このブログの更新は Twitterアカウント @m_hiyama で通知されます。
Follow @m_hiyama

メールでのご連絡は hiyama{at}chimaira{dot}org まで。

はじめてのメールはスパムと判定されることがあります。最初は、信頼されているドメインから差し障りのない文面を送っていただけると、スパムと判定されにくいと思います。

参照用 記事

掛け算から足し算を作る(パズルとしてやってみよう)

とある論文に、パズルのネタになりそうな計算の話があったので紹介します。予備知識は特に要りませんが、けっこう難しい。



小学校で最初に習う計算は足し算です。しばらくして掛け算を習います。整数の掛け算、例えば 3×4 は、足し算の繰り返しとして導入することもできます。3×4 := 3 + 3 + 3 + 3 。

掛け算を先に習って、掛け算をベースに足し算を定義するような学習コースは聞いたことがありません。が、宇宙のどっかに、そんな順序で計算を教えている星があるかもしれません。我々地球人には不自然ですが、掛け算をもとに足し算を定義することは出来るようです。

実数の集合に対して、足し算を忘れてしまい、掛け算だけを考えます。掛け算の法則は全部使えます。具体的に書けば:

  1. (a×b)×c = a×(b×c)
  2. a×b = b×a
  3. a×1 = a
  4. a≠0 ならば、a×a' = 1 となるa'(aの逆数)が存在する
  5. a×0 = 0

純粋に掛け算だけから足し算を搾り出すのは出来そうにないので、s(x) = x + 1 という関数(実数版のサクセッサ関数)は素材に使っていいとします。この関数sの性質は:

  1. sは全単射で、s-1(逆数じゃなくて逆写像)を作れる
  2. s(0) = 1
  3. s(a×s(b×a-1)) = a×s(s(b)×a-1) (ここでは、a-1は逆数)

最後の等式は人為的な感じがしますが、掛け算と逆数だけでサクセッサ関数を特徴付けるものです。なんでこんな等式を思いついたかは 分かりませんねぇ。

掛け算とsを使って足し算を定義した上で、足し算として必要な性質を全部証明しなさい、というのが問題です。足し算の性質は:

  1. (a + b) + c = a + (b + c)
  2. a + b = b + a
  3. a + 0 = a
  4. a + a' = 0 となるa'が存在する
  5. a×(b + c) = a×b + a×c

これが出来たとして、それが何を意味するかと言うと; Gが可換群で、G + {0} 上にサクセッサがあれば、G + {0} を体にできるってことです。歴史的な事情は分からないのですが、特に注目もされなかった事実のようです。パズルネタ程度の扱いだったのでしょう。が、某論文の雰囲気からは、けっこう重要なもの(になりうる)らしいです。

[追記]パズルの答はコチラ[/追記]