2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧
「半グラフの様々な定義」に対する補遺です。望月/ジョイアル/コック方式の半グラフの定義では、サークル〈無頂点ループ〉を表すことはできません。ボリソフ/マニン方式ではさらに、無頂点辺も表現できません。枝〈ブランチ〉の集合上に、不動点のない対…
グラフの一種と考えられる組み合わせ構造〈combinatorial structure〉があるのですが、その構造の呼び名が安定してなてく困っています。nLab項目 semi-graph に従い、ここでは「半グラフ〈semi-graph〉」という呼称を採用します。様々な著者が半グラフを定義…
一連のデータベースに関する記事のハブ記事(リンク集がある記事)は「データベース:: テーブルのキーって何なのよ?」です。その他の記事はハブ記事からたどれます。抽象的な議論だけでは分かりにくいので、データベースの具体例を入れたいのですが、具体例…
「データベース:: テーブルのキーって何なのよ?」の続きです。データベース理論は数理科学の一分野だろうし、みずからそう標榜しています。しかしその割には曖昧だよなー、と僕は感じます。「定義や主張を論理式で書く」とか「命題とメタ命題を区別する」と…
ハイパーグラフ圏〈hypergraph category〉については、以下の記事でごく簡単に触れたことはあります。 ハイパーグラフ圏 一瞥 しかし、それ以降は話題にしたことがありません。ハイパーグラフ圏をちょっと使ってみたい気がしたので、次の論文の前半をもとに…
「双線形写像集合関手の表現可能性とテンソル積の普遍性」で、ベクトル空間のテンソル積を事例として、表現可能関手と普遍元の話をしました。テンソル積より簡単でお馴染みな例がありますね。デカルト圏における指数対象〈exponential object〉です。これは…
表現可能関手〈representable functor〉に関連して、「普遍性〈universality〉」と「普遍元〈universal object element〉*1」という言葉のハッキリした用法があることを最近知りました。「普遍性」は、up-to-isoで何かが一意的に決まる状況で漠然と使うこと…
2019年に「データベース:: 論理の使い所は」という記事を書きました。タイトルに「データベース::」という接頭辞を付けたのは、一連の記事を検索しやすくするためです。一連の記事とは、次の意図で書かれる“はずだった”記事です。 ちゃんと書こうと思うと億…
圏論的確率論の舞台となる圏にマルコフ圏〈Markov category〉があります。マルコフ圏に関しては、このブログでけっこう書いています。 「マルコフ圏」の検索結果 最初の紹介記事を挙げれば: マルコフ圏 A First Look -- 圏論的確率論の最良の定式化 マルコ…
「演繹系とオペラッド」で演繹系について述べました。演繹系を、別な側面からさらに抽象化した構造として閉包系〈closure system〉があります。$`\newcommand{\Imp}{ \Rightarrow } \newcommand{\mrm}[1]{\mathrm{#1}} \newcommand{\cat}[1]{\mathcal{#1}} %…
論理や型理論では、「推論」、「判断」、「証明」、「導出」なんて言葉が出てきますが、用語法が錯綜していて、それらの言葉が何を意味するかよく分からない事態が生じます。抽象化された構造を準備しておいて、それを参照枠にすると、多少はマシになるでし…
12年前の記事「可愛い圏」 集合に恒等射を追加して離散圏にできるし、順序集合の比較可能なペアを射とみなせばとてもやせた圏〈very thin category〉になります。逆に言えば、集合も順序集合も特別な圏です。一般の圏に条件を付けて絞り込むと特別な圏になり…
「カーディナリティ〈多重度〉の“カラスの足”記法が分からない」において、関係のカーディナリティ〈多重度〉の説明が(僕が見た少数の事例では)曖昧・意味不明で困ったもんだ、という話をしました。その後、ER diagrams vs. EER diagrams: What’s the diff…
データベースに関する説明では、一見して理論的に見えても、その実、内容が曖昧だったり残念だったりすることがあります。例えば、数年前に次の記事を書きました。 奥野幹也『理論から学ぶデータベース実践入門』はどこがダメなのか 最近、ER図に出てくる“カ…
「米田埋め込みの書き方(色々ありすぎ)」において、米田埋め込みの記法がたくさんあることを紹介しました。別名/別記法の氾濫は、鬱陶しくて面倒な事ですが、メリットもあります。それは、用途・場面に応じて適切な呼び名と記法が選べることです。今言っ…
「米田テンソル計算 3: 米田の「よ」、米田の星、ディラックのブラケット 再論」でも触れたことですが、米田埋め込み/余米田埋め込み/ホムセットの記法が色々ありすぎます。$`\newcommand{\cat}[1]{\mathcal{#1}} \newcommand{\hyp}{\text{-}}`$ $`\text…
「層化ストリング図」では、"layer"を「層」としたのですが、「層」は"sheaf"の翻訳語であり、トラブルの原因になりそうなので「層」から「レイヤー」に変更します。ただし、過去の記事は変更しません*1。で、レイヤー化ストリング図〈layered string diagra…
次の論文の内容で、僕が「面白いな」と思った点を幾つかピックアップして紹介します。 Title: String Diagrams for Layered Explanations Author: Leo Lobski, Fabio Zanasi Submitted: 8 Jul 2022 Pages: 21p URL: https://arxiv.org/abs/2207.03929 科学的…