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参照用 記事

アフィン幾何とアフィン変換の補足

「アフィン変換なんて簡単だ」への補足。

紙に座標軸を描いたり、座標軸を描いた紙を見比べたり、重ねてすかしてみたりを繰り返せば、アフィン変換がなんであるかを体得(文字通り「体で納得」)できると思います。実際、割とスンナリと理解してもらえました。しかし、アフィン変換をベクトル/行列の計算と結びつけるところは、やっぱり若干の困難があるのかもしれません。

僕がアフィン幾何に関して「よろしくないなー」と思っていることは、点の座標とベクトルの成分表示をあまり区別してないことです。それと、単に2点から決まる矢線ベクトル(ほんとに単なる図形)と、アフィン空間に平行移動として作用する「変換としてのベクトル」も区別しません。

細かい概念上の違いを区別するほうが、かえって分かりにくいって話はあるでしょうが、なんか適当に混同して提示されると、そこで引っかかる人もいると思います。例えば、矢線ABと矢線CDが向きを込めて平行で同じ長さのとき、AB = CD と書いたりしますが、2本の矢線のある場所が違えば、違うに決まってるだろや*1

もう少しちゃんと言えば、まず、矢線ABから平行移動TABが一意的に決まる、と。それで、TAB = TCD なのはどんなときか? と。A = C である必要はないよね。矢線ABと矢線CDが向きを込めて平行で同じ長さのとき、TAB = TCD でしょ、っと。この事実を象徴的に(あるいは、記号を乱用して) AB = CD と書きますよ、ってことですね。

えーっと、僕が補足したかったテーマは、アフィン枠とアフィン変換の表示の問題だったわ。基準座標系の基本3点を O, X, Y として、新座標系の基本3点を P, A, B とすると、P, A, B の基準系による座標(数値のペアが3つ)がアフィン変換を決めると言いました。例えば3点 P, A, B の基準系で計った座標を (2, 1), (0, 3), (4, 1) とすると、6成分のタプル (2, 1, 0, 3, 4, 1) がアフィン変換の表示になります。

しかし、この6成分タプルは行列計算にはあまり向かなくて、P, PA, PB の組のほうが便利です。ここで、PA は、点Pから点Aに向かう矢線ですが、上に説明したような事情で始点位置の違いは無視して考えます。すると、PA の成分表示は (-2, 2) ですが、点の座標と区別して [-2, 2] と書きましょう。PB の成分は [2, 0]。P, PA, PB の表示は、(2, 1), [-2, 2], [2, 0]、6成分のタプルとしては (2, 1, -2, 2, 2, 0)。

2種類の6成分タプルを (x1, x2, x3, x4, x5, x5), (y1, y2, y3, y4, y5, y6) とすると:

  1. y1 = x1
  2. y2 = x2
  3. y3 = x3 - x1
  4. y4 = x4 - x2
  5. y5 = x5 - x1
  6. y6 = x6 - x2

簡単な加減計算で相互に移りあえます。P, A, B の代わりに A, B, P と順序を変えても成分表示は変わります。いくつかの表現のバリエーションはありますが、まーともかく、スカラー6成分で平面アフィン変換を完全に記述できるよ、その6成分は計算の都合で相互変換するよ、てのが要点かと。

*1:実際、接バンドルで考えれば違うベクトル。