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参照用 記事

タイト方向亜群なモノイド二重圏とその上のファイバー付き構造

バエズ/ドーラン曲面の意義と使い方」より:

先日の「たわ言かも知れない」話を確認するには、バエズ/ドーラン茂みについて考える必要があります。

バエズ/ドーラン曲面(「バエズ/ドーラン茂み」から改名)を発見的手法〈ヒューリスティック〉の道具として使って、「バエズ/ドーラン茂みとリントン/ローヴェア・モナド」で述べた“たわ言”がどの程度信憑性があるのかを調べています。

バエズ/ドーラン曲面(ストリング図が描かれた穴開き曲面)達が形成する代数系がどんなものか? おおよその見当はついたので、メモしておきます。

ローヴェアの“代数セオリーの理論”〈theory of algebraic theories〉の枠組み(「ローヴェア・セオリーとその周辺 」参照)に沿って言えば、バエズ/ドーラン曲面達が形成する代数系は、スケマティック(「スケマティック」参照)なセッティングにおける代数セオリーになります。ここでの「セオリー」はある種の代数系の意味です(「「セオリー」は使わざるをえないな」参照) -- この代数系を、スケマティック代数セオリー〈schematic algebraic theory〉と呼ぶことにします。バエズ/ドーラン曲面達が形成する代数系がスケマティック代数セオリーであり、それに関する理論は“スケマティック代数セオリーの理論”です。

スケマティック代数セオリーがどんな代数系かと言うと:

  1. バエズ/ドーラン曲面をプロ射とするモノイド二重圏がある。
  2. 二重圏の対象は、境界プロファイル(あるいはプロファイル付き境界)である。
  3. モノイド積は、併置で与えられる。
  4. モノイド積は多くの場合デカルト積である。
  5. プロ方向の結合は、バエズ/ドーラン曲面の貼り合わせである。
  6. タイト方向の1-射〈タイト射〉と、タイト方向に見た二重射は、バエズ/ドーラン曲面の準同型射である。
  7. タイト方向の1-射〈タイト射〉と、タイト方向に見た二重射は可逆なものに限定する。したがって、タイト射/二重射は(タイト方向に)同型射である。

二重圏の方向については、「添加仮想二重圏 // プロ方向とタイト方向」で導入した“プロ方向”と“タイト方向”を使います。二重圏の方向のゴタゴタについて興味があれば、以下の過去記事に書いています。

スケマティック代数セオリーのタイト方向は可逆なので、タイト方向には亜群となります。よって、上記の構造はタイト方向亜群なモノイド二重圏〈groupoid-in-tight-direction monoidal double category〉と言えます。タイト方向亜群は、ストリング図(穴を許すのでテンプレートかも知れない)の同値関係を定義します。この同値関係は「2つのストリング図を見ても区別が付かない」の意味です。

それだけではなくて、タイト方向亜群なモノイド二重圏の上にファイバー付き構造〈fibered structure〉が載ってます。そのファイバー付き構造が、ファイバー付き圏とかファイバー付き二重圏とか呼べるものかどうかはよく分かりません。プロ射であるバエズ/ドーラン曲面を決めると、その上にファイバーとして圏が“生えている”のは確かです。が、これらのファイバー達が、ベース二重圏の各種射達に対してどう振る舞うかがハッキリしません。

いずれにしても、ファイバーのなかに居るのはストリング図ムービー〈ストリング図動画〉(「ストリング図、ストリング図動画が“使える”とは?」参照)です。ストリング図ムービーに関しては、時間方向への結合〈連接〉、モノイド積〈併置〉、貼り合わせ、タイト方向同型射による作用などの演算を考えることが出来ます。

スケマティック代数セオリーにおいて、プロ射であるバエズ/ドーラン曲面はもちろん重要ですが、ファイバーのなかに居るストリング図ムービーも負けず劣らす重要です。ストリング図ムービーのほうを主役にして考えると、二重圏上のファイバー付き構造とは別な構造として定式化できるかも知れません(現状、よく分からない)。

ストリング図ムービーは、等式的推論〈equational reasoning〉のスケマティックな表現です。したがって、ストリング図ムービーの計算は、論理・証明論と密接に関係します。可逆(とみなせる)ストリング図ムービーが、ストリング図のあいだの同値関係を定義して、その同値関係の同値類が意味的〈セマンティックな〉実体に対応するはずです。ストリング図ムービーは、意味的実体の等式を表現する道具です。

ストリング図ムービーによる同値関係は、「2つのストリング図の見た目は違うかも知れないが、意味的には同じ」であることを意図します。「意味的に同じ」ことを意味論〈セマンティクス〉を使わずに構文論的に定義する必要があります。つまり、ストリング図の変形・描き換え手順の構文アルゴリズム的記述で同値関係を定義するわけです。

バエズ/ドーラン曲面の意義と使い方」で述べたように、セオリーの表現〈representation〉(通常はモデルと呼ぶ)を構成するには、バエズ/ドーラン曲面の幾何的情報が邪魔になります。幾何的情報を落とすために組み合わせ化〈combinatorization〉をします。組み合わせ化した後の代数系は、バエズ/ドーラン曲面を使って定式化したスケマティック代数セオリーよりは単純な構造のはずです。

分かっていることより分からないことが多いのですが、現状はまーこんなもんです。



追記

そのファイバー付き構造が、ファイバー付き圏とかファイバー付き二重圏とか呼べるものかどうかはよく分かりません。

三重圏〈3-fold category〉の可能性が高そうです。三重圏の第三の方向をトランス方向〈trans direction〉とします。「トランス方向」は「丹原プロ関手の二重圏、いやっ三重圏?」や「双遷移系達の3次元の圏」でも使っています。

  • トランス方向の1-射は、穴の境界におけるムービー((0, 1)-ムービー)
  • トランス方向の2-射は、ストリング図ムービー((1, 2)-ムービー)

穴の境界におけるムービーとは、1次元キャンバスに描かれた色付き0次元図形(色付き点の集まり)のムービー、ストリング図ムービーは2次元キャンバスに描かれた色・ラベル付き1次元図形(それがストリング図)のムービーです。模様・絵柄の図形的次元とキャンバスの次元をペアにして (0, 1) または (1, 2) と記します。動きがない静止画〈スチル〉でも (0, 1)-図、(1, 2)-図と呼べます。

タイト方向を忘れて、プロ方向とトランス方向だけ考えても二重圏になります(このとき「忘れる」方法が必要ですけど)。タイト方向はたいして重要ではないので、プロ-トランス二重圏に注目して調べるのが良さそう。