僕はしばしば「組み合わせ幾何的対象物〈combinatorial geometric object〉」という言葉を使いますが、それはいったいかなるモノなのでしょうか? “組み合わせ的に解釈できる幾何的対象物”、あるいは“幾何的に解釈できる組み合わせ的対象物”なんですが、それじゃなんだか分からない。
過去記事「圏論で使う「図式」と「形状」」において、組み合わせ幾何的対象物について説明しています。
「組み合わせ幾何的対象物〈combinatorial geometric object〉」という言葉を使ったのですが、これはどんなモノを意味するのかを説明します。
この記事では、組み合わせ幾何的対象物への別方向からのアプローチとして、形状付き集合の位相実現〈幾何実現〉について紹介します。上記過去記事やその他の関連記事を読み返す必要があまりないように、この記事の前半では、過去記事達に書いた内容を復習します。$`
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`$
内容:
関連する過去記事
次節以降で復習をするので、過去記事を読み返す必要性は(明示的指示は例外として)無いとは思いますが、以下に関連する過去記事を古い順に列挙します。
形状付き集合
形状付き集合〈shaped set〉とは前層〈presheaf〉のことです。ある文脈においては、前層のことを形状付き集合とも呼びます。その文脈では、「形状付き集合」と「前層」は同義語となります。
前層〈presheaf〉は、集合圏〈集合達の圏〉を値の圏〈余域〉とする反変関手のことです。よって、以下の箇条書きの項目達はすべて同じことです。
- $`X`$ は、形状付き集合。
- $`X`$ は、前層。
- $`X`$ は、集合圏を値の圏〈余域〉とする反変関手。
- $`X: \cat{S}^\op \to \mbf{Set} \In \mbf{CAT} \text{ for some }\cat{S}\in |\mbf{Cat}|`$
- $`X\in |[\cat{S}^\op, \mbf{Set}]| \text{ for some }\cat{S}\in |\mbf{Cat}|`$
上記箇条項目4番、5番に $`\text{ for some }\cat{S}\in |\mbf{Cat}|`$ とありますが、前層の域は小さい圏だと仮定するのが普通です。$`\mbf{Cat}`$ は小さい圏達の2-圏、$`\mbf{CAT}`$ は大きい圏達の2-圏でした。
形状付き集合の形状〈shape〉とは、関手(この場合は反変関手)の域のことです。今の文脈では、「形状」と「域」は同義語です。形状〈関手の域〉は圏であるので、形状圏〈shape category〉と呼んでもかまいません。が、当然に「形状達の圏〈category of shapes〉」ではありません*1。“形状=形状圏”は、形状を“記述・定義する手段”なので、過去記事では形状スキーマ〈shape schema〉とも呼んでいます。「スキーマ」はデータベース用語の借用です。
特定の文脈では、一般論の用語に別名〈同義語〉を割り当て、その文脈における典型事例やメンタルモデルを連想しやすくします。「形状付き集合=関手」「形状=域」はそのような目的の同義語です -- 組み合わせ幾何の文脈での理解と連想を促します。
形状付き集合 $`X:\cat{S} \to \mbf{Set}`$ の形状圏 $`\cat{S}`$ の対象と射は次のように呼びます。
- $`\cat{S}`$ の対象をセルソート〈cell sort〉と呼ぶ。
- $`\cat{S}`$ の射を余面ソート〈coface sort〉と呼ぶ。
「余面ソート」の「余」を付けるかどうかは悩むところです。これは反対圏と反変関手のややこしさに起因する悩みです(「反対圏と反変関手はややこしい」参照)。反変性により、関手の行き先では「余」が取れると考えて、「余面ソート」とします。「余」は反変性のマーカーに過ぎません。一度仕掛けが分かってしまえば、「余」なんてどうでもいいのですがね。
「セルソート」、「余面ソート」(「面ソート」でもかまわない)と名付けるココロは、$`\cat{S}`$ の対象はセルの種類を表し、$`\cat{S}`$ の射は面(と呼ばれる写像)の種類を表すからです。$`\cat{S}`$ は、セルと面の種類(を識別する名前)達の圏です。
「指標の話: 形状の記述と形状付き集合」では、形状圏の対象=セルソート、形状圏の射=面射〈face morphism〉と呼んでいます。「圏論で使う「図式」と「形状」」では、形状圏の対象=形状ソート〈shape sort〉、形状圏の射=余面アロー〈coface arrow〉です。あんまり安定してませんな(苦笑)。が、ネーミングのココロは同じです。
$`\alpha\in |\cat{S}|`$ のとき、集合 $`X(\alpha)`$ を、セルソート $`\alpha`$ のセルセット〈cellset〉と呼びます。セルセット $`X(\alpha)`$ の要素は、セルソート $`\alpha`$ のセル〈cell〉です。セルソート $`\alpha`$ のセルセット/セルを、$`\alpha`$-セルセット〈$`\alpha`$-cellset〉/$`\alpha`$-セル〈$`\alpha`$-cell〉とも言います。
$`f:\alpha \to \beta \In \cat{S}`$ のとき、写像 $`X(f): X(\beta)\to X(\alpha)`$ を、余面ソート $`f`$ の面写像〈face map〉と呼びます。$`X`$ が反変関手なので、余面ソートと面写像の向きは逆転します。「余面ソート」と「余」を付けたのは、反変による逆転を示唆するためです。
ここで定義した用語、形状付き集合と形状圏、「セルソート」と「セルセット/セル」、「余面ソート」と「面写像」は、ゴッチャにされたり曖昧にされたり混同されたりします。呼び名はともかくとして、違うものは違うと、しっかり区別しましょう。
具体的形状圏
「形状圏」は、形状付き集合(実体は前層)を構造とみての構成素役割り名〈constituent role name〉です。何か具体的個別特定の圏を指すわけではないし、圏の種類でもありません。
具体的な形状付き集合の事例では、形状圏としてどのような圏が使われるのでしょうか? よく使われる形状圏の具体例は:
- 単体圏〈simplex category〉
- 球体圏〈globe category〉
- 方体圏〈cube category〉
nLab の見出しでは、方体圏だけ category of cubes になってますが、言い回しを揃えて cube category のほうがいいでしょう。
「単体圏」、「球体圏」、「方体圏」は、具体的個別特定の圏に付けられた固有名です。ここでは、これらの圏達の固有名(の記号)を太字小文字一文字として、それぞれ $`\mbf{s}, \mbf{g}, \mbf{c}`$ とします。反対圏は大文字とします。
- $`\mbf{S} := \mbf{s}^\op`$
- $`\mbf{G} := \mbf{g}^\op`$
- $`\mbf{C} := \mbf{c}^\op`$
$`\mbf{C}`$ が複素数達の集合(とか体とか)とコンフリクト〈かち合い | バッティング〉しますが、まーいいとします。
関手圏 $`[\cat{C}, \cat{D}]`$ を $`\cat{D}^\cat{C}`$ とも書くとして、次のように呼びます。
- 単体圏 $`\mbf{s}`$ を形状圏とする形状付き集合達の圏 $`\mbf{Set}^\mbf{S} = \mbf{Set}^{\mbf{s}^\op}`$ を、単体集合達の圏〈category of simplicial sets〉と呼ぶ。
- 球体圏 $`\mbf{g}`$ を形状圏とする形状付き集合達の圏 $`\mbf{Set}^\mbf{G} = \mbf{Set}^{\mbf{g}^\op}`$ を、球体集合達の圏〈category of globular sets〉と呼ぶ。
- 方体圏 $`\mbf{c}`$ を形状圏とする形状付き集合達の圏 $`\mbf{Set}^\mbf{C} = \mbf{Set}^{\mbf{c}^\op}`$ を、方体集合達の圏〈category of cubical sets〉と呼ぶ。
「{単 | 球 | 方}体圏」と「{単 | 球 | 方}体集合達の圏」はまったくの別物です。別物ですが、すべて固有名で名指しされる個別特定の圏です。
ややこしいのは、{単 | 球 | 方}体圏と別に{単 | 球 | 方}体的圏があることです。例えば、単体圏〈simplex category〉とは別に単体的圏〈simplicial category〉があります。nLab項目 simplicial category にもあるように、単体的圏の意味は人により異なり、安定していません。
- simplex category $`\mbf{s}`$ を 単体的圏〈simplicial category〉と呼ぶことがある。この場合は固有名。
- $`\mbf{Set}^\mbf{S}`$-enriched category を単体的圏〈simplicial category〉と呼ぶことがある。この場合は構造の種類の名前。
- simplicial object in $`\mbf{Cat}`$ を単体的圏〈simplicial category〉と呼ぶことがある。この場合は構造の種類の名前。
- internal category in $`\mbf{Set}^\mbf{S}`$ を単体的圏〈simplicial category〉と呼ぶことがある。この場合は構造の種類の名前。
「単体的圏〈simplicial category〉」を見たら、毎度確認するしかないですね。
なお、誤解を避けるために、単体圏〈simplex category〉を単体的インデキシング圏〈simplicial indexing category〉(固有名)と呼ぶことがあるようです。
それと、$`\mbf{S} = \mbf{s}^\op`$ のほうを単体圏と呼ぶことがたまにあります。そのときは、$`\mbf{s}`$ は余単体圏〈cosimplex category〉(別な流儀の固有名)です。どっちに「余〈コ〉」を付けるかは恣意的選択なので安定していません。
リーディ圏
リーディ圏〈Reedy category〉については、「圏論で使う「図式」と「形状」// リーディ圏」で説明しています。これは、過去記事を見てください(← 明示的参照の指示)。
「リーディ圏」は圏の種類の名前です。個別特定の圏を指す名前〈固有名〉でもないし、構造の構成素役割り名(例: 「形状圏」)でもありません。リーディ圏という種類の圏はたくさんあるので、それらを寄せ集めて、さらにリーディ圏達全体を圏に仕立てることができます。リーディ圏達の圏〈category of Reedy categories〉は $`\mbf{ReedyCat}`$ とします。
ほとんどの応用で、リーディ圏 $`\cat{I}`$ の次元関数〈次数関数〉 $`\mrm{dim}_\cat{I}`$ の値は自然数で十分です。次元関数が $`\mbf{N}`$ を余域とするようなリーディ圏だけを考えるなら、リーディ圏の次元 $`\mrm{Dim}`$ は次のようです。
$`\quad \mrm{Dim} : |\mbf{ReedyCat}| \to \mbf{N}\cup \{\infty\} \In \mbf{SET}`$
このような設定でたいていは大丈夫です*2。
なお、“リーディ圏が備えている次元関数”と、“リーディ圏の次元”の違いは過去記事「圏論で使う「図式」と「形状」// リーディ圏」を参照してください。
個別特定の圏である $`\mbf{s}, \mbf{g}, \mbf{c}`$ は、いずれもリーディ圏(という種類の圏)です。形状付き集合(という構造物)の形状圏(という役割りを担う圏)には、リーディ圏(という種類の圏)を選ぶのが普通です。むしろ、リーディ圏は、形状付き集合(と呼ばれる関手)の形状圏(域)として適切な圏(の種類)として定義されています。リーディ圏が何に対して適切か? というと、組み合わせ幾何に対して適切なのです。
位相的形状付き集合
形状付き集合(実体は関手)には、位相的・幾何的意味での“形状”なんてありません。「関手の域」の別名として「形状」という呼び名を使っているだけです。
しかし我々は、形状付き集合に対して、位相的・幾何的意味での“形状”を想定しています。なんで想定できるのか? そのメカニズムを明らかにしましょう。
実は、形状付き集合 $`X`$ があると、$`X`$ に対応する位相空間 $`\mrm{Realiz}(X)`$ が構成できます('Realiz' は realization から)*3。ただし、単なる形状付き集合ではうまくいきません。位相空間 $`\mrm{Realiz}(X)`$ を作るための仕掛けが $`X`$ の周辺に組み込まれている必要があります。
位相空間を作るための仕掛けが組み込まれた形状付き集合を位相的形状付き集合〈topological shaped set〉と呼びます*4。我々が位相的・幾何的意味での“形状”を想定できるのは、暗黙に〈そうとは言わずコッソリと〉位相的形状付き集合を使っているからです。
位相的形状付き集合とは、その形状圏(関手の域) $`\cat{S}`$ が、条件と構造を追加したリーディ圏であるような形状付き集合です。形状であるリーディ圏に対する追加構造とは、次のような関手(共変関手!)です。
$`\quad \mrm{G} : \cat{S} \to \mbf{Top} \In \mbf{CAT}`$
ここで、$`\mbf{Top}`$ は位相空間達と連続写像達の圏です。
関手 $`\mrm{G}`$ には次の条件を付けます。
- $`\alpha\in |\cat{S}|`$ に対して、$`\mrm{G}(\alpha)`$ はユークリッド空間の部分集合としての位相空間である。つまり $`\mrm{G}(\alpha) \subseteq \mbf{R}^n`$ 。
- 上記のユークリッド空間の次元 $`n`$ は、$`n = \mrm{dim}(\alpha)`$ である。
- ユークリッド空間の部分空間として、$`\mrm{G}(\alpha)`$ は内点を持ち、内部(内点達の集合)の閉包は $`\mrm{G}(\alpha)`$ を含む。
- ユークリッド空間の部分空間として、$`\mrm{G}(\alpha)`$ の閉包はコンパクトである。
- $`\mrm{G}(\alpha)`$ は可縮空間である。
これだけ条件を付けると、$`\mrm{G}(\alpha)`$ はかなり扱いやすい空間になります。例えば、$`\mrm{dim}(\alpha) = 0`$ なら $`\mrm{G}(\alpha)`$ は一点空間です。$`\mrm{dim}(\alpha) = 1`$ なら $`\mrm{G}(\alpha)`$ は有界な一点ではない区間です。
$`\mrm{G}(\alpha)`$ を、セルソート $`\alpha`$ の標準位相空間〈standard topological space〉と呼びます。単体集合の場合、セルソートは次元だけで決まるので、次元 $`n`$ に対して標準位相空間が決まります。それは$`n`$次元標準幾何単体です。
形状であるリーディ圏 $`\cat{S}`$ 自体にも条件が付きます*5。
- 順行リーディ圏である。
- $`\mrm{dim}(\mrm{cod}(f)) = \mrm{dim}(\mrm{dom}(f)) + 1`$ であるような射で生成される。
したがって、次元を1だけ上げる余面ソート $`f:\alpha \to \beta`$ に対する余面連続写像 $`\mrm{G}(f)`$ だけを考えればよいことになります。そのような連続写像 $`\mrm{G}(f)`$ に次の条件を課します。
- $`\mrm{G}(f) : \mrm{G}(\alpha) \to \mrm{G}(\beta) \In \mbf{Top}`$ は、位相埋め込み(単射で、像と域の位相同型を与える連続写像)である。
- $`\mrm{G}(f)`$ の像は、$`\mrm{G}(\beta)`$ の内部と交わらない。
連続写像 $`\mrm{G}(f)`$ は、$`\mrm{G}(\alpha)`$ の点達を、$`\mrm{G}(\beta)`$ の境界内に埋め込む写像です。
リーディ圏 $`\cat{S}`$ と関手 $`\mrm{G}`$ を一緒にした構造を位相的リーディ圏〈topological Reedy category〉と呼ぶことにします*6。すると、位相的形状付き集合とは、その形状が位相的リーディ圏である形状付き集合です。
ところで、「位相的◯◯◯」と呼ぶと、◯◯◯が位相構造を持っているように誤解されそうですね。「位相化可能〈topologizable〉」とか「プレ位相的〈pre-topological〉」とかの形容詞のほうが良いかも。
位相的形状付き集合の位相実現
$`(\cat{S}, \mrm{G})`$ を位相的リーディ圏として、$`X`$ は $`\cat{S}`$ 上の形状付き集合だとします。つまり:
$`\quad X : \cat{S}^\op \to \mbf{Set} \In \mbf{CAT}\\
\text{i.e. } X\in |[\cat{S}^\op , \mbf{Set}]|
`$
形状付き集合 $`X`$ に位相空間 $`\mrm{Realiz}(X)`$ を対応させる写像は次のプロファイルを持ちます。
$`\quad \mrm{Realiz} : |[\cat{S}^\op , \mbf{Set}]| \to |\mbf{Top}| \In \mbf{SET}`$
$`\mrm{Realiz}`$ を関手まで拡張するのは今日はしません。
$`\mrm{Realiz}`$ を定義する方法は幾つかありますが、前層 $`X`$ のグロタンディーク構成(要素の圏〈category of elements〉とも呼ぶ)を使うのが、直感的で素直な気がします。
グロタンディーク構成は、どんな前層に対しても作れます。$`X:\cat{S}^\op \to \mbf{Set}`$ のグロタンディーク構成は次のように書きます。
$`\quad \int_{\cat{S}} X \;\in |\mrm{Cat}|`$
$`\cat{S}`$ は小さい圏(と仮定)なので、グロタンディーク構成〈要素の圏〉も小さい圏になります。積分記号はエンドと誤解されるリスクがある*7ので、$`\mrm{El}_{\cat{S}}(X)`$ や $`\mrm{El}(X)`$ という書き方も使います。
次に、位相的リーディ圏に備わる $`G:\cat{S} \to \mbf{Top}`$ を使って、小さい圏 $`\mrm{El}_\cat{S}(X)`$ から $`\mbf{Top}`$ への関手を構成します。その関手は $`X\ltimes G`$ とします。
$`\quad X\ltimes G : \mrm{El}_\cat{S}(X) \to \mbf{Top}\In \mbf{CAT}`$
$`X\ltimes G`$ の定義は以下のようです。以下の $`!`$ は、2つの単元集合のあいだの唯一の写像を総称的に表すとします。
$`\text{For }(\alpha, x)\in |\mrm{El}_\cat{S}(X)|\\
\quad (X\ltimes G)( (\alpha, x) ) := \{x\}\times G(\alpha)\\
\text{For } (f, x \twoto X(f)(y)) : (\alpha, x) \to (\beta, y) \In \mrm{El}_\cat{S}(X)\\
\quad (X\ltimes G)( (f, x \twoto X(f)(y)) ) := \;! \times G(f)
`$
定義の意味がわかれば(わかりにくいかも知れない)、$`X\ltimes G`$ が関手になることは容易に確認できます。
「わかりにくいかも知れない」はさすがに不親切なので、補足しておきます。
$`\mrm{El}_{\cat{S}}(X)`$ の対象 $`(\alpha, x)`$ は、$`\alpha\in |\cat{S}|`$ と $`x\in X(\alpha)`$ のペア〈依存ペア〉です。
$`\{x\}\times G(\alpha)`$ は $`G(\alpha)`$ と同型な位相空間ですが、セル $`x`$ で目印〈タグ〉が付けられた空間と考えます。
$`\mrm{El}_{\cat{S}}(X)`$ の射 $`(f, x \twoto X(f)(y))`$ は、$`f: \alpha\to \beta \In \cat{S}`$ と等式 $`x = X(f)(y)`$ のペア〈依存ペア〉です。等式は向きを持っていると考えるので、$`\twoto`$ で書いています。
$`! \times G(f)`$ は $`G(f): G(\alpha) \to G(\beta)`$ と事実上同じですが、目印〈タグ〉付き空間のあいだの連続写像です。
[/補足]
位相的対象物、つまり位相空間を得るために、関手 $`X\ltimes G`$ の余極限をとります。
$`\quad \mrm{Realiz}(X) := \mrm{colim}\, (X\ltimes G) \;\in |\mbf{Top}|`$
小さな圏からの関手の余極限は、位相空間の圏でも作れます。“位相空間達の直和”と“同値関係による位相空間の商空間”を作れるからです。
こうして定義された $`\mrm{Realiz}(X)`$ を、形状付き集合 $`X`$ の位相実現〈topological realization〉と呼びます。位相実現の同義語は、「{位相 | 幾何}{的}?実現」です。正規表現(「用語のバリエーション記述のための正規表現」)は分かると思いますが、展開すれば次の4つの語句になります。
- 位相実現
- 位相的実現
- 幾何実現
- 幾何的実現
「幾何{的}?」より「位相{的}?」を優先しようと思ったのは、nLab項目 "geometric realization" の Remark 1.1. の指摘です。$`\mbf{Top}`$ を使っているのだから「位相{的}?」のほうが実情を表しているだろう、ということです。が、世間的には「幾何{的}?」が圧倒的多数です。検索のときはキーワード「幾何{的}?実現〈geometric realization〉」を使ってください。
さて、天下りかつ抽象的構成で定義されると、$`\mrm{Realiz}(X)`$ が、ほんとに直感的に想定している位相的・幾何的形状を表現しているのか? と疑問になります。その疑問を解消するには、抽象的構成をアンパックして具体的手順として書き下す必要があるでしょう。それは各自やってみてください(後で別記事にするかも知れない)。([追記]別記事にしました → 「組み合わせ幾何の基本: 幾何グラフの位相実現」参照。[/追記])
*1:形状圏達の圏は形状達のドクトリン〈doctrine of shapes〉と呼びます。
*2:超越的構成においては、次元として超限順序数まで考えて、超限帰納法を適用することがあります。
*3:「球体集合と組み合わせ幾何」では $`\mrm{Geom}`$ と書いています。
*4:[追記]「位相化可能形状付き集合〈topologizable shaped set〉」または「一般化幾何グラフ〈generalized geometric graph〉」に変更します。「組み合わせ幾何の基本: 幾何グラフの位相実現」参照。[/追記]
*5:[追記]この条件は強すぎるかも知れません。条件を緩和することもあるでしょう。[/追記]
*6:[追記]「位相化可能リーディ圏〈topologizable Reedy category〉」に変更します。「組み合わせ幾何の基本: 幾何グラフの位相実現」参照。[/追記]
*7:幾何実現にはコエンドを使うのが標準的な(多数派の)方法です。