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雑談の効能:スピノールとか

表現論復習会での雑談のなかで、「スピノール」という言葉が出ました。僕はスピノールに関して何も知らなかったのですが、おぼろげながらイメージを持てるようになりました。もちろん、正確には理解できてませんが、雰囲気が掴めるだけでも雑談の効能なのだ、と思います。

スピン群

なんか、回転群(特殊直交群)に似ているが少し違う群Gがあるらしいです。Gは回転群の二重被覆らしい。被覆の射影は局所同相なので、例えば単位元の近傍を見てる限り、Gと回転群の区別は付かないですね。こんなGがスピン群。

スピン群が回転群の二重被覆になっているとすると、スピン群は回転群よりも(ある意味で)一般的だと言えます。回転群の要素(変換)を1つ取ったとき、それに対応するスピン群の要素は2つあるので、回転操作に加えてナニか2値のスイッチング操作を付けたようなものがスピン群による操作なんでしょう。

時間パラメータに沿って、回転群やスピン群の操作を施す状況を考えたほうがわかりやすいかもしれません。なんかの物体にちょっとずつ回転操作を繰り返して結局もとの位置に戻ったとき、回転群作用の連続なら何も変化がないけれど、スピン群作用だった場合は二値の属性がスイッチすることもあるのでしょう、たぶん。

コンピュータグラフィックスでは四元数クォータニオン)を使うらしいです。グラフィックスに必要なのは3次元空間の並進群や回転群だと思うのですが、なんで余分の次元があるのでしょう? 最終的には3つの座標しか使わなくても、計算には四元数が便利らしいですね。よく知らんけど。

スピン群は、四元数のノルム球とイコールだったか埋め込めるんだったか、だそうで、これが3次元空間の計算に四元数が便利な根拠のひとつでしょう。スピン群の計算ができるってことは、二値のオマケを無視すれば回転群の計算もできることでしょうから。

ピノールはベクトルじゃない?

さてスピノールですが、これはどうもスピン群を線形表現したときの、表現空間に属するベクトルのことのようです。「それじゃ、単にベクトルのことじゃん」と僕は思ったのですが、橋本さん(id:yoshitake-h)によると「物理のベクトルはもっと限定的なもの」だそうです。

オトさん(id:oto-oto-oto)が「スピノールの足(「脚」か?)」という言葉を使ってましたが、どうやら「スピノールと呼ばれるベクトル」の座標の添字のことらしいです(あってますか?)。ここらへんが文化の違いなのかもしれまんせんが、ややこしい。

しかし、後になってハタと気が付いたことがあります。物理のベクトル/テンソルとかは「コレコレの変換法則に従う量はナニナニと呼ぶ」みたいな定義をすることがあるんです。あれは、単なるベクトル空間だけじゃなくて、それにくっついている変換群も一緒に考えた用語法なんだな、とそう納得したのです。

ベクトル空間に変換群がくっついているとは、つまり群の線形表現なので、表現の構造を前提にして、その表現空間の要素をナンタラとかカンタラとか呼び分けていた、と、そういう事情でしょう。

スピン群はよく分かってないので直交群で考えると、直交群が作用してる空間は計量を持つはずです。内積があるわけですね。すると、内積を通じてもとのベクトル空間と双対ベクトル空間が1:1に対応します。この対応を使えば、もとのベクトル空間への作用から、双対空間への作用も自然に作れます。さらに、もとのベクトル空間と双対空間を同一視してしまえば、ひとつの空間に2つの群作用があるように思えます。

同一視がいいか悪いかの問題はありますが、ともかくも、ベクトル空間V上に(同一視しないならVとV*上に)2種の群作用があるので、座標(線形同型) V→Rn への群作用も2種類あります。座標値、つまり添字付けられた数の組に、片一方の群作用(座標変換)を考えたシロモノを共変ベクトル、もう一方を反変ベクトルと呼んでいるのでしょう。どっちが共変でどっちが反変かは、常に忘れますが。

ピノールも、ベクトル空間の要素という意味ではベクトルですが、普通とは異なった群作用を一緒に考えるので「ベクトルではない」と言えるのでしょうね(文化的な背景によっては)。