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参照用 記事

高次圏: セオリーと指数関手タワー

さらに補足。

nLab(https://ncatlab.org/nlab/show/HomePage)は、たいていの概念に対して明確で信頼できる定義を提供してくれます。ですが、ドクトリンの定義(https://ncatlab.org/nlab/show/doctrine)は、なんだかハッキリしません。ドクトリンの定義がいくつもあるって事情もあるでしょうが、それを差し引いてもやっぱりモンヤリ

これは象徴的な事態だと思います。どんな意味で象徴的かと言うと; 無限タワーを考えないとうまくいかないことを示す例として。

nLabの(主要な)定義では、ドクトリン=2-セオリーです。そして、セオリー=1-セオリーなので、「1-セオリー, 2-セオリー」は考えています。しかし、k = 1, 2 以外のkまで含めたトータルなk-セオリー(k = ..., -1, 0, 1, 2, ...)を考えてはいません。「高次圏: 無基底・無限階層 補足」で引用したように、無限後退〈infinite regress〉を嫌っているのです。

無限タワーとしてのセオリーを考えると、「n-セオリー」という言葉の曖昧さも見えてきます。

  • ひとつの無限タワーの特定次元(それがn)の部分(n-成分、n-部分)を「n-セオリー」と呼んでいるのか?
  • ひとつの無限タワーの、特定次元(それがn)より下側を切り落とした上切片〈upper segment〉を「n-セオリー」と呼んでいるのか?
  • ある特定次元(それがn)以上の部分しか持たい無限タワー全般を「n-セオリー」と呼んでいるのか?

このへんがハッキリしてないので、ドクトリン=2-セオリーの定義もモンヤリしてしまいます。

一般に、ある構造・概念Xが無限タワーであるとは、すべての整数(負の数も含めて)kに対してXkが定義されていることだとします。ある整数nに対して、k < n の部分が定義されてない(むしろ、定義が自明で考えなくてもよい)とき、下限次元〈lower bound dimension〉がnの上方無限タワー〈upper infinite tower〉と呼ぶことにします。例えば、モノイドという構造・概念は、下限次元が1の上方無限タワーとみなしていいでしょう。なぜなら、k < 1 に対するk-モノイドを考える必要はないからです*1

さて、無限タワーとしてのセオリーとは何かというと、実は二項指数関手を無限タワー化したものと捉えればよさそうです。二項指数関手については:

上記の一番目の記事の「一般化:2次元化と相対化」の節で、無限タワー化が必要そうだが難しい、ということは書いています。

二項指数関手 E:Xop×AA において、XAのどちらか、あるいは両方が2-圏のときを考える必要があります。2次元構造を考慮した指数関手の定義が欲しいのです。出来ることなら、n次元の指数関手の定義が望みですが、それは難し過ぎますね。

難しいんだけど、多少イイカゲンであってもn次元の(二項)指数関手の定義がやっぱり必要。もし、すべての次元に渡って二項指数関手の概念が定義できれば:

  • セオリー = 表示を持つ二項指数関手の無限タワー
  • n-セオリー = 表示を持つ二項指数関手の下限次元nの上方無限タワー

と定義できます。具体的なnに対しては:

  • セオリー = 1-セオリー = 表示を持つ二項指数関手の下限次元1の上方無限タワー
  • ドクトリン = 2-セオリー = 表示を持つ二項指数関手の下限次元2の上方無限タワー

冒頭で参照したnLabのドクトリン(2-セオリー)の定義は、k = 2 だけで定義しようとして、k = 3, 4, ... の部分を無視しているのでスッキリしないものになっています。

とかエラソーに言ってますが、二項指数関手の上方無限タワーを実際に構成するのはだいぶ大変だわー。適当に手を抜いたヤツ*2は作ってみようと思ってるけど。

*1:「考えないことも許されるでしょ」ってことです。0-モノイドや(-1)-モノイドを考えてはいけない、とは言ってません。考えたい人はどうぞ。

*2:手の抜き方がひとつのテクノロジーなんだけどね。