このブログの更新は Twitterアカウント @m_hiyama で通知されます。
Follow @m_hiyama

メールでのご連絡は hiyama{at}chimaira{dot}org まで。

はじめてのメールはスパムと判定されることがあります。最初は、信頼されているドメインから差し障りのない文面を送っていただけると、スパムと判定されにくいと思います。

参照用 記事

座標ってなーに?

ジョニーが「任意の多様体に大域的に座標を与えることはできるか?(無理)」で座標の話をしてます。最後に引用されているtwitter発言群のなかに、僕が言ったことも入っています。そこにおいて、「普通は」「多数派では」と断りを入れているのは、「論理的であるかのごとくに装って、根拠のないイチャモンをつける 13+2 の方法」のその1「定義の違いを真偽の議論にすり替える」になるのを警戒してです。

で、普通の/多数派の、なおかつ多様体の文脈に限っての「座標」の定義ですが; おおざっぱに言って、Uが多様体Mの開集合、Dがユークリッド・数空間Rnの開集合のとき、UとDのあいだの同相写像のことです。整数nが多様体Mの次元になります。連結成分ごとに違う次元を持つこともできますが、Mのどの場所でも次元は一律にnと仮定することが多いでしょう。

上記の定義を逸脱しても、言葉として「座標」を使うことはあるのか? と言えば、それはあります。例えば、2次元単位球面を {(x, y, z)∈R3 | x2 + y2 + z2 = 1} と定義したら、(x, y, z) を座標と言うかもしれません。また、2次元射影空間を標準的に構成したとき、(x, y, z)((0, 0, 0)は除く)をけっこう座標と言っていると思います。

2次元単位球面の例では、x, y, z を自由に取れなくて x2 + y2 + z2 = 1 という条件で縛られます。2次元射影空間の例では、x, y, z を自由に取れますが、x, y, z と別の x', y', z' が同じ点を表すことがあります。前者の例では、M→R3 という埋込み(単射)が仮定されており、後者の例では、(R3\{(0, 0, 0)})→M という射影(全射)が仮定されています。

最初の(標準的な)座標の定義で、M = U ならば、M→D という同相写像があることになり、M自体がユークリッド・数空間の開集合と同相になります。この座標はM全体で定義されているので大域的です。標準的な定義を使うと:

  • Mに大域的な座標が取れる ⇔ Mはユークリッド・数空間の開集合と同相

同相写像ではなくて、M→D という埋め込みとか、D→M という射影とかを許すなら、Mに大域的な「座標もどき」が取れても、Mがユークリッド・数空間の開集合と同相とは限りません。

という事情まで考慮の上で、同相ではない写像(埋込みや射影)で結ばれたユークリッド・数空間の点(スカラーの組)を「座標」と呼ぶのは別にかまわないでしょう。混乱や誤解を招かないように注釈すれば、ですが。