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参照用 記事

2-豊饒圏と繰り返し豊饒圏

昨日「2-豊饒圏」という記事を書きました。これは、「思い付きを忘れないうちに書いた」ものです。確認したり調べたりの作業はしてません。

とりあえず、「類似の概念を誰かが定義しているだろう」と思って調べたら … ない。あれっ? 意味のある概念なら何かしら既存の資料があるでしょうに、それがない … ということは無意味だったのか?

どうも、通常の豊饒圏論のなかで、2-豊饒圏と同じものは構成できそうです。その点からは無意味だったかも知れません。が、昨日の記事の冒頭で述べたような動機だと、2-豊饒圏のほうが使いやすそうです。使い勝手からは、無意味でもないでしょう。


2-豊饒圏」で述べたような、モノイド圏Vで2-豊饒化した圏を、V-2-圏V-2-category〉とも呼び、その全体をV-2-Catとします。

V-2-Catは、圏(1-圏)と考えます。その対象は、もちろん(小さな)V-2-圏です。射は、V-2-関手V-2-functor〉です。V-2-関手は、通常の関手と、ホムV-圏ごとのV-関手の族をうまいこと組み合わせて定義できるでしょう。(V-圏はV-豊饒圏のこと、V-関手はV-豊饒関手のことです。)

ちょっと考えただけですが、圏V-2-Catは、どうやら、圏(V-Cat)-Catと同じものだったようです。(V-Cat)-Catは、モノイド圏V-Catで豊饒化された圏の圏です。「豊饒圏の圏で豊饒化した豊饒圏の圏」です。あー、ヤヤコシイ。豊饒化を繰り返しているので、繰り返し豊饒圏〈iterated enriched category〉と呼んでおきましょう(別な名前が既にありそうだけど)。

まず、モノイド圏としてのV-Catについてザッと述べましょう。V = (V, \otimes, I, α, λ, ρ) は豊饒化ベース圏として、V-Catの対象は、(小さな)V-豊饒圏です。V-Catの対象であるV-豊饒圏は、C, Dなどの(斜体でない)文字で表します。

V-Catの射は、V-豊饒圏のあいだのV-豊饒関手V-enriched functor〉だとします。豊饒関手については、nLab項目を参照してください。

V-Catは通常の圏になりますが、モノイド構造も入れましょう。V-Catのモノイド積と単位対象は、\odot, J とします。

C, D∈V-Cat として、それらのホム対象は、C(a, b), D(a', b') のように書きます。|D|の要素にダッシュ〈プライム〉を付けることにします。

C\odotDを定義したいのですが、まず、対象集合は

  • |C\odotD| := |C|×|D|

です。ここで、C\odotD の'\odot'は新しく定義するモノイド積の記号で、|C|×|D| の'×'は集合の直積の記号です。

次にホム対象の定義:

  • (C\odotD)((a, a'), (b, b')) := C(a, b)\otimesD(a', b')

結合を与える射の族は次のように定義します。

  • δ(a, a'), (b, b'), (c, c'):(C\odotD)((a, a'), (b, b'))\otimes(C\odotD)((b, b'), (c, c'))→(C\odotD)((a, a'), (c, c')) in V
    δ(a, a'), (b, b'), (c, c') := γa,b,c\otimesγ'a',b',c'

ここで、δが定義すべき族で、γがCの結合、γ'がDの結合です。対象集合の定義を考慮すると、δはwell-definedになります。

C\odotDの恒等は次のようです。

  • τ(a, a'):I→(C\odotD)((a, a'), (a, a')) in V
    τ(a, a') := λI-1;(ιa\otimesι'a')

ここで、τが定義すべき族で、ιがCの恒等、ι'がDの恒等です。λIは I\otimesI→I in V という同型射です。λI = ρI なのですが、これの証明は難しいです。

最後に、単位対象 J∈|V-Cat| を定義します。

  • |J| := {0}
  • J(0, 0) := I
  • γ0,0:J(0, 0)\otimesJ(0, 0)→J(0, 0) in V
    J(0, 0) := λI
  • ι0:I→J(0, 0) in V
    ι0 := idI

これで、モノイド圏 V-Cat = (V-Cat, \odot, J) の素材は揃いました。が、V-Catにおける結合律子α, 左単位律子λ, 右単位律子ρと、それらが従う法則を示さないといけません。めんどくさいけど、頑張ればできるでしょう。

V-Catがモノイド圏であることがわかれば、決まりきった手順で (V-Cat)-Cat を構成できます。(V-Cat)-Cat の射は豊饒関手です。豊饒自然変換(2-射)までは考えないで、(V-Cat)-Catは1-圏とします。

この状況で次の圏同値が成立するはずです(ちゃんと確認してないけど明らかに思える(苦笑*1))。

  • V-2-Cat \stackrel{\sim}{=} (V-Cat)-Cat

*1:明らかに思えたが実は違っていた、ってこともあるので、細部までちゃんとやらないとダメなんですが、細部がめんどくさい。