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参照用 記事

双対とニョロニョロ

双対とか随伴とかを圏論的に定義するには、外側の環境としてモノイド圏が必要です。(C, ×, 1) をモノイド圏としましょう。記号「×」は直積とは限らない一般のモノイド積です。対称性も仮定しません。

A, B∈|C| に対して「AとBは双対である」と言うには、ev:A×B→1、coev:1→B×A が必要で、(A, B, ev, coev) に関して次の絵のような等式が成立しているときに、AとBは(圏論的な意味で)双対、あるいは随伴なのです。等式とはいっても、イコールを同型や同値と解釈することもあります。

絵の内容を実際の等式で書いてみると:

  • (A×coev);(ev×A) = A
  • (coev×B);(B×ev) = B

簡略化のため、idXをXと書いています。

さて、双対であることを主張するためのこの等式を何と呼ぶのでしょう? 僕が最初に知ったときは三角恒等式という名でした。「なんで三角(triangular)なんだ?」と疑問に思ったし、今でも理由が分かりません。それに、双対以外でも三角恒等式というものが出てくる(例えば、マックレーンの一貫性)ので、「三角」はあんまり良くないと思います。

剛性(rigidity)恒等式という呼び方もあります。双対を持つようなモノイド圏(テンソル圏)は硬い(rigid)ということらしいですが、これもあんまりピンと来ませんね。

絵の印象からジグザグ公式という人もいます。ウィラートン(Simon Willerton)はヘビの関係式(snake relation)と呼んでました。おー、なるほど。ヘビが蛇行(「馬から落馬」表現)しているサマに似てますよね。

というわけで、僕は「ヘビの公式」と呼ぶことが多いのですが、「ヘビの補題」なんてのもあるので「ニョロニョロ公式」がいいんじゃないか、というのが最近の僕の意見。

双対性の本質はニョロニョロなんです。

[追記]双対に関わる左と右の話は「双対と随伴、そして左と右」に書いてあります。[/追記]