昨日の記事「はてなブログで貧相なペースティング図」に書いたやり方で、不格好ながらもなんとかペースティング図を描けるようになりました。そこで、通常の図式(1次元の図式)とペースティング図(2次元の図式)の可換性について考えてみます。(可換図式の基本的なことは「圏論図式の描き方と解釈のコツ」参照。)
まずは可換図式の例を挙げます。
これは、次の等式と同じことです。
- f;k = h;g : A→D in C
Cが2次元の圏ならば、次のペースティング図が意味を持ちます。
これは、次のような、2-射 α の宣言と同じことです。
- α:: f;k ⇒ h;g : A→D in C
等式と2-射の宣言を見比べれば、同じ形式だとわかるでしょう。実際、等式は特殊な2-射の宣言とみなせます。「等しい」ことを表す2-射を eq と書けば、最初の等式は次のように書いてもかまいません。
- eq:: f;k ⇒ h;g : A→D in C
これをペースティング図で描けば:
つまり、可換図式は特殊なペースティング図なのです。一般に次のことが言えます。
- ペースティング図は、2-射を宣言または定義する。
- 可換図式は、「等しい」を意味する2-射 eq を宣言または定義する。
- 射に関する(幾つかの)等式はペースティング図で表現できる。
さてところで、ペースティング図の等式というものがあります。
図の出典はそれぞれ:
- Title: Higher-dimensional Mac Lane's pentagon and Zamolodchikov equations
- Author: Sjoerd E.Crans
- URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022404901001025
- Pages: 19p (図は p.18)
- Title: Cohomology and deformation theory of monoidal 2-categories I
- Author: Josep Elgueta
- URL: https://arxiv.org/abs/math/0204099
- Pages: 56p (図は p.14)
2つのペースティング図を S, T とすると、ペースティング図の等式は S = T という形です。「等式はペースティング図で表現できる」という原則を適用すると、ペースティング図の等式もペースティング図で表現できるはずです。ただし、高次元のペースティング図になります。
通常の可換図式が、辺達の等式を表す可換多角形を持つのに対して、高次元の可換図式は、面達の等式を表す可換多面体を持つことになります。多面体の集まり(3次元図形)をリアルに描くのは手間なので、高次元の可換図式はあまり見かけません。たいていは、ペースティング図の等式で済ませています。
立体的に描く代わりに、次のような描画法もあります。
- Title: Identities among relations for higher-dimensional rewriting systems
- Author: Yves Guiraud, Philippe Malbos
- URL: https://www.irit.fr/~Ralph.Matthes/CAMCAD09/Papers/niarV2.pdf
- Pages: 16p (図は p.5)
これは1-射(通常の射)を省略して、2-射達のあいだをつなぐ3-射と、3-射達のあいだをつなぐ4-射を描いています。立体的に描く代わりに、矢印の“太さ”で次元を表すことにより平面内に収めています。
一般的に言えば; n-射の組み合わせのあいだの等式は、(n + 1)-射の特別なものになり、(n + 1)次元の“多面体”に'eq'とマークされた“可換多面体”で表現されます。