↑これらで何を悩んで愚痴っているのか?
確率変数Xのフォーマルな定義だと、それは関数(可測写像)なわけです。関数なので X:A→B と書けます。だけど、あたかも X∈B のような語り方になってることがあり、それで不都合もないみたいなんです。となると、言葉の運用上は、確率変数は単なる変数のように扱うのが習慣なのかな、と疑問を感じたり混乱したり。
最初は関数(可測写像)X:A→B として導入しても、ある段階からはAを忘れてBだけ考えることにして、Xは関数から単なる変数に解釈し直すのではないか? と想像してます。そういう解釈の変更についての明白な記述もドッカにあるのかも知れませんが、少数の資料しか見てないので事例を知りません。
具体例を挙げると、ベイジアンネットワークは、図形としてはノードと辺からなる有向グラフですが、そのノードは「確率変数」を表すと定義されています*1。では、ノードである確率変数(可測写像)の定義域となる確率空間はどんなものか? たいてい記述はありません。もとの確率空間への言及が不要なのは、たぶん次の理由でしょう。
- 個々の具体的なケースでは、現実のモデルとなる確率空間が与えられる。
- ベイジアンネットワークの一般論としては、現実のモデルとなる個々の確率空間に依存しない議論しかしない。
- したがって、現実のモデルとなる個々の確率空間には言及しなくてよい。
- もとの確率空間を捨象すると、確率変数を関数と考える必要はない。
- この状況での確率変数とは、ノードごとの値の空間を走る文字通りの“変数”であり、またノードの識別ラベルでもある。
以上は僕の想像でして、確証はありません。もし、このような解釈をするなら、「確率変数」の「関数(可測写像)としての意味」は薄まっていて、定義域である確率空間に拘っているのは得策ではないでしょう。たぶん(これも確証がないけど)、グラフのノード以外の「もとの確率空間」なんて不要なんでしょう。
僕が「分かんないなー」と感じるのは、フォーマルな定義が曖昧ということじゃなくて、言葉が運用されるときの、フォーマルな定義からの追加やズレが分かんない、ということです。そして、そういう追加やズレは、どこにでもある「慣れれば分かる」ってハナシなのかも、と想像しています。できれば、明文化された説明が欲しいですけどね。
なんで「慣れれば分かる」問題が生じるかと言うと; 知らない言葉達に出会うと定義を調べて、細かい差異にも注意したりします、最初のうちはね。ところが実際の使用場面は、けっこういいがげんなことが多いってことでしょう。
自分のことを考えると、例えば「リスト」と「配列」を区別することがあります。リストは要素の挿入・削除を許すデータ構造で、配列は長さが固定されている、とか。しかし、「配列」という言葉を挿入・削除が自在のリストの意味で使うことも多いです。どんなとき使い分けるのか/使い分けないのか? と聞かれると、「まー、てきとうに」といった答です。
慣れれば慣れるほど、文脈依存やオーバーロードに鈍感になるので、気になってしょうがない時期にブータレておくのも意味があるかも知れません。