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参照用 記事

TeXの欧文フォントと文字化け

抽象微分多様体、もうチョット」で、マリオス微分幾何をやっている“マリオス本人以外の人”として名前を挙げたエフスタッヒオス・バシリウー〈Efstathios Vassiliou〉が次の論文を書いています。

ところが、数式が文字化けしちゃってるんです。こんな(↓)感じ。

文脈で判断すると、バックスラッシュは'n'のようです。一部分が、換字式暗号〈かえじしきあんごう〉になっちゃってます。

化けている(置き換えられている)文字を列挙すると:

  1. バックスラッシュ
  2. ゲーデル左括弧: 鉤形。ゲーデル符号化に使う括弧の左のように見えます。
  3. 角キャップ: キャップ記号('∩')の角ばったヤツ。
  4. カップカップ記号('∪')の角ばったヤツ。
  5. テンソル積: \otimes^\inftyテンソル積記号です。文脈的におかしい。
  6. 無限大: 同じく \otimes^\infty の指数の無限大記号です。
  7. 右波括弧: 文脈的におかしい。
  8. 随伴記号: Tを時計回りに90度回転したような形。関手の随伴を表すときに使えます。

TeXで使っている欧文フォントに起因するんじゃないかと、調べてみました。次の記事のフォント一覧で事情が分かりました。

数式で使う欧文フォントが色々ありますが、mathhcalというフォントでは、英字〈ラテン文字〉小文字のところに、特殊な記号が割り当ててあるんですね。

これを参考にすると、次の対応表ができます。テンソル積と無限大は、文脈からの判断です。

番号 化けた文字 もとの文字
1 バックスラッシュ n
2 ゲーデル左括弧 d
3 角キャップ u
4 カップ t
5 テンソル Ω
6 無限大 1
7 右波括弧 f
8 随伴記号 a

化けた文字をもとの文字に置き換えれば:

 {\mathcal L}({\mathcal U}) = {\mathcal M}_n({\mathcal A})({\mathcal U}) \stackrel{\sim}{=} {\mathcal M}_n({\mathcal A}({\mathcal U})),\:\:\: {\mathcal G}{\mathcal L}(n, {\mathcal A})({\mathcal U}) \stackrel{\sim}{=} {\mathcal G}{\mathcal L}(n, {\mathcal A}({\mathcal U})),

 \rho \equiv {\mathcal Ad}: {\mathcal G}{\mathcal L}(n, {\mathcal A}) \longrightarrow {\mathcal Aut}(\Omega^1 \otimes_{\mathcal A}{\mathcal M}_n({\mathcal A}))

 {\mathcal Ad}({\mathcal f})\cdot(\theta \otimes a) := \theta \otimes ({\mathcal f}\cdot {\mathcal a} \cdot {\mathcal f}^{-1}),

比較のために再度化けたバージョン:

バシリウーさん、出来上がった論文を印字してチェックしなかったのかなー? まさか?? この現象は環境依存なのかも知れません。