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参照用 記事

余相対多様体上のベクトルバンドルの圏と引き戻し関手

思い付いたことがあるのでメモしておきます。ちょっとした思い付きでも書いてみると長くなりますね。 %

\newcommand{\u}[1]{ \underline{#1} } % underline
\newcommand{\In}{ \text{ in } } %
\newcommand{\id}{ \mathrm{id} } %
\newcommand{\hyp}{ \text{-} } %
\newcommand{\cat}[1]{ \mathcal{ #1 } } %
\newcommand{\ecat}[1]{ \mathrm{ #1 } } % enriched category
\newcommand{\sop}[1]{ \mathfrak{ #1 } } % special operation/functor
\newcommand{LCL}{ (\!| } % Left Convex Lens
\newcommand{RCL}{ |\!) } % Right Convex Lens
\newcommand{\Imp}{\Rightarrow}% Imply
\require{color}
\newcommand{\Keyword}[1]{\textcolor{green}{#1} }%
\newcommand{\For}{\Keyword{ \text{For } } }%
\newcommand{\Define}{\Keyword{ \text{Define } } }%
\newcommand{\Let}{\Keyword{ \text{Let } } }%
\newcommand{\Where}{ \Keyword{\text{Where } } }%

内容:

動機

{\bf Man} は(なめらかな)多様体*1と(なめらかな)写像からなる圏とします。ベクトルバンドルE = (\u{E}, |E|, \pi_E) の形で書きます。

  • \u{E} \in |{\bf Man}| は全空間
  •  |E| \in |{\bf Man}| は底空間
  •  \pi_E \in Mor({\bf Man}) は射影

[追記]多様体のあいだの写像の微分」」などの記事では、E = (\u{E}, \widetilde{E}, \pi_E) という記法を使いました。 |\hyp| は層のキャリア(層が載っている空間)の意味で使ったのでした。過去記事と記法が揃ってませんが、記事内で一貫していればいいとします(特に修正はしません)。[/追記]

E = (\u{E}, |E|, \pi_E) から F = (\u{F}, |F|, \pi_F) へのベクトルバンドル写像ベクトルバンドル射〉(単にバンドル写像/バンドル射とも呼ぶ) f = (\u{f}, |f|):E \to F は次の図で示せます。

\require{AMScd}
\begin{CD}
\u{E}   @>{\u{f}}>>     \u{F} \\
@V{\pi_E}VV         @VV{\pi_F}V \\
  |E|     @>{|f|}>>   |F| \\
\end{CD}\\
\text{ commutativa in }{\bf Man}

ベクトルバンドルベクトルバンドル写像の全体は圏 {\bf VectBundle} を形成します。底写像(底空間のあいだの写像)を \varphi : |E| \to |F| \In {\bf Man} に限定したホムセットを次のように書きます。


\quad {\bf VectBundle}(E, F)/\varphi := \{f\in {\bf VectBundle}(E, F) \mid |f| = \varphi\}

底空間 M を動かさないバンドル写像の全体も圏を形成します。その圏を {\bf VectBdl}[M] とします。ホムセットには次の関係があります。


\quad {\bf VectBdl}[M](E, F) = {\bf VectBundle}(E, F)/\id_M

\varphi: M \to N \In {\bf Man} によるベクトルバンドルの引き戻しを \varphi^\# とすると、\varphi^\# は次のような関手になります。


\quad \varphi^\# :{\bf VectBdl}[N] \to {\bf VectBdl}[M] \In {\bf CAT}

 \varphi^\# = {\bf VectBdl}[\varphi] と書いてみると、{\bf VectBdl}[\hyp] は次のような反変関手(インデックス付き圏〈indexed category〉と呼ぶ)になります。


\quad {\bf VectBdl}[\hyp] : {\bf Man}^{op} \to {\bf CAT} \In \mathbb{CAT}

ここで、\mathbb{CAT} は巨大な圏 {\bf CAT} を対象として含むもっと巨大な圏です(サイズの問題は気にしないことにします)。ついでに言っておくと、圏 {\bf VectBundle} と インデックス付き圏 {\bf VectBdl}[\hyp] の関係は次のようです。


\quad {\displaystyle {\bf VectBundle} = \int_{x \In {\bf Man}} {\bf VectBdl}[x]
}

ここでの積分記号はグロタンディーク平坦化(エンドではない)です。

 M = |E| として、集合  {\bf VectBundle}(E, F)/\varphi と、集合  {\bf VectBundle}[M](E, \varphi^\# F) のあいだには次のような写像が存在します。


\quad \sop{pb}_\varphi : {\bf VectBundle}(E, F)/\varphi \to {\bf VectBundle}[M](E, \varphi^\# F) \In {\bf Set}

\sop{pb} はドイツ文字〈フラクトゥール〉で "pb" 、pullback〈引き戻し〉を意味します。

\sop{pb}_\varphi は、バンドル写像の余域を多様体 M = |E| 上に引き戻していますが、域は特に引き戻していません。なんか対称性に欠ける気がします。で、対称性を持つ引き戻し関手を定義したいと思ったわけです。

余相対多様体の圏

\cat{C} と対象 A\in |\cat{C}| に対して、アンダー圏〈under category{^{A/}\cat{C}} が定義できます。アンダー圏は余スライス圏〈coslice category〉とも呼ばれます。オーバー圏(アンダー圏の双対)の対象を相対対象と呼ぶことがあるので、アンダー圏の対象(A からの射)は余相対対象〈corelative object〉(相対対象の双対)と呼んでいいでしょう。

アンダー圏 {^{A/}{\bf Man}} を考えます。{^{A/}{\bf Man}} の対象と射を図示すると次のようになります。

\require{AMScd}
\begin{CD}
 A  @=           A \\
 @V{\sigma}VV    @VV{\rho}V \\
 M  @>{\varphi}>> N \\
\end{CD}\\
\text{commutative in }{\bf Man}

アンダー圏の対象 \xymatrix@1 {A \ar[r]^{\sigma} & M} をペア (M, \sigma) の形で書き、アンダー圏の射は \varphi:(M, \sigma) \to (N, \rho) のように書きます。余相対多様体〈corelative manifold〉(アンダー圏の対象)(M, \sigma) に対して、M \in |{\bf Man}|多様体〈underlying manifold〉、\sigma : A \to M \In {\bf Man}構造射〈structure morphism〉、A \in |{\bf Man}|余底〈cobase〉と呼ぶことにします。

余相対多様体の簡単な例は、余底 A を一点だけの多様体 {\bf 1} にして作れます。この場合、余相対多様体 (M, \sigma) は付点多様体〈pointed manifold | 基点付き多様体〉で、余相対多様体のあいだの射は基点を保つ写像です。

余相対多様体上のベクトルバンドルの圏

余底多様体 A の下の余相対多様体 (M, \sigma) 上のベクトルバンドルを考えましょう。これは、M 上のベクトルバンドルそのものですが、E = E/(M, \sigma) のように書きます。スラッシュは"over"と読んでください。余相対多様体上のベクトルバンドルのあいだのバンドル射では、底写像に制限が付きます。それに伴い、全空間のあいだの写像も制限されます(ホムセットが絞り込まれて痩せます)。f:E/(M,\sigma) \to F/(N, \rho) は、次の図式を可換にする必要があります。


\begin{CD}
\u{E}     @>{\u{f}}>>    \u{F} \\
@V{\pi_E}VV              @VV{\pi_F}V \\
M         @>{|f|}>>      N \\
@A{\sigma}AA            @AA{\rho}A \\
A         @=            A \\
\end{CD} \\
\text{commutative in }{\bf Man}

別な言い方をすると、底写像が圏 {^{A/}{\bf Man}} の射であることが要求されます。 この要求を満たすバンドル射の全体は圏をなすのでそれを {^{A/}{\bf VectBundle}} とします。ベクトルバンドル E{^{A/}{\bf VectBundle}} の対象のとき、底空間 |E| は余相対多様体だとみなします。つまり、次のように考えます。


\quad E\in |{^{A/}{\bf VectBundle}}| \Imp |E| \in |{^{A/}{\bf Man}}| \\
\quad f:E \to F \In {^{A/}{\bf VectBundle}} \Imp |f|:|E| \to |F| \In {^{A/}{\bf Man}}

{^{A/}{\bf Man}}{^{A/}{\bf VectBundle}} では、余底 A を“世界の中心”に据えているので、自由公平な見方をしている {\bf Man}{\bf VectBundle} とは構造が違ってきます。

余底の取り替え関手

{^{A/}{\bf Man}}, \, {^{A/}{\bf VectBundle}} は余底 A \in {\bf Man} をインデックス〈パラメータ〉として持つ圏なので、別な余底 B \in |{\bf Man}| を選べば別な圏が得られます。異なる余底を持つ余相対多様体の圏/余相対多様体上のベクトルバンドルの圏は、関手で結ばれます。ここで出てくる関手は、(比喩的に言って)「実質的には何もしないが、帳簿の操作だけしている」ような感じのものです。

\tau: B \to A \In {\bf Man} があるとき、\tau から誘導される関手を次のように書きます。

  • {^{\tau/}{\bf Man}} :  {^{A/}{\bf Man} } \to  {^{B/}{\bf Man}} \In {\bf CAT}
  • {^{\tau/}{\bf VectBundle}} :  {^{A/}{\bf VectBundle}} \to  {^{B/}{\bf VectBundle}} \In {\bf CAT}

{^{\tau/}{\bf Man}} は次のように定義します。


\For (M, \sigma) \in |{^{A/}{\bf Man} } |\\
\Define {^{\tau/}{\bf Man}}( (M, \sigma)) := (M, \sigma\circ \tau) \;\in |{^{B/}{\bf Man} } | \\
\:\\
\For \varphi :(M, \sigma) \to (N, \rho) \In {^{A/}{\bf Man} } \\
\Define {^{\tau/}{\bf Man}}( \varphi ) := (\varphi:(M, \sigma\circ \tau)  \to (N, \sigma\circ \tau )\;\In {^{B/}{\bf Man} })

{^{\tau/}{\bf Man}} は、射に対しては何もしません。それでも、 {^{B/}{\bf Man} } の射が得られることは次の可換図式からわかります。


\begin{CD}
B       @=     B \\
@V{\tau}VV     @VV{\tau}V \\
A       @=     A \\
@V{\sigma}VV   @VV{\rho}V \\
M @>{\varphi}>> N
\end{CD}\\
\text{commutative in }{\bf Man}

A \mapsto {^{M/}{\bf Man}},\; \tau \mapsto {^{\tau/}{\bf Man}} という対応は、次のようなインデックス付き圏〈indexed category〉(実体は関手)になります。


\quad {^{\hyp/}{\bf Man}} : {\bf Man}^{op} \to {\bf CAT} \In \mathbb{CAT}

関手 {^{\tau/}{\bf VectBundle}} は、ファイバーバンドルに対してもファイバーバンドル写像に対しても何もしません。(ベクトルバンドルの)底空間である余相対多様体の余底が取り替えられるだけです。次の関手の図式が可換になります。


\begin{CD}
{^{A/}{\bf VectBundle} }  @>{  {^{\tau/}{\bf VectBundle} } }>> { ^{B/}{\bf VectBundle} } \\
@V{^{A/}Base }VV                                                @VV{^{B/}Base}V \\
{^{A/}{\bf Man} }         @>{ {^{\tau/}{\bf Man} } }>>        {^{B/}{\bf Man} }
\end{CD}\\
\text{commutative in }{\bf CAT}

底空間/底写像を対応させる関手 Base = |\hyp| の左肩に {^{A/}} を付けているのは、実質的な意味がありませんが形式を揃えるためです。{^{\tau/}{\bf VectBundle} } は、(バンドルとしての)底空間の(余相対多様体としての)構造射を忘れれば、恒等関手と変わりません。

引き戻し関手

準備が出来たので、引き戻し関手〈pullback functor〉を定義します。ここでの引き戻し関手は(色々な“引き戻し関手”がありますが)次の形です。


\sop{Pb}^A : {^{A/}{\bf VectBundle}} \to {\bf VectBdl}[A] \In {\bf CAT}

\sop{Pb} はドイツ文字〈フラクトォール〉の "Pb" です。"P" の形が "B" に似てますが "P" です! 行きがかり上、インデックスである余底空間 A の構文がバラバラ(右肩、左肩、ブラケット内)ですが、余底空間を動かすとインデックス付き圏のあいだのインデックス付き関手(実体としては自然変換)になります。つまり、 \tau : B \to A \In {\bf Man} に対して次の可換図式が成立します。


\begin{CD}
{^{A/}{\bf VectBundle}} @>{\sop{Pb}^A}>> {\bf VectBdl}[A] \\
@V{^{\tau/}{\bf VectBundle}}VV           @VV{{\bf VectBdl}[\tau]}V\\
{^{B/}{\bf VectBundle}} @>{\sop{Pb}^B}>> {\bf VectBdl}[B] \\
\end{CD}\\
\text{commutative in }{\bf CAT}

左列の {^{\tau/}{\bf VectBundle}} は実質的には何もしない関手で、右列はベクトルバンドルの引き戻し {{\bf VectBdl}[\tau]} = \tau^\# です。

引き戻し関手 \sop{Pb}^A は、「引き込み関手」と言ったほうが相応しいかも知れません。様々は底空間上にあるベクトルバンドルをすべて A 上のベクトルバンドルの世界のなかに引き込んでしまいます。引き込む手段がないと引き込めませんが、余相対多様体には構造射が付いているので、それを使ってベクトルバンドルA 上に持ってきてしまうわけです。

以下、引き戻し関手の定義を述べます。

余相対多様体上のベクトルバンドル E/(M,\sigma) を単なる多様体上のベクトルバンドルとみなしたものを E/M と書くことにします。E/(M, \sigma)E/Mベクトルバンドルとしては同じものです。底空間に余相対構造が有るか無いかの違いだけです。

関手 \sop{Pb}^A: {^{A/}{\bf VectBundle}} \to {\bf VectBdl}[A] の対象パートは次のように定義します。


\For E/(M, \sigma) \in |{^{A/}{\bf VectBundle}}| \\
\Define \sop{Pb}^A( E/(M, \sigma) ) := \sigma^\#(E/M) \;\in |{\bf VectBdl}[A]|\\
\Where\\
\quad \sigma^\# : {\bf VectBdl}[M] \to {\bf VectBdl}[A] \In {\bf CAT}

関手 \sop{Pb}^A: {^{A/}{\bf VectBundle}} \to {\bf VectBdl}[A] の射パートの定義の際に、f:E \to F \In {^{A/}{\bf VectBundle}}{\bf Man} 内に展開した次の図を参照すると便利でしょう。


\begin{CD}
\u{E}        @>{\u{f}}>>     \u{F} \\
@V{\pi_E}VV                  @VV{\pi_F}V \\
M      @>{|f| = \varphi}>>   N \\
@A{\sigma}AA                 @AA{\rho}A \\
A            @=              A
\end{CD}\\
\text{commutative in }{\bf Man}

関手 \sop{Pb}^A の射パートの定義には、通常の引き戻しオペレータ \sop{pb}_\varphi と、ベクトルバンドルの引き戻し関手が使われます。


\sop{pb}_\varphi : {\bf VectBundle}(E, F)/\varphi \to {\bf VectBdl}[M](E, \varphi^\# F) \In {\bf Set}\\
\sigma^\# : {\bf VectBdl}[M] \to {\bf VectBdl}[A] \In {\bf CAT}\\
\rho^\# : {\bf VectBdl}[N] \to {\bf VectBdl}[A] \In {\bf CAT}\\
\varphi^\# : {\bf VectBdl}[N] \to {\bf VectBdl}[M] \In {\bf CAT}

まず、f\in {\bf VectBundle}(E, F)/\varphi に引き戻しオペレータ \sop{pb}_\varphi を適用して:


\quad \sop{pb}_\varphi(f) \in {\bf VectBdl}[M](E, \varphi^\#F)\\
\quad \text{i.e.}\\
\quad \sop{pb}_\varphi(f) : E \to \varphi^\#F \In {\bf VectBdl}[M]

これを関手 \sigma^\# で引き戻すと:


\quad \sigma^\#(\sop{pb}_\varphi(f)) : \sigma^\#E \to \sigma^\#(\varphi^\#F) \In {\bf VectBdl}[A]

\sigma^\# \circ \varphi^\# = (\varphi \circ \sigma)^\# = \rho^\# なので書き換えると:


\quad \sigma^\#(\sop{pb}_\varphi(f)) : \sigma^\#E \to \rho^\# F \In {\bf VectBdl}[A]

これを \sop{Pb}^A の定義にします。


\For f:E/(M, \sigma) \to F/(N, \rho) \In {^{A/}{\bf VectBundle}} \\
\Let \varphi := |f| : M \to N \In {\bf Man}\\
\Define \sop{Pb}^A(f) := \\
\quad \sigma^\#(\sop{pb}_\varphi(f)) : \sop{Pb}^A(E/(M, \sigma)) \to \sop{Pb}^A(F/(N, \rho)) \In {\bf VectBdl}[A] \\
\Where\\
\quad \sop{Pb}^A(E/(M, \sigma)) = \sigma^\#E \\
\quad \sop{Pb}^A(F/(N, \rho)) = \rho^\#F

\sop{Pb}^A の関手性と \sop{Pb}^{(\hyp)} の自然性については割愛します。

引き戻し公式の使用例(確認)

多様体の圏のなかで次の可換図式を考えます。


\begin{CD}
M @>{\varphi}>> N @>{\psi}>>    L \\
@A{\id_M}AA       @A{\varphi}AA @A{\psi\circ \varphi}AA \\
M @=            M @=            M
\end{CD}\\
\text{commutative in }{\bf Man}

これを次のように解釈し直します。

  • \varphi : (M, \id_M) \to (N, \varphi) \In {^{M/}{\bf Man}}
  • \psi : (N, \varphi) \to (L, \psi\circ \varphi) \In {^{M/}{\bf Man}}

3つの余相対多様体上の3つのベクトルバンドル E/(M, \id_M), F/(N, \varphi), G/(L, \psi\circ \varphi) を考えます。ベクトルバンドル自体は余相対多様体構造(余底空間と構造射)に無関係なので、E/M, F/N, G/L と思うこともできます。

さらに、次のようなベクトルバンドルf, g \In {^{M/}{\bf VectBundle}} を考えます。


\begin{CD}
\u{E}   @>{\u{f}}>>    \u{F}  @>{\u{g}}>>   \u{G} \\
@V{\pi_E}VV             @V{\pi_F}VV             @V{\pi_G}VV \\
M @>{\varphi}>> N @>{\psi}>>              L \\
@A{\id_M}AA       @A{\varphi}AA            @A{\psi\circ \varphi}AA \\
M @=            M @=                                M
\end{CD}\\
\text{commutative in }{\bf Man}

この状況で引き戻し関手の関手性(結合の保存)を書くと次のようになります。


\sop{Pb}^M(g \circ f) = \sop{Pb}^M(g) \circ \sop{Pb}^M(f) \In {\bf VectBdl}[M]\\
\Where \\
\quad \sop{Pb}^M(f) : {\id_M}^\# E \to \varphi^\# F \In {\bf VectBdl}[M] \\
\quad \sop{Pb}^M(g) : \varphi^\#F \to (\psi\circ \varphi)^\# G \In {\bf VectBdl}[M] \\
\quad \sop{Pb}^M(g \circ f) : {\id_M}^\# E \to (\psi\circ \varphi)^\# G \In {\bf VectBdl}[M] \\

これを定義に従って展開すれば:


\quad \sop{Pb}^M(f) = {\id_M}^\#(\sop{pb}_\varphi(f)) \\
\quad \sop{Pb}^M(g) = \varphi^\#(\sop{pb}_\psi(g)) \\
\quad \sop{Pb}^M(g \circ f) = {\id_M}^\#(\sop{pb}_{\psi\circ \varphi}(g\circ f))

これより次が得られます。


\quad \sop{pb}_{\psi\circ \varphi}(g \circ f) =
\varphi^\#(\sop{pb}_{\psi}(g)) \circ \sop{pb}_\varphi(f) \text{ on } {\bf VectBundle}(E, G)/(\psi\circ \varphi)

そもそも \sop{Pb} の定義に \sop{pb} を使っているので、この結果は当たり前(循環論法)なんですが、従来の引き戻しオペレータ \sop{pb} と新しく定義した関手 \sop{Pb} の関係を示す等式と捉えることはできます。

おわりに

引き戻しオペレータ
\quad \sop{pb}_\varphi:{\bf VectBundle}(E, F)/\varphi \to {\bf VectBdl}[M](E, \varphi^\# F)\In {\bf Set}
が、いまいち気持ち悪い、という心情的理由から引き戻し関手 \sop{Pb}^{(\hyp)} を定義したのですが、何か新しいものが出てくるわけではありません。言い方/記述方法が変わるだけです。

しかし、記述方法の対称性が高くなると、そのぶん見通しが良くなる効果が期待できます。記述の非対称性から見えにくかった事態が見えるようになるかも知れません。

*1:境界や角〈corner〉の有る無しは気にしていません。