2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧
昨日の記事「圏論的線形代数をもう少し: 自由ベクトル空間の圏」では、忘却関手という概念を使っています。昨日の記事での「忘却関手」は、ベクトル空間に台集合を対応させるものでしたが、他に次のような例もあります。 モノイドに、結合法則を要求しない…
昨日の記事「圏論的線形代数とフレームの話」の続きとして、自由ベクトル空間の圏を作ってしまいましょう。有限次元の自由ベクトル空間の圏は使い勝手が良い圏で、線形代数の難所であるテンソル積も比較的容易に構成できます。内容: 自由ベクトル空間の圏 …
某所で圏論的線形代数の話をしたのですが、いきなり圏論バキバキでは面食らうだろうと思い、次のような方針にしました。 慣用の用語・記法は尊重する。 部分集合という概念を使う。 有限次元ベクトル空間に限定する。 忘却関手を強調しない。 これは、常識的…
「多相関数: 補遺」にて: 多相関数、パラメトリック性/アドホック性、型クラスの正確な定式化には、かなりの抽象化が必要です。曖昧で錯綜した印象は、抽象化が足りてないからでしょう。ここらの話題も気が向いたら書くかも知れません(誰も興味なさそう…
たまに disintegration という言葉に出会うのですが、辞書的な意味は: 分解、分裂、崩壊、風化作用、粉末化 とかです。が、integration が積分で、それに dis が付いたような気がします。気がするだけでよく分からないので、disintegration をなんと訳すの…
2020年9月に書いた一連の記事があります。 蒸し返し: アドホック多相 vs パラメトリック多相 多相関数の「パラメトリック性 vs 満足性」 多相関数と型クラス これらは多相関数に関する記事です。昨日の記事も多相関数を扱っています。 多相関数と依存型をち…
比較的最近(今年の9月)、多相関数の記事を書きました。「多相関数」「総称関数」という言葉は知っていても、理解があやふやな人もいそうです。基本的なところを復習しましょう。話を明確にするために、少し圏論を使います。[さらに追記]下の追記における「…
だいぶ以前の論文なのですが: Title: Lambek vs. Lambek: Functorial Vector Space Semantics and String Diagrams for Lambek Calculus Authors: Bob Coecke, Edward Grefenstette, Mehrnoosh Sadrzadeh Submitted: 2 Feb 2013 Pages: 29p URL: https://ar…
日常論理とは、我々の生活において、「もっともだ」とか「一理ある」として受け入れられている推論の体系だとしましょう。ムチャクチャな物言いとかトンデモな議論とかは相手にしません。いちおうは「論理」ですからね。常識的・世間的に「まーまー妥当だ」…
今年(2020年)の6月にマルコフ圏というものを知りました。 マルコフ圏 A First Look -- 圏論的確率論の最良の定式化 マルコフ圏の直接的応用は圏論的確率論(「圏論的確率論におけるCタイプとAタイプ」参照)ですが、他の分野への応用もありそうです。「マ…
昨日の記事「ダンジョン圏における確率伝搬法」に出てきたダンジョン圏〈dungeon category〉は、最近はハイパーグラフ圏〈hypergraph category〉と呼ぶことが多いようです。(個人的には「ダンジョン圏」の語感が好きですが。) nLab項目: https://ncatlab.…
f(x) g(x) =0⇔f(x) =0 or g(x) =0 はなぜ誤りなのですか?反例が存在すること以外での一般的な説明があれば教えてください。 質問の意味が分からないなー ‥‥?? でも、この質問に対する丁寧な回答が付いています。回答を見ると、質問者の意図は想像できます…
昨日の記事「確率グラフィカルモデルの背後にある圏は何か?」の課題にドンピシャで役立ちそうな論文を見つけました。 Title: Belief propagation in monoidal categories Author: Jason Morton Pages: 8p URL: https://arxiv.org/abs/1405.2618 短い論文で…
確率的不確定性を伴う状況の記述や分析の手法に確率グラフィカルモデル〈probabilistic graphical model〉があります。ベイズネットワーク〈Bayesian network〉が有名です。ベイズネットワークは有向グラフを使いますが、無向グラフを使うグラフィカルモデル…
多様体の話で接続係数というものが出てきます。「接続係数はなぜテンソルじゃないのですか?」と聞かれると困ってしまいます。なぜなら、接続係数はテンソルだからです。「接続係数はテンソルである」という事実を考慮すると、質問は次の形になります。 接続…
用語と記号のオーバーロード〈多義的使用〉はホントに悩みのタネです。混乱と誤解を避けるためにオーバーロードはやめようと思うことは多いのですが、あまり律儀にオーバーロード解決すると用語と記号のインフレーション〈急激な増加〉を引き起こして現実的…
今年の8月に「基底とフレーム、丸く収まる妥協案」という記事を書きました。その記事で、混同されがちな3つの概念を区別して、それぞれに別な名前を与えました。「うまくいった」と思ったのですが、まだ問題がありました。内容: 定義が狭すぎた 準備 再定義…
「ベイズ確率論、ジェイコブス達の新しい風」で紹介したチャンネル方式〈the channel perspective, the channel approach〉では、状態(確率測度の別名、確率分布でも同義)と述語〈ファジー述語〉を双対的に扱います。述語はもちろん状態ではありません。ジ…