin(A, R)
  • A{}^{\underset{F}{\ast}} := F-Lin(A, F)

A, B などは、F-加群として次の良い性質を持つと仮定します。

  •  (A^{\underset{F}{\ast}})^{\underset{F}{\ast}} \cong A
  •  F\mbox{-}Lin(A, B) \cong B\otimes_{F}A^{\underset{F}{\ast}}

以下、Fに関する双対とFに関するテンソル積しか出てこないので、(-){}^{\underset{F}{\ast}} \otimes_{F} を単に (-)*, \otimes と書きます。

カリー化

K:A×B→C が K∈(F, R)-BiLin((A, B), C) だとします。つまり、次が成立します。

  1. K(a + a', b) = K(a, b) + K(a', b)
  2. K(fa, b) = fK(a, b)
  3. K(a, b + b') = K(a, b) + K(a, b')
  4. K(a, αb) = αK(a, b)

Kの左カリー化を K とします。カリー化については「リー微分は共変微分か? -- 代数的に考えれば // カリー化, ラムダ記法と無名ラムダ変数」を参照してください。

とりあえず、集合と写像のレベルで:

  • K:B→Map(A, C)

実際には、b∈B に対する K(b)∈Map(A, C) はF-線形写像です。計算してみます。

  (K(b))(a + a')
= K(a + a', b)
= K(a, b) + K(a', b)
= (K(b))(a) + (K(b))(a')

  (K(b))(fa)
= K(fa, b)
= fK(a, b)
= f(K(b))(a)

したがって、左カリー化 K は次のような写像になります。

  • K:B→F-Lin(A, C)

F-Lin(A, C) \cong C\otimesA* という同型を使うと、

  • K:B→C\otimesA*

とみなしてかまいません。

共変微分

最初に述べた微分幾何での設定で考えましょう。

  1. R = R
  2. F = C(M) (Mは多様体
  3. A = ΓM(TM) (TMはM上の接ベクトルバンドル
  4. B = C = ΓM(E) (EはM上のベクトルバンドル
  5. K = ∇ : ΓM(TM)×ΓM(E)→ΓM(E) (二変数とみなした共変微分

∇の左カリー化 ∇ は次の写像になります。

  • ∇:ΓM(E)→ΓM(E)\otimesΓM(TM)*

ΓM(TM)* = Ω(M) = (M上の1次微分形式の加群) なので、

  • ∇:ΓM(E)→ΓM(E)\otimesΩ(M)

ニ変数の∇と、それをカリー化した ∇ を区別せずに書いてあることが多いので注意しましょう。∇←→∇ と同様な置き換えや同一視はしばしば使われます。

コジュール接続の圏

先週ボンヤリと考えていたことがあったんですが、ちょっと面倒になってきて気力萎え。だけど、いつかまた興味と気力が湧いたときに参照できるようにメモ書きを残しておきます。思い出すときのヒントは書きますが、詳しい話ではありません。あやふやなところもあります。

コジュール接続とは、ベクトルバンドルEと、E上の共変微分∇で構成される構造です。コジュール接続の全体を圏に仕立てると嬉しい気がします。例えば、曲率が自然変換になるんじゃないかと(未確認)。

グロタンディーク構成を何度も繰り返し使います。なんだか「指標のパラメータ化とグロタンディーク構成」と関係しそうな気がします。

内容:

コジュール接続

バンドルの「接続」には色々な種類があります。

接続の種類 接続を載せる対象物 定義の手段
エーレスマン接続 任意のバンドル 水平部分空間の分布
主接続 G-主バンドル Gのリー環に値を取る微分形式
コジュール接続 ベクトルバンドル セクション空間の共変微分作用素

他にもあるかも知れませんが、よく使われる接続はこの三種類でしょう。エーレスマン、コジュールは人名です。

  • シャルル・エーレスマン〈Charles Ehresmann〉
  • ジャン=ルイ・コジュール〈Jean-Louis Koszul〉

コジュールは、「コシュル」、「コスル」というカタカナ表記も見ますが、Forvoで発音を聞くと「コジュール」に近いようです。長音記号「ー」のところにアクセント*1があります。なお、主接続は(一般化された)カルタン接続とも言います。カルタンは Élie Cartan です。

ここで使う記法は次の記事にあります。

より詳しい説明は:

さて、コジュール接続〈Koszul connection〉は、ベクトルバンドルEと共変微分∇の組 (E, ∇) ですが、∇は次のようなR-線形作用素です。

  •  \nabla : \Gamma(E) \to \Gamma(E \underset{|E|}{\otimes} T^\ast(|E|) )

ここで、|E|はEの底空間で、\underset{|E|}{\otimes} は、ベクトルバンドルの(|E|上の)テンソル積を表します。∇はR-線形ではあっても、Φ|E| = C(|E|) 係数では線形ではなくて*2ライプニッツ法則を満たします。

共変微分の空間

ベクトルバンドルEに対して、E上の共変微分〈covariant derivative〉の集合を CovDer(E) とします。とりあえず、CovDer(E) は単なる集合だとします。どんなベクトルバンドル上にも共変微分が存在するので、CovDer(E) は空ではありません。

 \Gamma(end(E)\underset{|E|}{\otimes} T^\ast(|E|) ) は、代数〈多元環〉バンドル end(E) に値を持つ1次微分形式の空間になります。これを End1Form(E) と書いて、エンド1-形式〈endo1-form〉の空間/加群と呼びます。加群とみなすときの係数可換環は Φ|E| = C(|E|) です。もちろん、End1Form(E) の要素を、Eのエンド1-形式と呼びます。

Eのセクション s∈Γ(E) と、Eのエンド1-形式 a∈Γ(end(E)\underset{|E|}{\otimes}T*(|E|)) があるとき、aが左から作用する掛け算 a・s を次のように定義します。

  • For p∈|E|,
    (a・s)(p) := evp(a(p), s(p))

evp は、点pにおける end(Ep)×Ep→Ep という評価射〈evaluation {morphism | map}〉です。この掛け算は、(-・-):End1Form(E)×Γ(E)→Γ(E) という(ベクトル空間および加群の)双線形写像を定義します。これは、行列と縦ベクトルの掛け算の類似物です。

∇∈CovDer(E), a∈End1Form(E) のとき、∇ + a は共変微分になります。掛け算の演算子を明示的に書くなら、∇ + (a・) となります。ライプニッツ法則を確認してみます*3

For s∈Γ(E), f∈Φ|E|
    (∇ + (a・))(fs)
 =  ∇(fs) + a・(fs)
 =  df\otimess + f∇s + f(a・s)
 =  df\otimess + f(∇s + a・s)
 =  df\otimess + f(∇ + (a・))s

同様にして、次も示せます。

  • ∇, ∇'∈CovDer(E) ならば、(∇ - ∇')s = a・s となる a∈End1Form(E) が一意的に存在する。

一般に、集合Sに群Gが右から*4作用(記号'*')しているとして、次が成立するとき、SとG作用からなる構造をG-主等質空間〈G principal homogeneous space〉と呼びます*5

  • (s, g)  \mapsto (s, s*g) : S×G→S×S は全単射となる。

群Gを主等質空間の構造群〈structure group〉と呼ぶことにします。

集合 CovDer(E) と可換群〈アーベル群〉End1Form(E)Ab の組み合わせは主等質空間になります。ここで、End1Form(E)Ab は、加群の足し算だけ考えたアーベル群のこと*6です。集合 CovDer(E) への可換群 End1Form(E)Ab の作用は:

  • (∇, a)  \mapsto ∇ + (a・)

主等質空間の構造群は単なるアーベル群であって、加群やベクトル空間ではないことに注意してください*7。選んだひとつの共変微分に対する、他の共変微分の“差分”(End1Form(E)Ab の要素)がいわゆる“接続係数”を定めます。ただし、共変微分の空間 CovDer(E) には、特別な基準点は存在しません。一様というかノッペラボウ。

ベクトルバンドルとEPペアの圏

ベクトルバンドルとバンドル射の圏を VectBundle とします。バンドル射 f = (ftot, fbase) : E→F は、次の図式を可換にするものです。

\require{AMScd}
\begin{CD}
E_{tot}   @>{f_{tot}}>>  F_{tot} \\
@V{\pi_E}VV              @VV{\pi_F}V \\
E_{base}  @>{f_{base}}>> F_{base}
\end{CD}

多様体 M∈|Man| を固定して、底写像(底空間のあいだの写像)が idM であるバンドル射からなる圏は VectBdl[M] とします。「M上のバンドル射」と言った場合、VectBdl[M] の射を指すとします。VectBdl[-]:ManCAT はインデックス付き圏になり、次の圏同型が成立します。

 {\bf VectBundle} \cong {\displaystyle \int_{\to\:{\bf Man}}} {\bf VectBdl}[\mbox{-}]

積分記号はグロタンディーク構成(平坦化)です(「グロタンディーク構成と積分記号」参照)。

f:E→F in VectBundle に対して、|E|上のバンドル射 f~:E→(fbase)#F が決まります(上付きシャープはベクトルバンドルの引き戻しです)。さらに、バンドル射 f~ から Γ(hom(E, (fbase)#F)) の要素(セクション)が決まります。この過程がfのセクション化です(「ベクトルバンドル射の逆写像: 記法の整理をかねて // ベクトルバンドル射のセクション化」参照)。fのセクション化(で得られたセクション)を、σ(f) と書くことにします。

バンドル射 f = (ftot, fbase) : E→F in VectBundle の代わりに、底写像 fbase とfのセクション化 σ(f) の組 (fbase, σ(f)) を使っても同じことです。これをヒントに、ベクトルバンドルのあいだに新しい射を定義します。

新しい射は、ベクトルバンドルのあいだのEPペア〈EP pair〉と呼びます。EPベアは、別な文脈で紹介したことがあります。

ベクトルバンドル E, F のあいだのEPペアは、底写像 φ:|E|→|F| と、セクション s∈Γ(hom(E, φ#F)), セクション t∈Γ(hom(φ#F, E)) の組 (φ, s, t) です。次の条件を要求します。

  • すべての点 p∈|E| において、s, t を線形写像 sp:Ep→Fφ(p), tp:Fφ(p)→Ep とみなして、sp;tp = idEp が成立する。

sをEPペアの埋め込み〈embedding〉、tをEPペアの射影〈projection〉と呼びます。

EからFへのEPペア (φ, s, t) を一文字fで表したときは、f = (fbase, femb, fproj) と書くことにします。

ベクトルバンドルの引き戻しを使うと、EPペアの結合が定義できます。これにより、ベクトルバンドルを対象として、EPペアを射とする圏が構成できるので、それを EppVectBundle とします。VectBundleEppVectBundle は、対象類を共有しますが、別な圏です。EPペアから射影を取り除くと、EppVectBundleVectBundle という忘却関手を定義できますが、VectBundleEppVectBundle という有益な関手は構成できそうにありません。

共変微分のインデックス付き圏とグロタンディーク構成

前節で定義した EppVectBundle をベース圏〈インデックス圏 | インデキシング圏〉とするインデックス付き圏〈indexed category〉を定義しましょう。EppVectBundle の対象 E に対して、圏 CovDer[E] を割り当てるような対応と、f:E→F in EppVectBundle に対する反変関手 CovDer[f]:CovDer[F]→CovDer[E] を構成します。

まず、ベクトルバンドルEに対する圏 CovDer[E] を定義します。

  • 対象: Obj(CovDer[E]) = |CovDer[E]| := CovDer(E) = (E上の共変微分の集合)
  • 射: Mor(CovDer[E]) := CovDer(E)×End1Form(E) = (E上の共変微分とEのエンド1-形式のペアの集合)
  • dom: dom(∇, a) := ∇
  • codcod(∇, a) := ∇ + a = ∇ + (a・)
  • id: id(∇, a) = (∇, 0)
  • 結合: (∇, a);(∇', b) := (∇, a + b) (∇' = ∇ + a)

CovDer[E] は、集合 CovDer(E) 上の主等質空間構造を利用して定義した圏で、連結した(どの2つの対象のあいだにも射が存在する)やせた亜群(亜群は、すべての射が可逆である圏)になります。

f:E→F in EppVectBundle とします。fに対して、反変関手 CovDer[f]:CovDer[F]→CovDer[E] を構成する必要があります。CovDer[f] を f* と略記します。関手 f* を対象パートと射パートに分けましょう。

  • f*Obj:CovDer(F)→CovDer(E)
  • f*Mor:CovDer(F)×End1Form(F)→CovDer(E)×End1Form(E)

EPペア f = (fbase, femb, fproj) を、記法の簡略化のために、f = (φ, s, t) と書きます。そして、対象パート f*Obj は次のように定義します。

  • f*Obj(∇) := (t*)\circ#∇)\circ(s*)

ここで、

  1. s* は、埋め込みセクション s∈Γ(hom(E, φ#F)) を、バンドル射 E→φ#F とみなして、さらに前送り作用でセクション空間の写像 Γ(E)→Γ(φ#F) とみなしたもの。
  2. φ#∇ は、ベクトルバンドルの引き戻しに伴う、共変微分の引き戻し φ#∇:Γ(φ#F)→Γ(φ#F\otimesT*(|E|)) 。
  3. t* は、射影セクション t∈Γ(hom(φ#F, E)) を、バンドル射 φ#F→E とみなして、さらに前送り作用でセクション空間の写像 Γ(φ#F)→Γ(E) とみなしたもの。
  4. \circ は、反図式順の写像作用素)の結合〈合成〉記号。

f*Obj(∇) が、実際に共変微分になっていることは確認が必要です(これはたぶん大丈夫)。

関手 f* を射パート f*Mor は次のようにします。

  • f*Mor(∇, b) := (f*Obj(∇), (φ, s)(b))

ここで、(φ, s) は、ペア (φ, s) から誘導されるバンドル射 f':E→F に反変関手 End1Form を適用した End1Form(f'):End1Form(F)→End1Form(E) のことです。

対象パート f*Obj と射パート f*Mor の組み合わせが、実際に関手 f* = CovDer[f] :CovDer[F]→CovDer[E] になっていることも確認が必要です(だんだん疲れてきた)。

CovDer[-] がインデックス付き圏になっていることを確認できれば、グロタンディーク構成は機械的に適用できます。コジュール接続の圏はそうやって定義します。

 {\bf KoszConnection} := {\displaystyle \int_{\to\:{\bf EppVectBundle}}} {\bf CovDer}[\mbox{-}]

もうひとつ別な方法でも KoszConnection を構成したいですね。

 {\bf KoszConnection} := {\displaystyle \int_{\to\:{\bf Man}}} {\bf KoszConn}[\mbox{-}]

もちろん、ふたつの定義の同値性*8を期待しています(あー疲れる)。

曲率

(E, ∇) がコジュール接続のとき、その曲率〈curvature〉とは、∇から定義した偏微分作用素達が交換できない度合いを測る量です。あるいは、Eの一点でのベクトルを、底空間内の無限小な平行四辺形に沿って一周させて戻ったときのズレを測る量です。

コジュール接続 (E, ∇) の曲率を R(E, ∇) と書きます。ベクトルバンドルEが了解されているときは、R と書いてもかまいません。R は、ベクトルバンドル end(E)\otimesΛ2(T*(|E|)) のセクションになります。このベクトルバンドルのセクション空間/加群を End2Form(E) と書いて、Eのエンド2-形式〈endo2-form〉の空間/加群と呼びましょう。

コジュール接続 (E, ∇) に対して、そのスカラー場(関数と同義)の可換環を次のように書きます。

  • Scalar(E, ∇) := C(|E|)

Scalar(E, ∇) は、共変微分∇にも、ベクトルバンドルEにも無関係で、底空間|E|だけで決まる可換環です。|E|上の任意のベクトルバンドルFのセクション空間 Γ|E|(F) は、Scalar(E, ∇)-加群とみなせます。特に、Scalar(E, ∇) 自身はScalar(E, ∇)-加群です(なにしろ、Scalar(E, ∇) = C(|E|) なので)。

Eのエンド2-形式の加群 End2From(E) にも、ダミーの∇を入れて、End2From(E, ∇) と書くことにします。すると、(E, ∇) \mapsto Scalar(E, ∇) も (E, ∇) \mapsto End2Form(E, ∇) も、コジュール接続の圏からC(-)係数加群の圏*9への関手となります。

  • Scalar : KoszConnection → C-Mod
  • End2Form : KoszConnection → C-Mod

共変微分∇はダミーの引数なので、ScalarもEnd2Formも、実質的にはベクトルバンドルとEPペアの圏 EppVectBundle 上で定義されている関手です。

共変微分∇が関わってくるのは、曲率 R(E, ∇) においてです。曲率は、次のような自然変換じゃないかと思います。

  • R :: Scalar ⇒ End2Form : KoszConnection → C-Mod

確認する前に萎えたのですけど……

*1:正確にはストレス・アクセントなのかな。

*2:伝統的微分幾何では、セクション空間のあいだのR-線形作用素が、関数係数でも線形になるときにテンソル的〈tensorial〉と言うようです。共変微分は被微分セクション変数に関してテンソル的ではありません。

*3:計算のなかで、テンソル積の対称性を暗黙に使っているところがあります。

*4:左からでも同様です。

*5:G-torsor という呼び名もあります。

*6:加群の圏からアーベル群の圏への忘却関手の値。

*7:CovDer(E) は、実数係数のアフィン空間の構造を持ちます。2つの共変微分を通る直線(実数パラメータ表示)とか、複数の共変微分の重心を求めることが出来ます。

*8:このテの圏同型/圏同値が、一般論から自動的に出てこないかなー、と長年夢想しています。グロタンディーク構成に関する“フビニの定理”です。

*9:きちんと解釈するには、可換環層の上の加群層を考えます。

バンドルと層の記法 速記用

バンドルと層の記法 まとめ」は、手書きで書くことを意識しています。が、それでも手書きだと書きにくい記法もあるので、もっと手早く書けるようにします。

頻繁に使う3つの関手*1ギリシャ文字大文字で書くことにします。Φ, Ω, Ξ です。「ξ(グザイ)のいい感じな書き方を教えてください」に、漢字の「三」を走り書きすると小文字の「ξ」になる、とあります。大文字「Ξ」は、漢字の「三」か「王」を書くつもりでいいと思います。

手早く セクション記法 多数派(?) 一言
ΦM ΓM(RM) C(M) 関数の可換環
ΩM ΓM(T*(M)) Ω(M) 微分形式の加群
ΞM ΓM(T(M))  {\mathscr X}(M) ベクトル場のリー代数
ΦM(U) ΓM(U, RM) CM(U) 局所関数の可換環
ΩM(U) ΓM(U, T*(M)) ΩM(U) 局所微分形式の加群
ΞM(U) ΓM(U, T(M))  {\mathscr X}M(U) 局所ベクトル場のリー代数
ΦM(-) ΓM(-, RM) CM 可換環の層
ΩM(-) ΓM(-, T*(M)) ΩM 加群の層
ΞM(-) ΓM(-, T(M))  {\mathscr X}M リー代数の層

M上の層は開集合リトルサイト上で考えてますが、同じ記号でラージサイト〈大きいサイト〉上の層も表します。

  • Φ:ManopCRng
  • Ω:Manop→Φ-Mod

Ξは、そのままではラージ層(Man上の反変関手)になりません。

*1:[追記]Φ, Ω はラージサイトMan上の(反変の)関手で、リトルサイト上でも関手です。Ξは、Man上の関手ではありませんが、リトルサイト上では関手です。[/追記]

サイトと層の大きさやら作り方やら

3日前に書いた記事「ビッグサイト微分幾何と自然変換の上付き添字」で「ビッグサイト」という言葉を使ったのですが、この言葉の典拠はnLab項目です。

nLabには、他にラージサイト、スモールサイト、リトルサイトの項目もあります。

しかし、形容詞ラージ/スモール/ビッグ/リトルは、すべてが大きさを分類しているわけではありません。ラージ/スモールは圏のサイズの分類なので、サイトに対してもその意味を変えずに使っています。ビッグ/リトルは、サイズとは全然別な話で、圏の対象Xを特定したときの“Xのサイト”の作り方の違いです。

これらの概念の違いをハッキリさせるために、単なるサイトとインデックス付きサイトを区別して説明します。

内容:

サイト

サイト〈site〉とは、被覆系を備えた圏のことです。圏C上の被覆系〈coverage〉についての詳細はnLabを見てください。だいたいの雰囲気はここで説明します。

適当な添字集合 I に対する、Cの射のインデックス族 {fi:Ui→U | i∈I} を考えます。これは、Uを余ボディ〈cobody〉とする多重余スパン〈multi-cospan | 複余スパン〉です。あるいは、離散圏とみた I からの関手 i \mapsto Ui を余底面とする余錐です。Uは余錐の余頂点です。

無闇といっぱいある上記のごときインデックス族のなかで、被覆〈covering {family}? | cover〉と呼ばれるインデックス族が特定されているとします。被覆に対しては、Uを(共通の)ターゲット〈target〉と呼ぶようです -- 余ボディ、余頂点、台対象とかでも良さそうですけど。各 Ui→ U in C は被覆の成分〈component〉と呼びましょう。行列の成分、自然変換の成分と同じ用法です。

Cの対象Xに対して、Xをターゲットとする被覆の全体を Cov(X) とします。Cの対象に対する割り当て X \mapsto Cov(X) が満たすべき性質(公理)は、nLab項目を見てください。Cが引き戻し〈pullback〉で閉じていれば簡単な記述になります。が、多様体の圏Manは引き戻しで閉じてません。

被覆系はグロタンディーク位相の一般化です。ただし、単なる圏/単なる被覆系だと一般的過ぎるので、圏と被覆系に条件を付けて使うことが多いです。

サイトSを次のように書きます。

  • S = (CS, CovS)

CSは圏で、CovSはその上の被覆系です。

例によって記号の乱用で、

とも書きます。

(C, Cov), (D, Cov) が2つのサイトとして、関手 F:CD が被覆系に対して整合性〈協調性〉を持つなら、サイトの準同型、あるいはサイト射〈site morphism〉になります。そして、サイトとサイト射からなる圏Siteを形成します*1

C = (C, Cov) がサイトのとき、反変関手 F:CopD が層である条件を記述できます。別な言い方をすると、サイトとは層の定義域〈始圏〉となれる圏です。

インデックス付きサイト

インデックス付きサイトの定義の前に、まずは典型例を挙げます。Top位相空間の圏とします。X∈|Top| に対して、Open(X) をXの開集合の集合とします。部分集合の包含関係を射とみなして Open(X) は圏になります。f:U→V in Open(X) とは、U⊆V のことです。Open(X) の射の族 {fi:Ui→U | i∈} が被覆だとは、普通の意味で被覆になっていることだとします。以上の定義で、各Xごとに Opne(X) はサイトになります。

φ:X→Y in Top連続写像だとすると、φから、Open(Y)→Open(X) という逆向きの写像が誘導されます。この写像を Open(φ) または(略記として) φ* と書きます。φ* は圏としての構造も被覆系の構造も保存する(被覆を被覆に送る)ので、サイト射になります。

一般に、圏Cからサイトの圏Siteへの反変関手 S:CSiteインデックス付きサイト〈indexed site〉と呼びます。Open:TopSite はインデックス付きサイトの例です。

Topへの忘却関手Uを持つ圏Cでは、UとOpenを結合してインデックス付きサイトを構成できます。例えば、U:ManTop を忘却関手として、M \mapsto Open(U(M)) はMan上のインデックス付きサイトになります。

C上のインデックス付きサイト S = S[-] (別に意味はないが、習慣に従い角括弧)があるとき、|C| でインデックス付けられたD値の層の族 FX:S[X]opDインデックス付きD-層〈indexed D-sheaf〉と呼びます。インデックス付きD-層に、これ以上の条件はありません。

サイズ

サイト S = (C, Cov) があるとき、台の圏Cのサイズによって、サイトのサイズも分類します。

  • Cが小さい〈{スモール | small}である〉とき、サイトSは小さい。
  • Cが大きい〈{ラージ | large}である〉とき、サイトSは大きい。
  • Cがやせている〈{シン | thin}である〉とき、サイトSはやせている。
  • Cが太っている〈{ファット | fat}である〉とき、サイトSは太っている。

「太っている」は「やせている」の否定なので、少なくともひとつのホムセットは二元以上を持ちます。

インデックス付きサイト S:CSite に関しては:

  • すべてのS[X]が小さいとき、インデックス付きサイトS[-]は小さい。
  • 少なくともひとつのS[X]が大きいとき、インデックス付きサイトS[-]は大きい〈小さくはない〉。
  • すべてのS[X]がやせているとき、インデックス付きサイトS[-]はやせている。
  • 少なくともひとつのS[X]が太っているとき、インデックス付きサイトS[-]は太っている〈やせてはいない〉。

層に関するサイズ形容詞は、層の定義域〈始圏〉のサイズをそのまま使います。サイトC上の層 F:CopD に関して:

  • Cが小さいとき、層Fは小さい
  • Cが大きいとき、層Fは大きい
  • Cがやせているとき、層Fはやせている。
  • Cが太っているとき、層Fは太っている。

インデックス付き層 FX:S[X]→D に関して:

  • すべてのS[X]が小さいとき、インデックス付き層F(-)は小さい。
  • 少なくともひとつのS[X]が大きいとき、インデックス付き層F(-)は大きい〈小さくはない〉。
  • すべてのS[X]がやせているとき、インデックス付き層F(-)はやせている。
  • 少なくともひとつのS[X]が太っているとき、インデックス付き層F(-)は太っている〈やせてはいない〉。

ビッグサイトとリトルサイト

Cがサイトのとき、対象A上のオーバー圏 C/A に自然に入るサイト構造(被覆系)をビッグサイト〈big site〉と呼びます(nLab項目参照)。

この意味の「ビッグ」はサイズとは関係ないので、小さいサイト〈スモールサイト〉Cに対してビッグサイト C/A を作ることもできます。なんか奇妙ですが、行きがかり上しょうがないですね。

ビッグサイトは、理論上は単純な形をしてますが、実際の計算に使うには便利ではありません。そこで、計算の手間が少ないリトルサイト〈little site〉を定義したくなります。しかし、一般的・抽象的にリトルサイトを定義するのはけっこう難しそうです(nLab項目参照)。

具体的なインデックス付きサイトとして、開集合(の集合)で定義されるインデックス付きサイトがリトルサイトであることは認めていいでしょう。サイズ的にも、小さくやせたインデックス付きサイトになります。このタイプのサイト(インデックス付きサイト)を開集合リトルサイト〈open-set little site〉と呼ぶことにします。

多様体の圏Manを考えましょう。大きなサイトであるMan上には、C(-) や Ω(-) のような大きな層〈large sheaf〉があります。オーバー圏 Man/Mビッグサイト構造を入れ、その上のビッグ層(インデックス付き層)を考えることができます。それとは別に、開集合リトルサイト Open(-) を定義でき、リトル層(インデックス付き層)も構成できます。

Man上の層は、通常は開集合リトルサイト(インデックス付きサイト)上のリトル層(インデックス付き層)として定義されます。しかし、大きな層〈ラージ層〉とビッグ層(インデックス付き層)も一緒に考えたほうが見通しが良くなりそうです。つまり、次の三種類の層をその相互関係を考慮すべきかと。

  1. 大きなサイトMan上の大きな層
  2. 大きなサイトManから誘導されるビッグサイト上のビッグ層(インデックス付き層)
  3. 開集合リトルサイト上のリトル層(インデックス付き層)

大きなサイト/層とビッグなサイト/層を積極的に使うことをモットーにした微分幾何ビッグサイト微分幾何です。モットー以上の内容は現状たいしてありませんが(苦笑)。

*1:実を言うと、Siteの作り方を僕はよく分かってないのですが、頑張れば作れるでしょう。

バンドルと層の記法 まとめ

一覧にまとめておきます。随時、修正・追加があるでしょう。\newcommand{\hyph}{\mbox{-}}
\newcommand{\ul}[1]{ \underline{#1} }

内容:

  • Man -- (なめらかな)多様体の圏

バンドルの圏:

  1. C-Bdl[-] -- Man上の、ファイバーがCの構造を持つバンドルの、インデックス付き圏
  2. Bdl = Man-Bdl[-] -- Man上の{ファイバー}?バンドルのインデックス付き圏
  3. Vect-Bdl[-] -- Man上のベクトルバンドルのインデックス付き圏
  4. Alg-Bdl[-] -- Man上の代数〈多元環〉バンドルのインデックス付き圏
  5. Grp-Bdl[-] -- Man上の群バンドルのインデックス付き圏
  6. G-Prin-Bdl[-] -- Man上のG-主バンドルのインデックス付き圏
  7. X-Triv-C-Bdl[-] -- Man上の、ファイバーがXである自明バンドルのインデックス付き圏(各圏は単対象)

層の圏:

  1. C-Sh[-] -- Man上の、値がCである層の、インデックス付き圏
  2. Sh[-] = Set-Sh[-] -- Man上の{集合}?層のインデックス付き圏
  3. CRng-Sh[-] -- Man上の可換環層のインデックス付き圏
  4. Mod-Sh[-] -- Man上の加群層のインデックス付き圏
  5. Alg-Sh[-] -- Man上の代数〈多元環〉層のインデックス付き圏
  6. Grp-Sh[-] -- Man上の群層のインデックス付き圏

平坦化した圏:

関手

接関手:

  • T : ManVectBundle

ラージサイトとしてのMan上の層:

  1. SA = {\mathscr A} = C = Ω0 : ManopCRng -- 構造{可換環}?層
  2. Ω = Ω1 : ManopMod -- {1次の}?微分形式加群
  3. Ω : ManopAlg -- 微分形式代数層(掛け算は微分形式の外積
バンドルとバンドル射

バンドル:

  • 正式: E = (Etot, N, πE)
  • 乱用: πE:E→N または π:E→N
  • 略式: E over N

バンドル射:

  • 正式: f = (ftot, fbase) : E→F
  • 乱用: f = (f, φ) :E→F または f = (f:E→F, φ:N→M)
  • 略式: (f over φ) :E→F または f:E→F over φ:N→M
バンドルの演算

添字のNは、底空間多様体

演算名 演算記号 被演算項 演算結果
ファイバー積  \underset{N}{\times} バンドル バンドル
直和〈ホイットニー和〉  \underset{N}{\oplus} ベクトルバンドル ベクトルバンドル
テンソル  \underset{N}{\otimes} ベクトルバンドル ベクトルバンドル
双対  (\hyph)^{\underset{N}{\ast}} ベクトルバンドル ベクトルバンドル
外積〈ウェッジ積〉  \underset{N}{\wedge} ベクトルバンドル ベクトルバンドル
内部ホム  hom_N(\hyph, \hyph) \:\mbox{or}\: lin_N(\hyph, \hyph) ベクトルバンドル ベクトルバンドル
内部双線形射集合  bilin_N(\hyph, \hyph) ベクトルバンドル バンドル
内部エンド  end_N(\hyph) ベクトルバンドル 代数バンドル
内部アイソ  iso_N(\hyph, \hyph) ベクトルバンドル バンドル
内部オート  aut_N(\hyph) \:\mbox{or}\: gl_N(\hyph) ベクトルバンドル 群バンドル
k次外積空間  \Lambda^k_N(\hyph) ベクトルバンドル ベクトルバンドル
k次テンソル空間  tens^k_N(\hyph) ベクトルバンドル ベクトルバンドル
外積代数  \Lambda_N(\hyph) ベクトルバンドル 代数バンドル
テンソル代数  tens_N(\hyph) ベクトルバンドル 代数バンドル
フレーム  frame_N(\hyph) ベクトルバンドル バンドル
バンドルの移動
  • For F over M, φ:N→M,
    φ#F over N -- 引き戻されたバンドル
  • For E over N, φ:N→M invertible,
    φ#E = (φ-1)#E over M -- 前送りされたバンドル
セクション
  • s:N→E section
  • t:N→F section over φ:N→M
セクション空間と層
  • Γ(E) または ΓN(E)
  • ΓN(F/φ)
  • ΓN(U, E) := Γ(E|U)
  • ΓN(-, E) on N -- N上の層
層の演算

原則として、

  1. 中置演算子記号は、バンドルと同じ記号を使う。
  2. 演算の名前は、バンドルと同じ綴に下線を引く。(書体を変えるのは手書きでは辛いので。)
  3. 表にはないが、外部ホムは、語先頭文字を大文字にする。例: \ul{Iso}_A(\hyph, \hyph)

例外は、外積空間/外積代数

添字のAは、加群層の係数可換環層。

演算名 演算記号 被演算項 演算結果
直積  \times 集合層 集合層
直和  \underset{A}{\oplus} 加群 加群
テンソル  \underset{A}{\otimes} 加群 加群
双対  (\hyph)^{\underset{A}{\ast}} 加群 加群
外積  \underset{A}{\wedge} 加群 加群
内部ホム  \ul{hom}_A(\hyph, \hyph) \:\mbox{or}\: \ul{lin}_A(\hyph, \hyph) 加群 加群
内部双線形射集合  \ul{bilin}_A(\hyph, \hyph) 加群 集合層
内部エンド  \ul{end}_A(\hyph) 加群 代数層
内部アイソ  \ul{iso}_A(\hyph, \hyph) 加群 集合層
内部オート  \ul{aut}_A(\hyph) \:\mbox{or}\: \ul{gl}_A(\hyph) 加群 群層
k次外積加群  \Omega^k_A(\hyph) 加群 加群
k次テンソル加群  \ul{tens}^k_A(\hyph) 加群 加群
外積代数  \Omega^{\bullet}_A(\hyph) 加群 代数層
テンソル代数  \ul{tens}_A(\hyph) 加群 代数層
フレーム  \ul{frame}_A(\hyph) 加群 集合層
層の移動
  • For B on M, φ:N→M,
    φ-|B on N -- 引き戻された層
  • For A on N, φ:N→M,
    φ|-A on M -- 前送りされた層

融通無碍か曖昧模糊か

この記事で使う概念・記法は「ベクトルバンドル射の逆写像: 記法の整理をかねて」にあります。ただし、ベクトルバンドルFのxによる引き戻しは x#F にします。

気付いた、というか、あらためて「そうなんだな」と思ったこと; 次の4種類のモノが区別されないことが多いよね。

  1. f : E→F over x:|E|→|F| ベクトルバンドルのあいだの射(準同型写像
  2. f* : Γ(E)→Γ(F/x) セクション空間のあいだの写像
  3. f : Γ(E)→Γ(x#F) セクション空間のあいだの写像、バンドルを引き戻して
  4. f ∈ Γ(hom(E, x#F)) 内部ホムバンドルのセクション

f : E→F を基準にして、適当に飾り記号を付けて区別したけど、同じ記号の使い回し(オーバーロード)で区別しない/できない、あるいは逆に、まったくの別物として扱って関連性が見えないことも。

これらのモノのあいだに1:1対応があるのは事実ですが、同じモノではないので、同一視してしまうと色々と混乱が生じます。関連を付けないのもマズイです。

慣れていれば、1:1対応を積極的に利用して、異なる世界を縦横無尽に行き来しながら議論ができるでしょう。融通無碍/変幻自在の境地とでも申しましょうか。

しかし、慣れてない人には曖昧模糊/五里霧中。

はい、四字熟語、たくさん使ってみました。

ビッグサイト微分幾何と自然変換の上付き添字

ビッグサイト」と言えば東京ビッグサイト

*1

ではなくて、次のnLab項目を参照してください。

nLab項目は一般的な設定で説明していますが、特定状況下で具体的なビッグサイトを利用する話をします。利用目的は微分幾何のためです。

Manをなめらかな多様体の圏とします。Manのなかで話をするので、以下、形容詞「なめらかな」は省略します。Manのなかでなにかすることを、大ざっぱに微分幾何〈differential geometry〉と呼ぶことにします。

j:N→M in Man開埋め込み〈open embedding〉だとは、次のことだとします。

  1. jの像 j(N)⊆M は、Mの開集合になっていて、Nとj(N)は(jにより)位相的に同型である。
  2. 任意の p∈N に対して、接写像のファイバー Tpj:TpN→Tj(p)M は線形同型写像である。

一番の条件を満たしても、二番を満たすとは限りません。例えば、N = {x∈R | -1 < x < 1}, M = R を二つの多様体とみなして、j(x) = x3 とすると、一番の条件を満たしますが、x = 0 で二番の条件を満たしません。

開埋め込みの全体はManの部分圏になるので、それを OEMan とします。M∈|Man| に対して、オーバー圏 OEMan/M を(nLabの定義と少し違いますが)Mのビッグサイト〈big site〉と呼びます。一方、Mの開集合の全体に包含順序を考え、それを圏とみなしたもの Open(M) を、Mのスモールサイト〈small site〉リトルサイト〈little site〉と呼びます*2

ビッグサイトもリトルサイトも圏です。「サイト」と呼ばれるのは、被覆に関する構造を持つからですが、そこは割愛します。

リトルサイトをビッグサイトに標準的に埋め込むことができます。ビッグサイトに同値関係を入れてリトルサイトを再現することもできます。したがって、リトルサイトとビッグサイトは大差ないことになります。しかし、ビッグサイトのほうが話が簡単になることがあるので「ビッグサイトを積極的に使おう」というスローガンのもとの微分幾何ビッグサイト微分幾何〈big-site differential geometry〉です。

ビッグサイト微分幾何を試みるにあたって、些細な、しかし気になる問題があります。説明します。

F:ManopC を、Man上の反変関手とします。Fから、OEMan/MopC が自然に誘導されます。誘導された関手を FM:OEMan/MopC とします。具体例を挙げると、M  \mapsto C(M) は ManopCRng という可換環の圏への反変関手なので、CM:OEMan/MopCRng が誘導されます。

F, G:ManopC はふたつの反変関手、α::F⇒G は自然変換とします。誘導されたふたつの反変関手 FM, GM:OEMan/MopC のあいだに、誘導された自然変換も存在します。誘導された自然変換を αM::FM→GM と書くのが自然でしょう。

しかし、αM という書き方は普通 αM:F(M)→G(M) という成分の意味で使います。困った。成分の書き方のほうを変えます。自然変換αのM成分は、αM:F(M)→G(M) にします。

すると、

  • For j∈|OEMan/Mop|,
    FMj:FM(j)→GM(j) in C

と書けます。記号の乱用で、j:N→M in OEMan/Mop を単にNと書けば、

  • FMN:FM(N)→GM(N) in C

です。

具体例を挙げると; M \mapsto Ω(M) を(1次の)微分形式の空間を対応させる反変関手とします。C(M) と Ω(M) を一旦R-ベクトル空間とみなすと、外微分作用素 d は、

  • d:C⇒Ω:ManopR-Vect

特定の多様体Mと、特定の開埋め込みNに関する外微分作用素 d の成分は:

  • dMN:CM(N)→ΩM(N) in R-Vect

これは、記号の乱用を含むので、正確には次の可換図式になります(自然変換の成分は上付き添字!)。

\require{AMScd}
\begin{CD}
C^{\infty}(N)        @>{d^N}>>  \Omega({N}) \\
@A{C^{\infty}(j)}AA             @AA{\Omega(j)}A \\
C^{\infty}(M)        @>{d^M}>>  \Omega(M)
\end{CD}

ここで、C(j), Ω(j) は層の制限写像になっています。この可換図式は、外微分作用素が制限写像と整合することを意味します。

言いたかったことは:

  1. リトルサイトの代わりにビッグサイトを使いたい。
  2. 自然変換の成分添字を上付き添字に変更したい。

*1:https://www.cruisebe.com/tokyo-big-sight-japan の案内写真

*2:[追記]https://ncatlab.org/nlab/show/little+site を見ると、スモールサイトよりリトルサイトのほうが良さそうです。「リトル vs ビッグ」「スモール vs ラージ」という対比ですね。[/追記]