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参照用 記事

ホロノーム座標 補遺:バンドル座標

一言:僕は元気です。

ホロノーム座標」への追加記事です。接バンドル(または余接バンドル)のホロノーム座標は、バンドル座標の特殊なものです。ホロノーム座標で特徴的なことは、バンドル底空間の局所座標からバンドル全空間の局所座標(それがホロノーム座標)が一意的に決まってしまうことです。一般には、底空間の座標とは別に、ファイバー用の座標も必要です。


E = (E, M, π) を(ベクトルバンドルとは限らない)ファイバーバンドルとします。ファイバーバンドル(単にバンドルとも呼ぶ)の定義から、局所自明化 t:E|U→U×Y があります。ここで:

  1. Uは、底空間Mの開集合。自明化近傍〈{trivialization | trivializable} neightborhood〉と呼ぶ。
  2. Yは、典型ファイバー〈typical {fiber | fibre}〉と呼ぶ多様体
  3. tは、多様体の同型射。局所自明化〈local trivialization〉と呼ぶ。

自明化近傍Uを、底空間の座標xの座標近傍(def(x)のこと)でもあるように取ります。つまり、U = def(x) 。

典型ファイバーは、局所自明化ごとに違ってもかまいません(ただし、通常はすべて同型と仮定する)。例えば、p∈U に対して Y = Ep として典型ファイバーを指定します。典型ファイバーYも多様体なので、局所座標 y:Y⊇def(y)→Rk が取れます。kはファイバー次元(Yの次元)です。

状況を図式にしてみると次のようになります。iは包含写像で四角形は可換になります。

\require{AMScd}
\begin{CD}
E @<{i}<<  E|_U   @>{t}>>  U\times Y    @<{i}<< U\times V    @>{x\times y}>> {\bf R}^n \times {\bf R}^k \\
@V{\pi}VV  @V{\pi}VV       @V{\pi_1}VV          @V{\pi_1}VV                  @V{\pi_1}VV \\
M @<{i}<<  U      @=       U            @=      U            @>{x}>>         {\bf R}^n \\
\end{CD}

次の2つの図式を考えます。


\begin{CD}
E    @<{i}<< E|_U  @>t>> U\times Y \\
\end{CD} \\
\:\\
\begin{CD}
U\times Y    @<{i}<< U\times V @>{x\times y}>> {\bf R}^n \times {\bf R}^k \\
\end{CD} \\

これを、部分写像として解釈すれば:

  • t:E⊇E|U→U×Y
  • x×y:U×Y⊇U×V→Rn×Rk

cod(t) = dom(x×y) なので結合可能で、

  • (x×y)\circt:E⊇→Rn×Rk

こうして得られた (x×y)\circt がバンドル全空間Eの局所座標になります。座標近傍 def((x×y)\circt) は、t-1(U×V) です。この t-1(U×V) は、U×V のtによる逆像と解釈しても、U×V の逆写像 t-1による像と解釈しても同じです。

t = < t1, t2> として v∈E|U に対して、

  • ((x×y)\circt)(v) = (x(t1(v)), y(t2(v))

先の図式の可換性から x(t1(v)) = x(π(v)) が言えるので、

  • ((x×y)\circt)(v) = (x(π(v)), y(t2(v))

以上の手順で得られた (x×y)\circt:E⊇t-1(U×V)→Rn×Rk を、底空間の座標xと典型ファイバーの座標yから得られたバンドル座標〈bundle coordinate〉(あるいはバンドルチャート〈bundle chart〉)と呼びます。ホロノーム座標の場合は、典型ファイバーの座標として単一の大域座標を取れるのでした。