「離散」と「微分」は相容れない概念です。「離散微分幾何」は意味不明もいいとこ。
実は、離散微分は差分のことです。ですから「差分幾何」でもよいのですが、「離散微分幾何」のほうが「なんじゃそれ?」感によるインパクトがあります。
離散微分幾何のひとつの目的は、普通の微分幾何の離散近似を与えることです。別な目的は、そもそもが離散的な構造に対して、微分幾何的手法を適用することです。例えば、有限離散的図形に対してド・ラーム複体を定義して、ホッジ分解を与えることは一つの離散微分幾何的タスクになります(この記事ではそこまでやりませんが)。
この話題は、2018年に書いた「ド・ラーム・コホモロジーとホッジ分解のオモチャ (1/2)」「ド・ラーム・コホモロジーとホッジ分解のオモチャ (2/2)」の蒸し返しではありますが、最近興味を持っている形状付き集合〈shaped set〉の概念を使ってうまく整理したいと思っています。
この記事は覚え書きなので、自己充足的〈self-contained〉な解説にはなっていません。あしからず。$`\newcommand{\cat}[1]{\mathcal{#1}}
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\newcommand{\bdry}{ \partial }
`$
内容:
※色付きテキストは次の約束で使います。
- 青い文字: 重要な概念・用語だがこの記事内では定義・説明してないもの。
- 赤い文字: この記事内で導入・定義した概念・用語。過去の定義の再掲・繰り返しのときもある。
- マゼンタの文字: この記事内の後方で定義されるか参照〈リンク〉される概念・用語。
球体と球面
各次元の球体と球面、それと開球体は離散微分幾何にとって最も重要な図形です。
n次元の(標準的な)球体〈globe | ball〉は次の不等式で定義される図形です。
$`\quad \mbf{D}^n = \{(x_1, \cdots, x_{n}) \in \mbf{R}^{n} \mid
x_1^2 + \cdots + x_{n}^2 \le 1
\}`$
$`\mbf{D}^n`$ の'D'は disk〈disc〉 の'D'でしょう。$`\mbf{G}^n`$ でも $`\mbf{B}^n`$ でもいいですけど、習慣としては $`\mbf{D}^n`$ が一番多そう*1。n次元の球体はn-球体〈n-globe | n-ball〉と短く言います。1-球体は閉区間で、0-球体は一点です。便宜上、(-1)-球体を空集合とすることがあります。
(n -1)次元の(標準的な)球面〈sphere〉は次の方程式で定義される図形です。
$`\quad \mbf{S}^{n - 1} = \{(x_1, \cdots, x_{n}) \in \mbf{R}^{n} \mid
x_1^2 + \cdots + x_{n}^2 = 1
\}`$
(n - 1)次元の球面は(n - 1)-球面〈(n - 1)-sphere〉と短く言います。1-球面は円周で、0-球面は二点です(一点ではない)。便宜上、(-1)-球面も空集合とすることがあります。便宜上の規約は、「なんかのときにチョット便利かも」程度の事情なので、深く考えてもしょうがないです。
(標準的な)n-球体の境界〈boundary〉は(標準的な)(n - 1)-球面だと約束します。図形の境界を表すために記号 $`\bdry`$ を使います。
$`\quad \bdry\, \mbf{D}^n = \mbf{S}^{n - 1}`$
「なんかのときにチョット便利かも」の事例として、上記の等式の n = 0 のときを書いてみると:
$`\quad \bdry\, \mbf{D}^0 = \mbf{S}^{-1}`$
これは、一点の境界は空集合であることを表しているので、一応辻褄はあっています。
図形 $`X`$ からその境界 $`\bdry X`$ を取り除いた残りの図形を $`X`$ の内部〈interior〉と呼び、 $`\overset{\circ}{X}`$ または $`X^\circ`$ と書きます。
$`\quad \overset{\circ}{X} := X \setminus \bdry X`$
n-球体の内部を{n-開球体 | 開n-球体}〈open n-{globe | ball} | n-open {globe | ball}〉と呼びます*2。
$`\quad \overset{\circ}{\mbf{D}^n} := \mbf{D}^n \setminus \mbf{S}^{n - 1}`$
1-開球体は開区間で、0-開球体は一点です。これも、一応辻褄があった書き方ができます。
$`\quad \overset{\circ}{\mbf{D}^1} := \mbf{D}^1 \setminus \mbf{S}^{0} = [-1, 1]\setminus \{-1, 1\}`$
$`\quad \overset{\circ}{\mbf{D}^0} := \mbf{D}^0 \setminus \mbf{S}^{-1} = \{0\} \setminus \emptyset`$
n-球体は境界を含みます。そのことを強調する意味で{n-閉球体 | 閉n-球体}〈closed n-{globe | ball} | n-closed {globe | ball}〉と呼ぶこともあります。が、単にn-球体と言えば、それは閉n-球体のことです。
離散微分幾何で扱う図形
離散微分幾何で扱う図形を幾何的に言えば、タチの良いコンパクト・ハウスドルフ空間です*3。位相幾何学〈トポロジー〉の言葉で言えば、CW複体と同相なコンパクト空間に組み合わせ構造を載せたものです。別に「CW複体」が何であるかを知ってる必要もないですが、CWが何のイニシャリズムかは「CW指標とCWテレスコープ(実例) // 「CW」について」に書いています。
我々が扱うn次元の図形 $`X`$ は、$`0 \le k \le n`$ である $`k`$ に対して、k-球体の集まり $`X_k`$ があって、それら色々な球体達(有限個しかないけど)を切り貼りして組み合わせて作った図形です。でき上がった図形〈位相空間〉は、タチの良いコンパクト・ハウスドルフ空間ですが、でき上がり図形だけでなくて、作り方の手順・履歴も図形の構造に含まれます。
このテの構造付き図形は一般に「複体」と呼ぶのですが、たいへんに困ったことに「複体」はとんでもない曖昧多義語です。次の記事を見てください。
この記事の主たる目的は、上記過去記事と同様に、しかし離散微分幾何を語る文脈で、「複体」の曖昧多義性を多少なりとも整理することです。
後で定義する言葉を先走って使って言うなら、離散微分幾何の主たる対象物は具象幾何複体〈concrete geometric complex〉です。具象幾何複体は、ユークリッド空間の部分空間として幾何実現を持つ組み合わせ幾何的対象物です。
具象幾何複体は、図形の容れ物であるユークリッド空間の次元が3以下なら、目視可能な図形です。以下の絵は、「幾何単体複体と抽象単体複体」でも参照した、Wikipedia項目「複体」にある $`\mbf{R}^3`$ 内に実現された具象幾何複体の絵です。
この具象幾何複体は単体複体〈simplicial complex〉(「幾何単体複体と抽象単体複体」参照)ですが、単体にこだわるわけではありません。単体(線分、三角形、四面体など)以外のセルがあってもかまいません。以下の絵は、三角形1つと二角形3つを含む具象幾何複体です。

1次元の具象幾何複体は具象幾何グラフで、特に扱いやすいものです。多くのグラフ(無向でも有向でも)は、2次元ユークリッド空間 $`\mbf{R}^2`$ 内に実現できます(描けます)。が、一部のグラフは2次元ユークリッド空間〈平面〉には(辺の交差なしに)描けません("Kuratowski's theorem" 参照)。
複体の大分類
複体を次の三種に大分類します。
- 幾何複体〈geometric complex〉
- 組み合わせ複体〈combinatorial complex〉
- 代数複体〈algebraic complex〉
幾何学、組み合わせ論、代数学という分野を形容詞にして大分類しました。
幾何複体と組み合わせ複体は密接に関係しています。幾何複体は、単なる位相空間ではなくて組み合わせ構造を備えているのです。幾何複体から幾何的情報を落として組み合わせ構造だけを抽出したものが組み合わせ複体です。
代数複体は独立に議論できる対象物です。代数複体は、加群の線形代数の枠内で記述できます。鎖複体と余鎖複体に細分されます。総称的に「代数複体」という言葉が使われることはほぼなくて、単に「複体」が多いです。ここでは、「なんでもかんでも複体」の混乱を避けるために、鎖複体と余鎖複体を総称して代数複体といいます。
+--- 幾何複体
+--- 組み合わせ複体
+--- 代数複体
+--- 鎖複体
+--- 余鎖複体幾何複体
既に注意したように、幾何複体は単なる位相空間ではありません。セル〈cell〉と呼ばれる基本単位から組み立てられていて、セルの組み合わせ方/どうやって作ったかの情報も持っています。
n次元のセル(n-セル〈n-cell〉と短く呼ぶ)は、位相空間としてはn-球体と同相で、内部(n-開球体と同相)と境界((n - 1)-球面と同相)を持ちます。セルの境界は、(n - 1)-次元の組み合わせ構造を持ちます。つまり、セルの境界がより次元が低いセル達の組み合わせとして構成されているのです。境界をどうやって作ったかの情報(それが組み合わせ構造)を持っています。
幾何複体を構成している基本単位であるn-セルを、(組み合わせセルと区別したいなら)幾何n-セル〈geometric n-cell〉と呼びます。幾何n-セルの土台となる位相空間を台空間〈underlying space〉と呼びます。n-セルの台空間はn-球体と同相なのでした。
例えば、2-セルを考えてみると、境界が円周と同相である図形です。内部はまーいいとして、境界(円周)上の組み合わせ構造の違いにより:
- 一角形: 境界は一つの頂点と一つの辺
- 二角形: 境界は二つの頂点と二つの辺
- 三角形: 境界は三つの頂点と三つの辺
- 四角形: 境界は四つの頂点と四つの辺
二角形とその多次元バージョンをn-セルとするアプローチを球体アプローチ〈globular approach〉、三角形とその多次元バージョンをn-セルとするアプローチを単体アプローチ〈simplicial approach〉、四角形とその多次元バージョンをn-セルとするアプローチを方体アプローチ〈cubical approach〉といいます。異なるアプローチ〈手法〉が同値であることを示すのは難しい問題です。
- [ABS00-01]
- Title: Multiple categories: the equivalence of a globular and a cubical approach
- Authors: Fahd A.A. Al-Agl, Ronald Brown, Richard Steiner
- Submitted: 3 Jul 2000 (v1), 17 Dec 2001 (v3)
- Pages: 40p
- URL: https://arxiv.org/abs/math/0007009
ここでは、球体アプローチを採用します。が、球体アプローチで単体アプローチや方体アプローチをある程度エミュレーション出来ます。
幾何複体を構成する幾何セルは、位相空間(点集合+位相)としての実体(台空間)を持ちますが、台空間がユークリッド空間の部分集合として実現されているなら、その幾何複体は具象幾何複体〈concrete geometric complex〉と呼ぶことにします。ユークリッド空間内ではなくて、独立した位相空間としての実現を持つなら抽象幾何複体〈abstract geometric complex〉です。
理論的には抽象幾何複体のほうが扱いやすいですが、外のユークリッド空間があったほうが直感的には理解しやすいかも知れません。抽象幾何複体に対してユークリッド空間への埋め込みが構成できるので、具象幾何複体にすることができます。また一方、具象幾何複体から外のユークリッド空間を忘れ去れば抽象幾何複体です。
+--- 幾何複体
+--- 具象幾何複体
+--- 抽象幾何複体
+--- 組み合わせ複体
+--- 代数複体
+--- 鎖複体
+--- 余鎖複体組み合わせ複体
円板(2次元球体)と同相な2-セルでも二角形、三角形、四角形の違いがあるように、幾何複体には組み合わせ構造がビルトインされています。位相空間である台空間を忘れて、組み合わせ構造だけを取り出して定式化したものが組み合わせ複体〈combinatorial complex〉です。
組み合わせ複体におけるセルは、もはや幾何的実体(台空間)を持ちません。セルの“図形としての拡がり”は奪われて、アトミックな存在となります。組み合わせセル〈combinatorial cell〉は、単にセル達の集合の要素に過ぎません。幾何的情報を一切含みません。
$`X`$ が組み合わせ複体のとき、$`X_k`$ はk-次元の組み合わせセル達の集合だとします。次元ごとの組み合わせセル達の集合達 $`X_0, X_1, \cdots, X_n`$ があります。が、これらの集合達だけでは組み合わせ構造になりません。組み合わせセルと、その境界との関係性(幾何的概念の組み合わせバージョン)が必要です。セルと境界の関係性の定式化には次の2つの方法があります。
- 接続関係〈incidence relation〉による定式化
- 面写像〈face map〉による定式化
これら2つの方法は排他的ではないので、一緒に使うこともあります。むしろ、併用するのが望ましいと思います。
幾何セルを思い起こすと、「幾何セル $`x`$ が幾何セル $`y`$ の境界に含まれる」という状態があります。これをヒントに、$`x,y\in \bigcup_{k\in 0..n} X_k`$ に対して、$`x \prec y`$ という関係を定義します。このような発想で定義される関係 $`\prec`$ が接続関係〈incidence relation〉です*5。接続関係 $`\prec`$ は厳密順序〈strict order〉になります(定義においてそう仮定します)。
1次元組み合わせ複体の場合の接続関係は、グラフの接続関係に他なりません。通常、接続行列で表現されます。
再び幾何セル、例えば三角形を思い起こすと、「三角形の境界は3つの辺からなる」という事実があります。3つの辺に0始まりの順番が付いているとして、「0番目の辺を取り出す関数を $`f_0`$ 、1番目の辺を取り出す関数を $`f_1`$ 、2番目の辺を取り出す関数を $`f_2`$」と決めれば、これらの関数で境界を記述できます。境界の一部を面〈face〉と呼ぶので、セルの面を取り出す関数を面写像〈face map | 面関数 | face function〉と呼びます。幾つかの面写像があれば、組み合わせセルと、その境界との関係性が記述できます。
まとめると:
- 接続関係 $`\prec`$ は、集合 $`\bigcup_{k\in 1..n} X_k`$ 上の厳密順序関係
- 面写像は、$`f_{k, i}: X_k \to X_{k - 1}`$ という関数達。ここで、$`0\le k \le n`$ で、$`i`$ の動く範囲は $`k`$ に依存して変わる。
幾何複体を扱う場合でも、実は幾何的情報が不要なことがあります。そんなときは、組み合わせ的情報だけを抽出した組み合わせ複体として議論するのが得策です。
一方、組み合わせ複体の組み合わせセル(アトミックな要素)に、具象幾何セルを上手に割り当てれば具象幾何複体が出来ます。これを、組み合わせ複体の具象幾何実現〈concrete geometric realization〉といいます。
オリエンテーション〈向き〉
オリエンテーション〈向き〉が何であるかの雰囲気は、以下の過去記事を参照してください。
具象幾何複体/抽象幾何複体において、各幾何セルにオリエンテーション〈向き〉が付いてるとき、向き付き具象幾何複体〈oriented concree geometric complex〉/向き付き抽象幾何複体〈oriented abstract geometric complex〉といいます。
幾何セルへの向き〈オリエンテーション〉の割り当ては、幾何的方法で行えます*6。しかし、幾何複体が持っている組み合わせ構造、つまり組み合わせ複体の側で向きを定義することも出来ます。どちらかというと、組み合わせ的に向き割り当てを行うほうが簡単です。
今「簡単」と言いましたが、それは比較の問題で、純組み合わせ的な向き〈オリエンテーション〉でも、けっこう面倒ではあります。球体アプローチにおける、組み合わせセルへの向き〈オリエンテーション〉の与え方は:
- 組み合わせセルの境界を2つの部分に分ける〈bipartition〉。
- 2つの部分のどちらかを正〈プラス〉、もう一方を負〈マイナス〉と決める。
正負〈プラス・マイナス〉の符号(極性〈polarity〉ともいう)は、電流のプラス・マイナスのように、何かが流れる方向〈ディレクション〉を決めます。境界に既に向き〈オリエンテーション〉があるとして、流れる方向〈ディレクション〉によりセルの向き〈オリエンテーション〉が決まります。
幾何複体でも組み合わせ複体でも、向き〈オリエンテーション〉が付いているか付いてないかで分類ができます。
+--- 幾何複体
+--- 具象幾何複体
+--- 向き付き具象幾何複体
+--- 向き無し具象幾何複体
+--- 抽象幾何複体
+--- 向き付き抽象幾何複体
+--- 向き無し抽象幾何複体
+--- 組み合わせ複体
+--- 向き付き組み合わせ複体
+--- 向き無し組み合わせ複体
+--- 代数複体
+--- 鎖複体
+--- 余鎖複体代数複体(鎖複体と余鎖複体)
代数複体、つまり鎖複体〈チェーン複体〉と余鎖複体〈コチェーン複体〉は、完全に代数的に定義できる概念です。代数複体の下部構造は、$`\mbf{N}`$ または $`\mbf{Z}`$ で番号付けられたアーベル群〈$`\mbf{Z}`$-加群〉やベクトル空間の系列です。アーベル群の系列も使いますが、主に扱うのはベクトル空間です。ベクトル空間の系列(階付きベクトル空間〈graded vector space〉といいます)については以下の記事を参照してください。
鎖複体〈chain complex〉は、階付きベクトル空間 $`(V_i)_{i\in \mbf{Z}}`$ と境界作用素〈boundary operator〉 $`\delta_i : V_i \to V_{i - 1}`$ 達を一緒にした構造です。境界作用素(の系列)は、線形写像で $`\delta_i; \delta_{i - 1} = 0`$ を満たすものです。
余鎖複体〈cochain complex〉は、鎖複体の双対概念で、階付きベクトル空間 $`(V_i)_{i\in \mbf{Z}}`$ と余境界作用素〈coboundary operator〉 $`d_i : V_i \to V_{i + 1}`$ 達を一緒にした構造です。余境界作用素(の系列)は、線形写像で $`d_i; d_{i + 1} = 0`$ を満たすものです。
線形代数的な定義だけだと、代数複体が幾何複体や組み合わせ複体とどう関係するか分かりません。幾何複体/組み合わせ複体から代数複体へと架橋する役割りは離散微分形式〈discrete differential form〉が担います。その意味で、離散微分形式は離散微分幾何の中核的な概念です。今これ以上は説明しませんが。
おわりに
離散微分幾何の基礎となる概念をザッと眺めました。実際のところ、「複体」と呼ばれる概念を説明しただけです。「複体」と呼ばれる概念にどのようなものがあるか、もう一度リスト〈入れ子箇条書き〉を出すと:
+--- 幾何複体
+--- 具象幾何複体
+--- 向き付き具象幾何複体
+--- 向き無し具象幾何複体
+--- 抽象幾何複体
+--- 向き付き抽象幾何複体
+--- 向き無し抽象幾何複体
+--- 組み合わせ複体
+--- 向き付き組み合わせ複体
+--- 向き無し組み合わせ複体
+--- 代数複体
+--- 鎖複体
+--- 余鎖複体通常は、文脈から「どの意味の複体か?」を推測・判断しますが、明示的に区別したほうがいいと思います。
ここでは、複体を細かく分類したので、一般的〈多数派の〉用語と少し食い違いがあります。念の為、対応関係を表で示しておきます。
| 多数派の用語 | ここでの用語 |
|---|---|
| 幾何複体 | 具象幾何複体 |
| 抽象複体 | 向き無し組み合わせ複体 |
| 向き付き複体 | 向き付き組み合わせ複体(のひとつの実現法) |
過去記事「幾何単体複体と抽象単体複体」では多数派の用語のほうを使っています。
*1:習慣に対して「なんで?」と問うても無意味です。「そうなんだからしょうがない」としか答えようがありません。
*2:0次元以外の開球体はコンパクトではありません。一点コンパクト化で球面になります。
*3:コンパクト性の条件を入れているのは、有限的に扱いたいからです。コンパクト空間を扱う離散微分幾何は有限離散微分幾何だと言えます。
*4:画像は https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/50/Simplicial_complex_example.svg/220px-Simplicial_complex_example.svg.png
*5:接続関係の特別な場合を被覆関係〈covering relation〉と呼ぶこともあるようです。
*6:ベクトル空間の向きに帰着させます。ベクトル空間の向きは「方向とオリエンテーション、圏論の絵図」参照。
