このブログの更新は Twitterアカウント @m_hiyama で通知されます。
Follow @m_hiyama

メールでのご連絡は hiyama{at}chimaira{dot}org まで。

はじめてのメールはスパムと判定されることがあります。最初は、信頼されているドメインから差し障りのない文面を送っていただけると、スパムと判定されにくいと思います。

参照用 記事

高校レベルの微積分、こんな書き方はやめて欲しい

表題の「こんな書き方」とは:


F(x) = {\displaystyle\int f(x)dx}

積分には不定積分と定積分があります」は認めるとして、積分区間(上端と下端)が書いてないので、左辺が関数の形をしているので、上記の積分記号は不定積分を表すことになります。

不定積分の意味は、おおよそ「微分の逆」ですが、もう少し正確に記述してみます。

高校レベルだと、扱う関数は RR の連続的微分可能関数が多いでしょうから、そのような関数の集合を次のように定義します。

  • C0(R) := {f:RR | fは連続}
  • C1(R) := {f:RR | fは微分可能で、微分した結果は連続}

D:C1(R)→C0(R) は微分作用素とします。そして、Dの逆像を次のように定義します。

  • For f∈C0(R), Integ(f) := {g∈C1(R) | D(g) = f}

一般的な記法として、Dの逆像(写像ではない!)を D-1 と書くので、

  • Integ(f) = D-1(f) ⊆C1(R)

g0∈Integ(f) を任意に選んで固定します。すると、

  • Ineg(f) = {g∈C1(R) | 適当な実数Cが在って、g = g0 + C と書ける}

さて、冒頭の表現の解釈ですが、

  1. Fは、関数 g0∈Integ(f) を表す。
  2. Fは、関数の集合 Integ(f) を表す。

どっちなんでしょうか? 意味がハッキリするように書くなら:

  •  F(x) = {\displaystyle\int_0^x f(t)dt}
  •  F = \{g \mid g(x) = {\displaystyle\int_0^x f(t)dt} + C \mbox{ where }C\in {\bf R}\}

積分の下端を0に固定した関数を g0 として選んでいます。

上の2つの書き方は意味がハッキリしていると思いますが、ちょうど中間のような書き方をよく見ます。


F(x) = {\displaystyle\int_0^x f(t)dt} + C

冒頭の書き方よりマシに見えますが、マシに見えてしまうぶんだけ余計タチが悪いかも知れません。結局、意味不明のままです。以下のどれ?

  1. F∈Integ(f) であり、Fは、Cを固定した特定の関数  \lambda x\in{\bf R}.({\displaystyle\int_0^x f(t)dt} + C) を表す。
  2. Fは集合Integ(f)上を走る変数(関数を表す変数)であり、特定の関数を表すわけではない。
  3. F = Integ(f) であり、Fは関数の集合を表す。