2024-01-01から1年間の記事一覧
今年(2024年)最後の投稿。内容はいつもと変わらんけど。一般化ハイパーグラフについては、「一般化ハイパーグラフ」で述べました。一般化ハイパーグラフは、スケマティック集合のなかでも特に扱いやすいモノです。最近、その重要性を再認識しています。こ…
クランについては「クラン、ファイブレーション、スパン」で述べました。クランの非常に特別なものとして、カートメル/ヴォエヴォドスキーのC-システムが出現します。クランの台圏とファイブレーションクラス(が定義する部分圏)に、とある強い制約を課し…
ファイバー付き圏〈{fibred | fibered} category〉は、圏論で重要な概念です。ファイバー付き圏の実体は(圏ではなくて)関手です。とある性質を持つ持別な関手がファイバー付き圏です。「とある性質」を記述するためには、関手に伴うデカルト射という概念を…
クラン〈clan〉は、ジョイアル〈Andre Joyal〉によって導入された圏論的構造〈構造付きの圏〉です。ジョイアルは、型理論の理論〈theory of type theories〉の基礎としてクランを定義したようです。クランとその双対であるコクランは型理論や計算科学で有用…
レンズを説明するための事例として、僕はしばしば“Webのサーバーサイド処理”を挙げます。レンズはHTTPプロトコルの変換プロセッサに相当し、レンズの結合(直列結合)はパイプライン構成に相当します。プロ関手は、集合の族に圏が両側から作用している代数構…
「圏論のエンドとコエンドは双対なんだよ」で述べたように、エンドとコエンドは完全に双対なのですが、この双対性、なかなかに分かりにくいようです。エンドの作り方は「連立方程式系の解空間を求める」行為になっています。コエンドを作ることはその行為の…
「スケマティック」で述べたように、スケマティック集合は、“絵図的手法による一般化された代数系”の台〈underlying thing | carrie〉となる構造です。スケマティック集合は、集合に組み合わせ幾何的構造が載った対象物です。有向グラフ、無向グラフ、球体集…
YouTubeのとある広告でタイトルのごとく言っているように聞こえる。が、商品のWebサイトには「ロレックスの時計」だとは一言も書いてない。広告内でアナウンスしている文言は次のよう。 ロレックスの公式オンライン年末セールが始まりました。(これは本当か…
「スケマティック〈schematic〉」という形容詞の使い方を説明します。内容: 代数構造 スケマティック系 スケマティックな構造達 代数構造典型的な代数構造である群を考えてみると、群は単位元、逆元(を対応させる写像)、二項演算〈乗法〉を持ちます。群の…
圏の下部構造は有向グラフです。圏には恒等射がありますが、恒等射に相当する特別な辺を備えた有向グラフは反射的有向グラフと呼びます。よって、圏の下部構造は反射的有向グラフだと言ってもいいでしょう。圏を一般化した構造である一般化圏〈generalized c…
「論理や型理論の圏論的意味論」より: 今年いっぱいくらい、まとまった時間が取りにくい状況があるので、長いブログエントリーは書けそうにない。短いエントリーをチョコチョコと書くことにします。短くて完結した書き物は難しいので、続き物になる可能性が…
ひとつ前の記事「圏論のエンドとコエンドは双対なんだよ」において、“連立方程式系の解空間”と“関係族の同値閉包による商集合”が双対的だという話をしました。この双対性はちょっと不思議な感じがします。最終的には、写像(集合圏の射)の並行ペア(両端が…
エンドとコエンドは、その名前から双対なんだろうとは誰でも思うでしょう。しかし、定義の仕方によっては双対性が見えにくいこともあります。この記事では、エンドとコエンドの双対性が出来るだけ見えやすくなるような定義と記法を提示します。$`\newcommand…
複圏〈オペラッド〉はその下部構造に複グラフを持ちます。導出システム〈演繹系〉は、概念的には複グラフそのものです。複グラフを依存型理論で利用したいとき、複グラフにも依存性を導入する必要があります。この記事で、依存性を持つ複グラフを導入します…
「論理や型理論の圏論的意味論 // 導出システムの圏と圏の圏」において、導出システム達を対象とする圏に触れました。しかし、導出システムのあいだの準同型射(それが圏の射となる)を素朴に考えていては、どうもうまくないようです。導出システムは、複圏…
例えば、有向グラフやラベル付き有向グラフの説明をするとき、当然に記号的表現を使うわけです、 $`\mathrm{Graph}(A, B)`$ とか。ふと、使っている記号的表現 $`\mathrm{Graph}(A, B)`$ を文脈から切り離して眺めてみました。「文脈無しで、$`\mathrm{Graph…
今年いっぱいくらい、まとまった時間が取りにくい状況があるので、長いブログエントリーは書けそうにない。短いエントリーをチョコチョコと書くことにします。短くて完結した書き物は難しいので、続き物になる可能性が高いです。$`\newcommand{\mrm}[1]{ \ma…
過去記事「矢印記号の使用法と読み方 2024」において、様々な矢印記号の意味・運用について述べました。構文論で使う矢印記号に関して、別な読み方・名前を追加して一覧表を再掲します。 矢印記号 読み方 別な読み方・名前 $`\Rightarrow`$ 含意〈implies〉 …
記号的表現を見たとき、十分トレーニングされた人は、周囲の文脈から様々な“忖度”をして、記号的表現を解釈します。「行間を読む」と言ってもいいでしょう。ソフトウェアによって「忖度する/行間を読む」行為を実装することはとても大変です。ソフトウェア…
随伴系〈adjunction〉の典型的例というと、やはり自由忘却随伴系〈free-forgetful adjunction〉でしょうかね。あと、カリー化・反カリー化も典型的だと言えるでしょう。集合圏で考えるとして、カリー化・反カリー化による次のホムセット同型があります。$`\n…
ひとつ前の記事「球体集合と組み合わせ幾何」で、球体集合の圏についておおよそは説明しました。この記事では、次元が低い球体集合達の圏について述べます。球体集合の絵図表示であるペースティング図とテキスト表示である指標についても補足します。低次元…
最近の2回、バタニン・ツリーの記事を書きました。 バタニン・ツリー 再論 バタニン・ツリーの参考資料/参考文献 これは、今年の5月頃の話題の蒸し返しです。 指標の組織化と表現方法と呼び名は色々だ 指標の話: ペースティング図とバタニン・ツリー 球体…
過去記事「バタニン・ツリー 再論」の最初の節にバタニン・ツリーの参考文献を載せました。内容的重複がありますが、この記事でも参考資料/参考文献を紹介します。過去記事より細かいコメントを付けます。が、いずれの論文も拾い読みしかしてないので、拾い…
バタニン・ツリーについては、以下の過去記事に書いています。 指標の話: ペースティング図とバタニン・ツリー ディーン達の論文の p.6 "2 Batanin trees" でもバタニン・ツリーを扱っています。 [DFMRV22-24] Title: Computads for weak ω-categories as a…
$`x = y`$ と書かれていたら、「その意味は明らかだ」と多くの人は思うでしょう。が、イコール/等式の意味や用法はそんなに簡単でもないですよ。$`\newcommand{\mrm}[1]{ \mathrm{#1} } \newcommand{\mbf}[1]{\mathbf{#1}} %\newcommand{\mfk}[1]{\mathfrak…
「図式」「形状」という言葉は普通に使う日常語なので、テクニカルタームとして使うのはかえって難しいですね。が、使うことはけっこうあるので、ある程度は運用法を決めておきます。特にフォーカスするのは、「図式」「形状」が組み合わせ幾何的対象物〈com…
指標は宣言文の集まりです。各宣言文は、順番〈位置番号〉でも名前でも一意識別できます。実用上は、(順番は覚えにくいので)名前が使われます。が、理論上は名前が邪魔になることがあるので、ときに、名前を削除する必要があります。名前の削除方法の記述…
ここ最近の本ブログのテーマは「カリー/ハワード/ランベック対応」です。最近の記事がすべてカリー/ハワード/ランベック対応に関係するわけではありませんが、9月の記事「関数の構成法 (カリー/ハワード/ランベック対応も少し)」あたりから、カリー/…
「指標の圏はコンテキストの圏の反対圏」「型理論とインスティチューション理論が繋がるぞ!」「指標の圏に対する余ディスプレイ包含構造」で述べたように、コンテキストの圏と指標の圏は互いに反対圏です。この事実を利用することにより、型理論とインステ…
命題と型は実質的に同じ概念であり、同じ構造を持つ -- これはカリー/ハワード/ランベック対応の主張です。Propositions-as-Types, Types-as-Propositions と表現されることもあります。ところが、「命題」という言葉は非常に曖昧です。同様に「型」という…