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参照用 記事

つわ者達の世界

「キマイラ飼育記」は「モナド・ブログ」に変わりました -- って、前も同じようなこと言っていたわ。

モナド(strong monad)は誰が言い出したものか知りませんが、計算的な強モナド(computational strong monad)を利用し始めたのはモッジ(Eugenio Moggi)でしょうか?

モナドテンソル強度tensorial strength)を持ったモナドですが、単なる関手にもテンソル強度は定義できます; C = (C, ×, 1) がモノイド圏(必ずしもデカルト圏とは限らない)において、自己関手Fと自然変換 τA,B:A×F(B)→F(A×B) の組 (F, τ) は、適当な条件を満たすとき強関手(strong functor)を定義します。

テンソル強度の定義や計算には、C対象Aに対して (A×-) := λX∈|C|.(A×X) と、(-×A) := λX∈|C|.(X×A) という2つの関手を考えると便利です。それぞれ、Aによる左掛け算関手と右掛け算関手です。

モナドとテンソル強度の楽しいお絵描き」では、モノイド積(テンソル積)を足し算の形に書いて、(-×A) に (+a) という記号を使っています。「モッジのテンソル強度とベックの分配法則」では、(A×-) を A. 、(-×A) を .A で表しています。この2つのエントリーには絵も描いてあります。(F, τ) が強関手である、あるいはτがFの強度(テンソル強度)になっているとは、τA,- が、左掛け算関手(A×-)と関手Fのとあいだのベックの分配法則を与えることです。

以上の定義では、強度は自己関手にしか定義されません。豊饒圏と余パワーの概念を使うと、自己関手とは限らない関手 F:CD に強度を定義できます。「最強のモナドとモナド工場の秘密」で触れた Kruna Segrt Ratkovic, "Morita theory in enriched context" (http://arxiv.org/abs/1302.2774)に、一般的な強関手の定義が書いてあります。なお、"tensored over V" と "copowered over V" は同じ意味です。

パワー(実際には余パワー)を注入する圏(copowering category)Vごとに、Vでエンパワーされた圏と強関手からなるストロングワールドが存在します。

おそらくは、モノイド圏が圏に作用している状況(monoidal category module と言うことがあるようです)だけでも、テンソル強度の概念は定義できるでしょう。モノイド圏の圏への作用については、G. Janelidze and G.M. Kelly, "A Note on Actions of a Monoidal Category" http://www.emis.de/journals/TAC/volumes/9/n4/9-04abs.html)に詳しく書いてあります。