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参照用 記事

2つのベクトルとコベクトルの三位一体

昨日のエントリー

いかにも敬遠されそうなネタだよね。でもかまわんのだ。今日も書くよ、っと。

また今日も書くよ、っと。今日はドトール紙ナプキンで計算したこと。


Uが有限次元ベクトル空間で、φ:U×U→K が双線形形式のとき、Φ:U→U* と Ψ:U→U* を次のように定義します。

  • Φ = λx.λy.φ(x, y)
  • Ψ = λy.λx.φ(x, y)

「片側非退化性から両側非退化性を導く」で述べたことから、次の6つのことは同値です。

  1. ∀y.(φ(x, y) = 0) ならば x = 0
  2. Φが単射(Φの核が零空間)
  3. Φが可逆(Φ-1が存在する)
  4. ∀x.(φ(x, y) = 0) ならば y = 0
  5. Ψが単射
  6. Ψが可逆

もっと具体的に、次の等式が成立します。

  1. Ψ = Φ*・Θ
  2. Φ = Ψ*・Θ

Θは、「ベクトル空間の二重の双対はどうなるか」で述べた、UとU**のあいだの同型です。

以下φは非退化と仮定。ΦもΨも可逆なので、Ψ-1・Φ:U→U と Φ-1・Ψ:U→U が考えられます。Ψ-1とΦ-1イプシロン記法で書けば:

  • Ψ-1(f) = εy.[∀t.(φ(t, y) = f(t))]
  • Φ-1(f) = εx.[∀t.(φ(x, t) = f(t))]

これをもとに、Ψ-1・Φ と Φ-1・Ψ を書き下すと:

  • -1・Φ)(x) = εy.[∀t.(φ(t, y) = φ(x, t))]
  • -1・Ψ)(y) = εx.[∀t.(φ(x, t) = φ(t, y))]

これを見ると、上の対応で x ←→ y と入れ替わるx, yは、同じ“働き”を持つことがわかります。xはφの左の引数として働き、yは右の引数として働きますが、線形形式 U→K としては同じものを定義します。本来、U→K の“働き”といえばU*の元(コベクトル)がありますが、左からのx, 右からのyと同じ働きをfとすると、任意のt∈Uに対して次が成立します。

  • φ(x, t) = φ(t, y) = f(t)

φが対称性(φ(x, y) = φ(y, x))を持つなら、xとyは一致しますが、非対称ならxとyは別物かもしれません。別物でもxとyは双子の兄弟のようなもので、左から/右からの作用で同じ機能を実現します。xとy、それと鏡の世界の住人であるfが三位一体*1なんです。


非対称な双線形形式はちょっと扱いが面倒ですが、左右の違いがあるのがかえって面白いですね。

*1:キリスト教の用語だから、こんなところで使うと叱られるかな。