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参照用 記事

ストリング図の基本概念と描き方: 補遺

ストリング図の基本概念と描き方」に次のように書きました。

「描画方向と逆向きに走るワイヤーを見たぞ」とか「曲がったワイヤーが描けないだろ」とか思うでしょうが、違うんですよ。「逆向きに走るワイヤー」じゃなくて、負の極性〈polarity〉を割り当てられたワイヤーをあたかも逆向きに走るワイヤーのように描く習慣があるだけです(便利ですけどね)。曲がったワイヤーの正体は次のようなものです。

この部分に補足します。

{\bf FdVect} = {\bf FdVect}_{\bf R} を有限次元実ベクトル空間の圏とします。

V \in |{\bf FdVect}| として、V^* をその双対空間とします。標準的な双線形写像

\quad \varepsilon:V^* \times V \to {\bf R}

とします。この双線形写像は、テンソル積を使えば線形写像だと思えます。

\quad \varepsilon:V^* \otimes V \to {\bf R} \text{ in }{\bf FdVect}

最初に選んだベクトル空間の極性は正〈プラス〉、双対空間の極性は負〈マイナス〉と決めます。極性とは、何か(何でもいい)に与える正負の符号だと思ってください。極性を使って次のように書きます。

\quad V+ := V\\
\quad V- := V^*

線形写像 \varepsilon をストリング図に描きましょう。線形写像の方向を上から下、テンソル積の方向を左から右とします。

正の極性のワイヤーには描画方向と同じ向きの矢印を描き、負の極性のワイヤーには描画方向と逆向きのの矢印を描きます。矢印で極性が示せたのでラベルからはプラス・マイナスを取り除きます。

スカラ-体を表す点線と、線形写像 \varepsilon を表すノードを図から取り除きます。

これが通常よく見る、曲がったワイヤー/逆向きのワイヤーです。