随伴系〈adjunction | adjoint system〉の全体を、圏に編成することができます。しかし、その編成の方法と出来上がる圏は実に様々です。この多様性を捨て去るのではなくて、多様性自体を主題にするのも面白いかもな、と思います。
この記事は、モナド関連の話をダラダラするゆるいシリーズの一環。同じ話題のひとつ前の記事は「複合モナドから花輪積へ」。
内容:
随伴系の圏の次元と射の形状
随伴系の全体を圏に仕立てる場合、圏の次元が色々あり得ます。
- 随伴系の1-圏
- 随伴系の2-圏
- 随伴系の3-圏
随伴系の1-圏(通常の圏)は、圏を対象として、そのあいだの随伴系を射とするものです。2-圏と3-圏は、随伴系の1-圏にそれぞれ、2-射と3-射を追加したものです。僕が想定しているケースでは、2-圏/3-圏は球体モデル〈globular model〉の圏ではありません。つまり、2-射/3-射の形状〈shape〉が2-球体〈円板 | ニ辺形〉/3-球体〈二面体〉ではありません。2-射の形状は四角形〈方形〉、3-射の形状は円柱形です。
随伴系の1-圏は普通の圏〈ordinary category〉で、随伴系の2-圏は二重圏〈double category〉の構造を持ちます。
- 随伴系の1-圏 = 随伴系の圏
- 随伴系の2-圏 = 随伴系の二重圏
随伴系の圏は、随伴系の二重圏のなかに水平圏(対象と水平射の圏)として埋め込まれます。
随伴系の3-圏は、… ンート … もっと複雑になります。今日のところはこれ以上説明はしません。(短い説明が出来ない。)
圏の次元と射の形状を今述べたように決めても、作り方にさらにいくつかの選択肢があります。随伴系の圏は射の方向が違う2種類、随伴系の二重圏は射(1-射と2-射)の方向〈direction〉と弱さ〈weakness〉*1で特徴付けられます。随伴系の二重圏がいったい何種類になるかは、勘定の仕方が(僕は)分からなくてハッキリしません。
随伴系の3-圏が何種類できるかは、もっと(僕は)分かりません。
随伴系の1-圏
とりあえず、圏を対象として随伴系を射とする(通常の)圏を考えます。この圏を 1Adj□(Cat) とします。左下付きの'1'は1-圏であることを示します。右下付きの四角マーク'□'のところには'L'または'R'が入ります。小さい圏の厳密2-圏Catのなかで随伴系を考えますが、任意の厳密2-圏Kに対して*2 1Adj□(K) を考えることができます。
随伴に馴染みがない方は、事前に次の記事を呼んでおくといいかも知れません。
L:C→D, R:D→C in Cat が関手の対〈ペア〉だとして、単位自然変換 η::C^⇒L*R:C→C 、余単位自然変換 ε::R*L⇒D^:D→D があり、(η, ε: L -| R) が随伴系になっているとします。(X^ は IdX の意味です。)
この随伴系の“向き”を左関手Lと同じ向きだと考える場合は、
- (η, ε: L -| R, L:C→D)
と書き、右関手Rの向きだと考えるなら次のように書きます。
- (η, ε: L -| R, R:D→R)
A = (η, ε: L -| R, L:C→D), B = (ι, δ: M -| S, M:D→E) のとき、
- A:C→D in 1AdjL(Cat)
- B:D→E in 1AdjL(Cat)
と考えます。1AdjLにおける下付きの'L'は、左関手〈left functor〉の向きに合わせることを意味します。
随伴系AとBの結合 A*B は次のように定義します。
- A*B := (ε;(L*ι*R), (S*ε*M);δ : L*M -| S*R , L*M:C→E)
アスタリスク'*'を結合の図式順記号に使ったのは、この結合を後で横(水平)方向の結合とみなす心積もりからです。定義の右辺に出てくる'*'は横結合またはヒゲ結合で、';'は縦結合です。
絵(ストリング図)を描いてみれば、定義の由来は明らかでしょう。この結合に関する結合律と単位律も絵で容易に示せます。
1AdjR(Cat) は、1AdjL(Cat) と同様に定義しますが、随伴系の向きを右関手〈right functor〉の向きにとります。一般的厳密2-圏Kに対する 1AdjL(K), 1AdjR(K) も同じ議論で定義できます。
1AdjL(Cat)(あるいは、1AdjR(Cat))だけでも、モナド/コモナドを調べる道具に使えます。が、やはり随伴系の二重圏が欲しい。というわけで、随伴系の二重圏についても述べたいとは思っています(いつかわからんが)。