"extranatural transformation" は「エキストラ自然変換」と言うことにします。カタカナと漢字を混ぜる用法は「モノイド圏」とか「プロ関手」とか(僕は)普通に使っているのでこれでいいとします。
nLabのエキストラ自然変換の項目 https://ncatlab.org/nlab/show/extranatural+transformation を見ていたら、さかんにストリング図に言及しておきながら図が描いてなかったので、僕はちょっとガッカリしました。ストリング図を描くのはけっこうな労力なのはよく分かるのですが、それだけ色々言っているなら絵も描けよー。(ちなみに、下のほうに描いてあるのはケリー/マックレーン・グラフ〈Kelly-Mac Lane graph〉で、関係はありますがストリング図とは別物です。)
実際にストリング図について語っている文言は:
One intuitive approach to them is through string diagrams: every time you bend a string (that represents a component of a natural transformation) into a U-shape or upside-down U-shape, the U-shape represents a component of an extranatural transformation.
これら[自然変換やエキストラ自然変換]への直感的なアプローチのひとつはストリング図を使うことです: ストリング(自然変換の成分を表す)をU字形や逆U字形に曲げたとき、そのU字形はエキストラ自然変換の成分を表します。
この後も言葉で図の描き方を説明してますが、さっぱり要領を得ない。
エキストラ自然変換の事例として、内部ホムセットに関する次の可換図式が登場します。文字の選び方や順番がなんか奇妙ですが、それはそのままとします。ただし、指数形式 はブラケット形式 に変更しました。
この可換図式は (2) と番号付けられて、次の説明があります。
There is a nice string diagram picture for (2) which the reader might like to draw at this point.
この時点で読者が描きたいと思うであろう 可換図式 (2) に対する良いストリング図の絵があります。
だーから、「良いストリング図の絵」を出せってば。
絵は出てないので、僕が手描きした絵を載せます。上の可換図式をストリング図として描いたものです。描画方法は絵のすぐ後に説明します。
- 描画方向は上から下だが、ワイヤー〈ストリング〉の逆行を許す。
- 対象はワイヤーで表す。対象 x は点線で描いている。
- 内部ホム [y', x] 、[y, x] は青い帯で示す。
- モノイド積は左右併置で示す。
- 丸いノードは、射 g:y → y' を示す。
- 左側の黒ワイヤーは逆行している(下から上に向かう)ので、左の g:y → y' は下から上。
- 黒いドットは eval を示す。
簡略化すると次のようになります。
- 対象 x を表すワイヤーは省略(描いてない)。
- 内部ホムのワイヤーは黒と青の二重線。
- 内部ホムの第一引数にだけ働く射 g:y → y' は半分の丸で示す。
- 右の丸いノードは、射 g:y → y' (上から下)を示す。
- 黒いドットは eval を示す。
ストリング図の等式は、ノード g がワイヤーの曲がりの部分を超えて移動〈スライド〉させていいことを主張しています。ただし、左右のワイヤーが均一ではないので、曲がり部分に左右のワイヤーの接合点があります。左側では g のノードが逆行の半丸に変化します。