零に逆数があったからって、特に問題はないですね。
(M, ・, 1) の3つ組があって:
- Mは集合
- ・はM上の二項演算 (-)・(-) :M×M→M
- 1∈M
- ・と1に関してMは可換モノイドになる
と仮定しましょう。Mを実数全体、・を普通の掛け算、1はお馴染みのイチとすればこの仮定は満たされます。ただし、具体的な可換モノイドを固定するのではなくて、可換モノイド一般について考えます。
(M, ・, 1) が可換モノイドだとして、0∈M が零であるとは、
- 任意の x∈M に対して x・0 = 0
零の定義はこれでいいですよね。
0に逆数があるなら、それを0-1と書くことにします。この書き方で
- 0・0-1 = 1
となります。
さて、0-1が存在しちゃいけないんでしょうか? もう一度繰り返しますが、具体的な可換モノイドのなかに零の逆数があるかないかを問題にしているのではなくて、一般的に「可換モノイドに零とその逆数が存在したら不都合があるのか?」という問です。
0-1がもし存在するなら 0-1・0 = 0・0-1 = 1 、一方 x・0 = 0 のxに0-1を代入して 0-1・0 = 0・0-1 = 0、よって 1 = 0 です。さらに、任意の x∈M に対して x = x・1 = x・0 = 0 ですね。これから言えることは、
- 零と零の逆数が存在する可換モノイドは単元モノイドになる
ということです。単元モノイドも立派な可換モノイドだし、 1 ≠ 0 を事前に仮定していたわけでもないので、別に矛盾は起きてません。
「可換モノイドに零と零の逆数が存在するのはオカシイ、ダメだ」と主張する人がいたとすれば、それは暗黙に「1 ≠ 0」を前提しているのでしょう。