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参照用 記事

創作者の品質責任

id:orionaeさんが、長いプロフィール(自己紹介)のようなエントリを書いています。その発端は“ソフトウェア工学プチ論争”だったのですが、僕とorionaeさんのあいだのやり取りに限って、ちょっと補足を加えておきます。

実は、

ソフトウェア開発者の責任は、ほかのあらゆる製造業となんら変わりません。

に対して

ソフトウェア産業は、自動車や冷蔵庫を作るような意味での「製造業」ではないのです。

と返したのは、ちょっとイジワルだったかな、という気もしていました。

前後の文脈から、orionaeさんの意図はわかっていました。「ソフトウェア産業の製造物と他の製造業の製造物が同種」といった意味は、orionaeさんの主張には最初から含まれていません。そんなことではなくて、倫理観、責任意識を問題にしていたのですね、orionaeさんは。

つまり、ソフトウェアが他の製造物とまったく異質であっても、特別扱い/甘えは許されず、「ほかのあらゆる製造業と変わらない」品質保証責任がある、と。 -- そう解釈しても、完全に同意できない面も残る(今は論じない)のですが、そのような意識と姿勢には、やはり感心してしまいます。

最初のorionaeさんの“表現”を僕が問題視したのは、「ほかの製造業」「なんら変わらない」(という言葉)から、表層的誤読・誤解と短絡的反応に結びつく懸念を感じたからです。

個人創作者としての矜持<きょうじ>を保ちながら、製造業者としての責任も貫くという態度は、あまりにも正統派過ぎて、かえって説明は困難だと思いますよ。だから、言葉の選び方も慎重に。

創作は(orionaeさんも例えに出しておられるように)芸術の香りさえする行為ですが、一方の品質保証は工場労働と工業製品の匂いがする制約基準ですから、少なくとも表面上は、ジレンマに見えます。(おそらく、実際のジレンマも存在する。)

それでも、「使命」や「貢献」という言葉をてらいもなく使うorionaeさんの真摯<しんし>な態度に、僕は共感と好感をおぼえます。茨の道を選んでいる、という気もしますが、それでもなお進む価値がある道だとは思うから、(陰ながら)応援します。

最後に、アー、ナルホドネと思ったこと:orionaeさんは体育会系とのこと。そういう姿勢を維持するには、やはり筋細胞も連動してないと難しいものね。

見出しに使った(使ってしまった)「創作者の品質責任」という話題は、またいずれ書くかもしれません。