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参照用 記事

アフィン変換なんて簡単だ

最近、ベクトルと行列に関する予備知識は仮定せずにアフィン変換を納得してもらう、という状況になったのですが、意外にもスンナリ理解していただけました。座標軸の概念さえあればなんとかなるようです。

以下では、僕の経験そのままではなくて、次に同じことを教えるなら(より改善して)こうするだろう、という案です。一人だけを相手にするより、複数の人を一緒に教えるほうが効果があると思います。


以下の見出しには「アフィン***」という言葉が使ってありますが、そんな言葉を出す必要はありません。

アフィン座標系の概念

まず、紙(後の都合から、トレーシングペーパーが吉)に定規と鉛筆で座標軸を描く演習。

  1. 原点はどこに打ってもいい。
  2. 座標軸は2本(あたりまえだ)。それぞれの軸に、方向を示す矢印と、1番、2番という番号を記入する。
  3. 2本の座標軸は直交しなくてもいい(斜交座標系と呼ぶことがあります)。もちろん、直交してもいい。
  4. 軸上には、0, 1, 2, ... と目盛りをふる。目盛りは等間隔だが、2本の軸上で違う単位を採用してもよい。

アフィン座標系を決める3点

次に、「2本の座標軸のセット=座標系」が3点で決まることを確認します。3点とは、原点、第一軸上の目盛り1の点、第二軸上の目盛り1の点です。この3点を指す適切な名前がない(専門用語ではアフィン枠、アフィン基底)ので、基本3点とでも呼びます。

既に描いた座標軸に対して、基本3点を確認します。

基準座標系からの座標変換

僕らに馴染みの座標系は:

  1. 第一軸は、水平に左から右
  2. 第二軸は、垂直に下から上
  3. 2本の座標軸は直交している
  4. 2本の軸上の目盛りは同じ単位を採用している

人によっては、「第二軸は、垂直に上から下」が馴染みかもしれません*1

普通の方眼紙に一番馴染みの座標系を描いておいて、既に描いた色々な座標系(アフィン座標系です)を重ねて、基本3点の座標を、基準座標系を使って読み取ります。例えば、原点 (2, 1), 第一軸上の目盛り1の点 (0, 3), 第二軸上の目盛り1の点 (4, 1) とか。

いくつか試してみると、座標変換が6つの数値で完全に決まることがわかります。「6つの数値パラメータ ←→ いろいろな座標系」という対応関係が体で分かれば目的達成です。

図形の変形と座標系の取り替え

アフィン変換には2つの解釈があります。まず、平面の点が点に移るという解釈。図形そのものが変形します。この場合は、以前の座標系(基本3点で決まる)が新しい座標系に以降するとき、平面内のあらゆる点が座標軸と一緒に引きずられて動きます。例えば、円が楕円に変形したりします。

一方、平面内の点/図形はまったく変わらないが、格子模様と目盛りだけを描き変えたという解釈もあります。図形がトレーシングペーパーに描いてあって、座標の格子のほうは背景に描いてあると思うと、背景方眼紙を別なものに取り替える操作です。

この2つの解釈の区別と相互関係の把握はかなり難しいと思います。僕は、2つの解釈には言及せずに、「座標軸と図形が一体となって変形してしまう」というほうだけを説明しました。

そもそも、「座標系」という言葉が、アフィン同型 R2→A を意味するのか、その逆である A→R2 のことなのかハッキリしない(人により違う)ので、これを定義してからでないとちゃんとは説明できないでしょう*2

*1:アフィン空間しかない世界(アフィン空間とアフィン写像の圏)だと、このての「お馴染み」の座標系を選び出すことは不可能です。長さ、角度、向き、水平垂直なんて概念が存在しないからです。我々の世界はアフィン空間より豊かなので、アフィンじゃない概念を使って「基準となるアフィン座標系」を選んでいるのです。

*2:個人的には R2→A を枠、逆方向を余枠と呼ぶのが好きです。「座標」という言葉は、余枠のほうの意味が強い気がします。