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参照用 記事

ボブ・クックの「お絵描き大好き 量子絵図主義」

「幼稚園児のための量子力学」(Kindergarten Quantum Mechanics)や「物理系実務者のための圏論入門」(Introducing categories to the practicing physicist)を書いた、お絵描きとモノイド圏が大好きなおにいさんボブ・クック(Bob Coecke)が、去年の夏(2009年8月)にまた啓蒙的な論文を書いていたようです(さきほど知りました)。

 

論文タイトルは Quantum Picturalism、うーん、picturalismってなんて訳せばいいのでしょう? とりあえず「絵図主義」ってしますが、「お絵描き大好き」って主張が入っているでしょうから、「お絵描き大好き 量子絵図主義」ってことにしておきます。

このarXivページの要約を紹介します。だんだんアジテーションになっているのは僕の脚色です。


お絵描き大好き 量子絵図主義

ボブ・クック

(2009年8月13日 投稿)

現在の量子力学の定式化は、我々の直感に合致しないばかりか、量子物理法則の背後にある実在の振る舞いを統制しているキーコンセプトを解明してもくれない。量子力学複素数の配列(複素ベクトル)を扱うことは、コンピュータプログラミングの黎明期に、0と1からなる配列(ビット列)を直接扱っていたのと似た状況である。

この論説では、ヒルベルト空間を使う定式化の代替として、より“高水準”な図式的な定式化への途を提示しよう。それは我々の直感に訴える方法となっている。相互作用する量子系に関して我々は直感的推論が出来るようになる。絵図的手法は、くだらない夾雑物とウンザリする計算を取り除き、ものごとを自明に見せるのだ。

この手法は、コピーだめ定理(no-cloning theorem)のような制約や、量子テレポーテーションのような現象の背景を、白日のもとにさらす。思考の“オートメーション”を提供する、と言ってもいいだろう。これは、広範囲な分野の基礎理論となりうる。各分野で要求される、量子論のより深い概念的理解への足がかりを提供するように変更するのも容易だ。また、他の物理理論との統合も可能だろう。特にここで扱う応用は、いくつかの量子計算スキームの純粋に図式的な証明、それと、量子的非局所性の構造的な起源の分析である。

この高水準な図式的定式化の数学的基礎はモノイド圏だ。知ってる? モノイド圏。モノイド圏の理論は、比較的最近の数学的成果だけどね。モノイド圏は、物理理論の自然な基盤を提供するだけではなく、証明論、論理プログラミング言語、生物学、料理、それからエート、まーいろんな事に役立つぜ。

俺らが挑戦すべき課題は、正真正銘の量子現象を予測できる理論的構造物に必要な、欠けているピースを発見することだろ、そうだよな皆んな。