雑記/備忘

圏論図式の描き方と解釈のコツ

圏論では、点と矢印の図〈dots-and-arrows diagram〉を使って計算や証明をすることがよくあります。通常目にする図式は、組版や印刷の都合から、単色でレイアウトも平面的です。でも、手描きするなら、色を付けたり、立体的に描いたりするとだいぶ分かりやす…

朗報です! スピヴァック〈Spivak〉のオンラインコースが無料で公開されました

先週土曜日(2019年4月20日)、タケヲさん(id:bonotake)から古い記事にコメントをいただきました。 朗報です! Spivakのオンラインコースが無料で公開されました! https://ocw.mit.edu/courses/mathematics/18-s097-applied-category-theory-january-iap-…

14年ぶりにファイバー付き圏

「インデックス付き圏を拡張してファイバー付き圏へ」にて、 この辺のことを知るには、今から14年前に紹介したことがあるアンジェロ・ヴィストリのテキスト(解説論文)を拾い読みするといいかもしれません。 と書いたので、ヴィストリ〈Angelo Vistoli〉の…

インデックス付き圏を拡張してファイバー付き圏へ

インデックス付き圏〈indexed category〉の定義を弱く(ゆるく)して、ファイバー付き圏〈fib(e)red category〉と同値な定義を得ます。内容: ファイバー付き圏とインデックス付き圏 2-関手として考える ストリング図とストライプ図 タイト2-関手 ファイバー…

古典的微分幾何・ベクトル解析のモダン化: 因習的微分幾何とその構造

久々の「モダン化」シリーズの記事です。以下のエントリーがシリーズのハブになっています。 古典的微分幾何・ベクトル解析のモダン化: ラムダ記法の利用 モダンの反対語として、「因習的」を使うことにします。モダンではない、因習的微分幾何のどこが何故…

微分は導関数より接写像のほうが分かりやすい

合成関数の微分公式と逆関数の微分公式は大事なんですが、あまり分かりやすくないですね。分かった気分になっても実際に計算に利用しようとすると戸惑ったりします。もうちょっと分かりやすく正確な表現方法はないものか? と考えてみました。内容: 愚痴と…

抽象微分多様体、さらに:共変微分のアフィン構造

かなり気に入ったんだよね、マリオス微分幾何。 マリオスの抽象微分多様体 抽象微分多様体、もうチョット やはり、共変微分の議論はすごくラクチンです。共変微分の全体が、加群の足し算作用によるアフィン構造を持つことが明確に分かります。内容: 言葉の…

マリオスの抽象微分多様体

記事「コンピュータ科学や組み合わせ論を“微分幾何”とみなす:CADGの夢」(2016年) を書いた頃、「抽象微分幾何〈ADG : Abstract Differential Geometry〉」という言葉を、何人かの人が使っているのを知りました。そのなかでも、アナスタシオス・マリオス〈An…

多様体上のベクトルバンドルの接続と平行移動

多様体上で「ベクトルの平行移動」を定義して、それに基づいて共変微分を定義するのは、よく使われる普通の定式化です。平行移動と共変微分を繋ぐのは、「無限小の平行移動」という概念です。この「無限小の平行移動」のハッキリとした定義はあまり見かけま…

多変量正規分布 3: 身長・体重を回転するってなんだよ?

「多変量正規分布」シリーズはしばらく間が空きそうなので、ここで、動機とか見通しとかを、後で思い出すためのメモとして残しておきます。「多変量正規分布」とタイトルを付けながら、過去2回はアフィン空間の話だけでした。 多変量正規分布 1: アフィン空…

多変量正規分布 2: アフィン空間の位相的・測度的性質

前回の記事「多変量正規分布 1: アフィン空間」で、「次は二次形式」と書きましたが、その前に、アフィン空間の位相構造と測度構造について触れておきます。Rn上の正規分布だけを考えるなら、標準的な位相と測度を意識する必要はありません。一般的な(有限…

線形近似としての微分係数: フレシェ微分

関数fの点aにおける微分係数は、a近辺でfを良く近似する線形写像(正確にはアフィン線形写像の線形部分)とみなせます。線形近似としての微分の一般的な形はフレシェ微分〈Fréchet {derivative | differential}〉といいます。フレシェ微分の枠組みでは、“一…

多変量正規分布 1: アフィン空間

確率モデルのひとつであるガウス/マルコフ・モデルを理解したいのですが、その前に、多変量〈多次元〉正規分布を理解しないといけないようです。なので、多変量正規分布を調べています。多変量正規分布を理解するための予備知識を何回かに分けて書くつもり…

「従う」の使用例:正規分布とカイ二乗分布

昨日の記事「確率変数が分布に「従う」とは」で、「従う」という言葉の使い方を説明しました。この記事では、その使用例をひとつ挙げます。「確率変数が分布に従う」という言い方の例として、こんなのがあります。 正規分布に従う独立な確率変数X1とX2に対し…

確率変数が分布に「従う」とは

確率統計に出てくる「よく分からない言葉」を、多少は「分かる言葉」にしようと詮索した記事を、過去に幾つか書きました。そのリストはこの記事の最後に載せることにして、扱った「よく分からない言葉」は: 確率変数 分布 母集団 標本 これらは「意味不明な…

論理の限量子の使い方が嫌でも分かってしまう話

論理の限量子 -- つまり全称限量子(記号は'∀')と存在限量子(記号は'∃')-- の使い方が分からない、という質問・相談を受けることがあります。なかでも、「∀と∃の順序を交換してイイの? それともダメなの?」はFAQ〈Frequently Asked Question〉でして、…

ベイズ確率論、ジェイコブス達の新しい風

バート・ジェイコブスとコラボレーター達は、現状のベイズ確率論で使われている概念・用語・記法とは異なる、完全に新しい概念・用語・記法を提案しています。悪しき風習やしがらみを断ち切って、理論をリフォーミュレートしたのです。従来のやり方に慣れて…

フランツによる統計的独立性の定義

「統計的独立性と線形独立性を共通に語ることは出来るのか?」では、シンプソン〈Alex Simpson〉による独立性構造を紹介しました。シンプソンの独立性は、かなり広い範囲の“独立性”概念をカバーするものです。もうひとつの独立性であるフランツ〈Uwe Franz〉…

統計的独立性と線形独立性を共通に語ることは出来るのか?

統計的独立性は確率・統計において重要な概念です。「独立」という言葉は色々な分野で使われます。おそらく一番お馴染みな独立性は、統計的独立性ではなくて線形独立性でしょう。単語として「独立」が使われているからといって、統計的独立性と線形独立性が…

随伴系の二重圏

ひとつ前の記事「随伴系の圏の多様性」にて: 1AdjL(Cat)(あるいは、1AdjR(Cat))だけでも、モナド/コモナドを調べる道具に使えます。が、やはり随伴系の二重圏が欲しい。というわけで、随伴系の二重圏についても述べたいとは思っています(いつかわからん…

随伴系の圏の多様性

随伴系〈adjunction | adjoint system〉の全体を、圏に編成することができます。しかし、その編成の方法と出来上がる圏は実に様々です。この多様性を捨て去るのではなくて、多様性自体を主題にするのも面白いかもな、と思います。この記事は、モナド関連の話…

零項演算とは何か?

セミナーで受けた質問シリーズ(なのか?)、その3: 過去に何度も聞かれたことがある一般的な質問; 数の足し算・掛け算、集合の合併・共通部分などの演算に対して、オペランド(演算すべき対象物)が一つもないときどうなるのか?内容: オペランドが一つも…

三段論法とは何か?

昨日に引き続き、セミナーで受けた質問で一般的なものを; 「三段論法とは何ですか?」に答えておきます。内容: アリストテレスがやっていたヤツ モーダスポネンス カット アリストテレスがやっていたヤツ「三段論法」という言葉は、割とよく耳にしますが、…

論理式の集合とは何か?

セミナーで受けた質問ですが、一般的な話なので、応答をこちらに書きます。命題を形式化した構文的対象物が論理式です。この論理式の集合を正確に定義するとどうなるのか? という話です。内容: 用途と論理を決める 基本記号を全部挙げる 構文の定義 項の定…

花輪?

昨日「複合モナドから花輪積へ」で、花輪積〈wreath product | リース積〉の話をしたのですが、花輪だから次のような画像を添えました。*1でも、「お花がたくさん」はふさわしくなくて、次のようなモノかも。*2後で気が付いたんだけど、モナドの文脈では、木…

複合モナドから花輪積へ

2つのモナドのあいだにベックの分配法則〈Beck's distributive law〉があれば、それらを組み合わせて複合モナドを作れます。複合モナドの構成は、2つのモナドから1つのモナドを生成するので、一種の“積”と考えられます。この“積”を花輪積〈wreath product | …

さまざまなモナド類似物とベックの分配法則

モナドとコモナド、それらを組み合わせたもの、条件の一部を取り除いたものなどを、モナド類似物〈monad-like entity〉と呼ぶことにします。今までに、さまざまなモナド類似物に出会ってはいるのですが、それらを統一的に理解することがなかなか出来ませんで…

ベックの分配法則、ベック分配系、複合モナド

「ベックの分配法則の事例と計算法」で、ベックの分配法則〈Beck's distributive law〉の話をしたのですが、分配法則はひとつの代数的構造とみなすのがいいと思うんですよ。「法則」という呼び名が、構造とみなすことへの違和感となるので、呼び名と記号法を…

ベックの分配法則の事例と計算法

ここんところ「モナドのお勉強をしましょう」というゆるいシリーズ記事(番号とかは付けてない)を書いているのですが、今日はベックの分配法則の例を挙げます。内容: リストモナドとバッグモナド ベックの分配法則 随伴系から作られるモナド達 分配法則の…

リストモナドとテンソル空間モナドのあいだの準同型射

異なる圏の上で定義された2つのモナドを比較したいことがあります。その目的に使える、“異なる圏上のモナドをつなぐ準同型射”は定義されています。そのようなモナド準同型射は一種類ではなくて、色々な定義があります。ここでは、一番扱いやすいと思われる、…