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面白すぎる!『量子ファイナンス工学入門』

自分のアサハカな行動に「もう、なにやってんだか>自分」と嘆きはしましたが、『量子ファイナンス工学入門』を買ったことを後悔はしてません。だって、面白いんだもーん、これ。

山のように引用したい箇所があるのですが、そして、生の引用により最も本質が伝わると確信するのですが、「あまりにも素晴らしい!『量子ファイナンス工学入門』」のような調子で引用を続けるとマズイような気もする(適正な引用の量ってどの程度なんでしょうか、基準ありますか?)ので、今日は僕の印象と感想を述べます。



実際に読んでみて、と学会会長・山本弘さんの書評はあまり適切じゃないな、と感じました。

 実はこの本、あまりゲラゲラ笑える内容じゃありません。というのも、ニュートン力学量子力学核融合核分裂、カオス、エントロピーブラックホールなどの解説がほぼ全ページにわたって続く本で、かなり退屈な内容です。科学的にほとんど間違っていません。正しい物理の解説書として読めるのです。
 問題はこれがファイナンスの本だということ。
 従来のニュートン力学では株価の変動を予測するのに限界がある。だから量子力学や相対論を導入しよう……というのが著者の意図なのですが、えんえんと続く物理学の解説が、いったいどう株価と関係あるのか、量子力学を具体的にどのように現実に応用するのか、読んでもさっぱり分かりません。

  • 実はこの本、あまりゲラゲラ笑える内容じゃありません。

笑えます!

  • かなり退屈な内容です。

前半を丁寧に読むのがチョット辛いのは確かですが、細部から前田先生固有の発想/価値観を発見する楽しみがあります。後半はエキサイティング。

  • 科学的にほとんど間違っていません。

そんなことはない!

  • 正しい物理の解説書として読めるのです。

ダメダメ、ダメー。これを解説書/教科書として読むなんて、めっそうもない、もったいない。

  • えんえんと続く物理学の解説が、いったいどう株価と関係あるのか、量子力学を具体的にどのように現実に応用するのか、読んでもさっぱり分かりません。

前田先生の主張・論旨は明快です。物理と株価の関係もハッキリと記述していますし、一貫してその関係に基づいた論を展開しています。



山本会長は、この本と相性が悪かったのでしょうか、興味を持ってチャンと読んだとは思えませんね。他にも、この本への論評はいくつかあるようですが、皆さんどうも、実際には読んでないみたいだなーー。だって、批判も擁護も的ハズレなんだもん。

例えば、「物理の手法をファイナンスに使うのが何が悪いのだ? 経済学や金融工学では、関数解析経路積分も使いまくりだよ。」という感じのご意見 -- 読んでないでしょ、『量子ファイナンス工学入門』の実物を。

『数理科学』の2002年10月号(No.472)エコノフィジックス(econophysics)の特集がありましたが、あーいうものをイメージしているのでしょうね。違います、ゼンッゼン違います。実際に読めば、そういうイメージは吹っ飛んじゃうはず。

それと、いわゆる「マチガッテル系」本でもありません。現代の物理学に異議を唱えたり、独自の説を展開するものではないのです(ファイナンス工学としては独自でしょうが)。前田先生は、物理学に全幅の信頼を置いています。この信頼は実に篤いもので、物理法則や方程式を改変することはまったくしてません。そのまま使うのです、ファイナンス工学に。重力の加速度9.8m/s^2をそのまま日経平均に適用したように、光速もプランク定数もそのまま使って計算を遂行します。

この「そのまま使う」方式は僕にとっては実に新鮮でした。うーん、引用したいな。けど、“引用の節度”について調べてから続きを書こうかな(書かないかもしらんが)。

まーともかく、この本は僕のツボにハマって楽しませてもらっています。この楽しさを伝えたーい。えーい、最後の一節だけ引用しちゃえ:

ブラックホールでは先述のゲーデルの宇宙が実在し、この時ホーキングの言うように時間は終わりを迎える。このような事態を考えたくはないが、ブラックホールという究極の裁定状態における金融資産の運動方程式については、稿を改めて説明しなければなるまい。

…… 続編に期待。