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参照用 記事

ソフトウェア工学(2):ちょっと無邪気だったかも、naoyaさん

noyaさんの意見は、9割方同意できるものです。残る1割もその内容にではなくて、その無邪気すぎる表現に疑問を感じる、ということです。曰く:

>お上品な方法論を解説した分厚い書籍
>スーツを着て設計書を書いてからものを作る
>頭でっかちの設計屋が何日もかけて設計するようなやり方

これって、マンガの世界でしょう。“分厚い書籍”に、「設計するときは“スーツを着る”べし」って書いてありました? “頭でっかちの設計屋”って実在しますか?

“スーツを着た頭でっかちの設計屋”という描像は、“口の周りに輪のような黒い髭をはやした泥棒”とか“白衣を着て試験管を持っている科学者”と同じ意味で戯画化されたシンボルに過ぎません。このような表現は、反ソフトウェア工学ネガティブ・キャンペーンにマンマとはまっているみたいです。

ひょっとすると、naoyaさんは具体的な指示対象(実在人物)を思い描いて“スーツを着た頭でっかちの設計屋”と呼んだのかもしれませんが、そんなヤツは(naoyaさんにとっては)揶揄や批判の対象にさえならないでしょう*1。多く(?)の環境では、「そんなヤツ」がホントにいたりして、しかも無視したくてもできなかったりするわけですが、(外から眺めるかぎり)「はてな」にはどうも「そんなヤツ」はいそうにありませんよね。

それと、naoyaさん&はてなの手法は、ソフトウェア工学に反するわけでも、計算科学的に間違っているわけでもありません。ソフトウェア工学伝統芸能ではありませんから、何十年も前の躾<しつけ>や作法を守ることを強要してはいません。アジャイルが有効な方法であるなら、それを知的に理解可能な、かつ伝達可能な体系として定式化するのが“現代の”科学/工学の課題となるでしょう。

実のところ、naoyaさん&はてなのような手法は、heuristic method(発見的手法)などと呼ばれ、僕が若い頃(つまり、大昔)から存在します。未知の領域への探索を伴う開発では、アカデミックに極めてまっとうに、かつハードにトレーニングされた人々でも、試行錯誤以外に採るべき方法がなかったのです。

かつてのLisperやProloger達が挑んでいたような、未知要因がとても大きな開発プロジェクトが実務の世界でも珍しくなくなった、ということでしょうか。

(続く)

*1:safely ignorable