「僕らが大好きだったWebはなくなるのかもしれない」において、「Webページ/Webサイトから構成される従来型のWebはなくなるのではないか」と述べました。
ここで、極端な想定として「Webブラウザが消滅してしまった」としましょう。これは、あくまで想定であって、未来予測をしているわけではありません。
汎用のブラウザに代わるのは、個別の機能を持ったアプリ群です。これらのアプリ(の多く)は、通信のインフラとしてインターネットを利用するので、インターネットはやはり必須で重要な存在です。
ブラウザがなければ、Webページから構成されるWebサイトは意味を持ちません。Webサイトはアプリのリモートバックエンドに置き換えられ、Webページはアプリの状態に取って代わられます。
アプリとそのリモートバックエンドは通信をするのでプロトコルが必要です。そのプロトコルは、HTTP(の発展形)がやはり主流でしょうが、目的に応じて他のプロトコルが採用される可能性が高まるでしょう。HTTPのような転送プロトコルの上にAPI(アプリケーションレベルのプロトコル)が定義されます。アプリとリモートバックエンドは、API呼び出しによって対話します。
従来型のWebでは、HTML文書の取り寄せとフォームデータの送り出しにトラフィックの多くを消費していました。それに対して、ブラウザがなくなった世界では、API呼び出しがトラフィックを消費します。API呼び出しで転送されるデータがHTMLである必然性はなく、扱いやすいJSONや効率的なバイナリが採用されるでしょう。
図の矢印がAPIによるやり取りであり、インターネット上をAPI呼び出しが飛び交います。
UI/UXはアプリによって実現されるので、HTMLやCSSによるWebデザインもなくなります。アプリのGUIの設計・制作がデザインです。とはいえ、APIにより転送されるデータに、表示の方法やヒントは含まれるかもしれません。それがタグやプロパティの形式をとることはあるでしょう。
URIは、リモートバックエンド(APIプロバイダー)のエンドポイント識別子とAPI呼び出しのパラメータ(の一部)をエンコードした文字列です。パラメータの埋め込み方がクエリー文字列かパスの一部かは好みの問題でしょう。パラメータは識別子ではないので、URIがパーマネントであることは期待できません。メッセージングにおいては、メッセージは転送されるものであって、蓄積されて識別子を持つとは限りません。
以上はあくまで想定です。現実的に、ブラウザがなくなってしまうなんて考えにくいです。しかし、ブラウザという汎用ソフトウェアの重要性が相対的に低下するのは確からしく思えます。となれば、ブラウザから見るWebサイト/Webページの存在意義も相対的に低下するでしょう。「ブラウザが消滅」は単なる仮定(事実ではない)ですが、「APIベースのWeb」がWeb全体のなかで占める割合が高くなるだろうとは思います。その「APIベースのWeb」は、かつて構想されたWS-*の体系などとは全然違うものになりそうです。