このブログの更新は Twitterアカウント @m_hiyama で通知されます。
Follow @m_hiyama

メールでのご連絡は hiyama{at}chimaira{dot}org まで。

はじめてのメールはスパムと判定されることがあります。最初は、信頼されているドメインから差し障りのない文面を送っていただけると、スパムと判定されにくいと思います。

参照用 記事

「新宿バルト9」の発券システムは、運用努力では救えない

月曜日に書いたエントリー「シネマコンプレックス『新宿バルト9』の驚嘆すべき大バカ最低システム」に、たくさんのブックマーク・コメントが付いていました。僕の記述と表現が不十分だったことから、若干の誤解もあるようです。いくつかのコメントを引用しながら、補足説明します。(子供と遊びに出る前に; 今日は映画館じゃないよ。)

僕は、当日待たされイライラした観客としても腹を立てていますが、(おおまかに職業分類するなら)同業者として「いくらなんでも、こんなシステムを作っちゃいけないだろう」との憤りも感じたのです。なにかビジネス的・政治的な裏事情があったのかもしれませんが、そんなことを勘ぐってもしょうがないので、システムの使い勝手の観点から考えてみます。

発券係(人間)が悪いとは思えない

> さすがにそれはシステムじゃなくてバイト個人さんの問題だと思います。(注:後でこの意見は訂正なさってます。)
> 気のきかない係員には運用できないシステムを作らせた奴は責任とって教育しる!

今回のケースでは、発券係を責める気はしませんし、彼に責任があるとは思えません。また、「不慣れなバイトを使うな」とか「もっと教育しろ」とかも有効性を欠く指摘でしょう。それを説明するために具体的な状況を想定してみます。

3つの典型的ケースを考えてみよう

次の3つのケースを考えてみます。

ケース1: まだ十分に空きがある、一人客
客:「まんなかより少し前の右寄りでお願いします。」
係:「この席ではどうでしょうか(赤で画面表示)。」
客:「そこでいいです。」

ケース2: もうほとんど空いてない、一人客
客:「画面の左上のほう、1つだけ残っているよね。」
係:「この席でしょうか?」
客:「うん、そこそこ。」

この2つの状況では、席番号を聞く必要もないし、発券係に特別なスキルは要求されません。

ケース3: 席はかなり埋まっている、家族四人

以下、家族連れのケースを詳細に見ましょう。父母と子供二人だとします。チケットを買おうとしているオトウサンが、青と白がマダラ模様となっている画面を眺めてこう考えたとします。

  1. できるなら、4人横並びがいい。
  2. それが無理なら、自分だけは離れても、母子3人横並びが望ましい。
  3. 下の子は母親の隣じゃないとダメだが、上の子は最悪一人離れてもいいか。
  4. そうはいっても、あまり離れた位置に子供一人じゃ可哀想だ。

このような条件や要望を発券係に伝えるのは、相当な対話を必要とします。それに対して、係が客の意図を適切に汲んで、最適(に近い)配置を見つけるのも簡単ではありません。

係:「この4席ではどうしょうか?」
客:「いや、離れすぎだな。やっぱり、はじっこのほうでもいいから、もっと4人が近くになる席ないかな?」

とかやり取りしていると、手間と時間は随分なものとなるでしょう。僕のたった1回の経験と印象ですが、係の人に頼んで探してもらうより、オトウサンがディスプレイを見ながら自分で決定したほうがずっと速いと思います。

さて、オトウサンが決定した4席(離ればなれかも知れません)をどうやって係に伝えるのでしょうか? 「C14, C15, J27, K28」が最も迅速です。が、その席番号を確認するには紙の座席表と画面との比較以外に方法がありません。あるいは、「左・右・中央のなか左のブロック、前から3列目、通路側から勘定して、えーと、イチニサン、四番目かな」といった伝達になります。

発券スキル/接客スキルでカバーできるか?

ケース1とケース2に関しては、簡単な教育を受けたバイトでも十分です。誰がやったってうまく処理できます。ケース3はどうでしょう。不慣れなバイトはまごつくでしょう。かといって、慣れていたところで劇的に速く処理できるとは思えません。コミュニケーション能力とか、客をイライラさせないニコヤカな対応、パターンサーチ能力とか、要求されるスキルはあるでしょうが、発券オペレータにそこまで要求しトレーニングする意義があるのでしょうか。トレーニングしたって、何倍も速く客をさばけるわけないですよ。人件費とか人員増減の都合とか考えれば、バイトやパートでまかなうのが妥当だと思います。

子供向け映画上映(家族連れイッパイ)の状況では、熟練発券オペレータ(?)であっても、遅滞なく発券入場を行うのは無理なんですよ。なぜか? 発券システムの出来が悪すぎるからです。

と、これが僕の指摘です。

というわけで:

> わたしが同映画館へ行ったときは、卓上の紙を指さして「このへん」で取ってくれました。
> 自分が行った時はすんなり入れたけどついてたのかな。

問題がない状況では問題が出ない、ということだと思います。

改善案などのコメントについて

> 透明なシートに座席表印刷して画面に張れば良いと思った。
> 大抵、ディスプレイにシール貼り付けるなりの現場対応が行われる。
> 画面の上に番号が書いた透明シートをかぶせれば解決すると思うな〜 っと 
> 透明なシートに席番書いて被せるというすぐできることをやらないのはなぜ

これは無理な気がします。9つの映画館がすべて同じ作りなら可能ですが、席数やレイアウトが違えば、固定した透明シートでは対応できません。それに、印字が小さくなりすぎて見にくいという問題があります。

> タッチパネル仕様にしていたが精度が悪くてやめたとか

それ、あるかもしれません。一座席の画面上での面積が小さいので、正確にタッチするのは難しそうです。それでズーミングが必要だと感じたのでした。

> 実のところ、「真ん中辺」という指示を係員が受け付けないのがいけないと思うのだが、実は係員側のディスプレイも使いにくいのか?

ケース1と2のように、「真ん中辺」で通じる状況ならさすがに席番号の必要はありません。前の記事で僕が揶揄的に面白オカシク書き過ぎて誤解されたのなら、ごめんなさい。

> 一つのディスプレイを一緒に見ればいいような。

いいアイディアですね。しかし、今の発券カウンターは横一列の長いテーブルなので、大幅な改修工事が必要で、営業に差し障りが出るでしょう。改修工事が断行されて、suikanさんの妄想のようになれば、僕もまた行きます。必ず行きます、子連れじゃなくて一人で。

> タッチパネルすら不要じゃないかな。エリア指定したらそこだけズームできるようにすれば済む話では?

あ、そうですね。空いている席と番号の対応が取れない点が一番の問題です。エリア(席のグループ)を伝えると、席番号が読み取れる程度の拡大表示がされるだけでも随分と改善されそうです。