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参照用 記事

用語法/記号法/図示法は、ほんっとうーに方言が多い

2009年に書いたエントリー「理解をさまたげるモノ/誤解をまねくモノ、それと対処」で、次のように書きました。

心がけ

用語とか記号の使い方に関して、是非とも憶えておいて欲しいキーワードは次のようなものでしょう。

  1. バラバラ -- 集団や個人によって、用法が違います。
  2. ズボラ -- 律儀に曖昧性なく書くことは極めてまれで、省略や乱用をするのが普通です。
  3. その場限り -- 同じ用語・記号が文脈によって違った意味で用いられます。その文脈の範囲や寿命(スコープ&エクステント)は非常に小さいことがあります。

学習の過程の最初に出会った用語法/記号法/図示法は刷り込みになるので、他の流儀に対して誤解や混乱をしたり、拒否反応を起こしたりしがちですが、分野によっては(あるいは、集団や個人によっては)驚くほど混沌としてるんで、固定的に考えているとワケワカになります。

また、特定分野の用語法/記号法/図示法を固定的かつ教条的、そして高圧的に振り回されると、けっこう迷惑なものです。このブログでも他でも、集合論圏論の「クラス」を別な言葉で代替しているのですが、それはオブジェクト指向の人(のごく一部でしょう)に、誤解と変な反応をされると鬱陶しいからです。

それはともかく、僕自身が苦しんだ例は、型推論関係の用語法です。「型推論に関わる論理の概念と用語 その2」より:

型推論について調べたり勉強したりしようとすると、ゴチャゴチャしていてメンドクサイんですよ。同義語/類義語が無闇に多くて、人によって言葉の使い方が違うのです。そうなると、書かれたモノを読むときの負担が大きくてイヤになっちゃう。

けっこうたくさんのエントリーを書きました。

  1. 型推論に関わる論理の概念と用語 その1
  2. 型推論に関わる論理の概念と用語 その2
  3. 型推論に関わる論理の概念と用語 その3
  4. 型推論に関わる論理の概念と用語 その4:JavaScript風の擬似言語
  5. 型推論に関わる論理の概念と用語 その5:型付けの簡単な例から型判断へ
  6. 型推論に関わる論理の概念と用語 その6:substitutionの記法
  7. 型理論ってば

それと、「右」と「左」の使い方。これも色々です。悲惨とも言えるのが双対概念に伴う左右の使い分けで、「右と左 n-たび セリンガーの左右」より引用すると:

状況は悲劇的; 白旗さんとバカキリの定義は同じだが左右が逆、バカキリとセリンガーは同じ言葉に逆の定義。統一されているどころか、考えられるすべてのバラエティがある。

モノイド閉圏、オダンゴ、留め金、池袋」では、左右を逆転するのは「東口に西武線、西口に東武線」がある池袋みたいに混乱のもとだ、と書いています。上記の「理解をさまたげるモノ/誤解をまねくモノ、それと対処」でも、「右と左、上と下、前と後」というセクションがあるくらいです。他にも、左右の問題を扱った(愚痴った)エントリーは:

プログラミング言語や数式では、「左→右」と「右→左」の方向性が混じっていることが多く、これは僕にはけっこうな負担です。

自分で圏論の計算するときには、「左→右」だけで書ける記法を使ったりしています。

とまー、用語法/記号法/図示法の多様さ(方言の多さ)に苦しみ、対応するために多大なエネルギーを使っているわけですよ。標準化する/統一する方向での努力は称賛される行動ですが、それが進んでない分野では … あきらめて各種方言に慣れる しかないようです。