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関手のデカルト射とファイバー付き圏

ファイバー付き圏〈{fibred | fibered} category〉は、圏論で重要な概念です。ファイバー付き圏の実体は(圏ではなくて)関手です。とある性質を持つ持別な関手がファイバー付き圏です。「とある性質」を記述するためには、関手に伴うデカルト射という概念を使います。このデカルト射が、あまり分かりやすくありません。そのため、ファイバー付き圏(という名の関手)も分かりにくくなっています。

デカルト射がある程度複雑な概念であることは致し方ありませんが、できるだけ図形的に述べることにより、分かりにくさを多少は緩和できる気がします。“プリズム形で関手ターゲットの図式”という図形的なガジェットを使ってデカルト射を定義してみます。$`
\newcommand{\cat}[1]{ \mathcal{#1} }
\newcommand{\mbf}[1]{ \mathbf{#1} }
\newcommand{\mrm}[1]{ \mathrm{#1} }
%\newcommand{\o}[1]{ \overline{#1} }
\newcommand{\u}[1]{ \underline{#1} }
%\newcommand{\id}{ \mathrm{id} }
\newcommand{\In}{ \text{ in }}
%\newcommand{\On}{ \text{ on }}
\newcommand{\op}{ \mathrm{op}}
\newcommand{\hyp}{\text{-} }
\newcommand{\twoto}{\Rightarrow }
\newcommand{\MC}[1]{\mathscr{#1} }
\newcommand{\SF}{ \overset{\to}{012} } % Simplicial Face (2-dimension)
\newcommand{\SFD}{ \overset{\to}{0'1'2'} } % Simplicial Face Dashed
`$

内容:

2-単体と2-単体図式

2-単体〈2-simplex〉とは三角形のことです。3つの頂点を $`0, 1, 2`$ とします。辺は向きを持っているとして、3本の辺を向きを込めて次のように書きます。

  • $`\vec{01}`$
  • $`\vec{12}`$
  • $`\vec{02}`$

3つの辺で囲まれた三角形領域自体は $`\SF`$ と書きます。

頂点を0次元セル〈0-dimensional cell〉、辺を1次元セル〈1-dimensional cell〉、面〈領域〉を2次元セル〈2-dimensional cell〉とも呼びます。2-単体の組み合わせ的な定義は、各次元のセルの集合とセルのあいだの接続関係〈incidence relation〉で定義されます。今回は、細かい定義は不要なので、これ以上の説明はしません。

注意すべきは、「単体」「セル」「面」などの言葉が、場面・状況により色々な意味で使われることです。ここでの「単体」「セル」は、あくまでここで使うローカルな用法です。他の文脈では別な意味を持つでしょう。

上記で説明した2-単体を $`\Delta^2`$ と書きます。各次元のセルの集合は以下のように書きます。

  • $`|\Delta^2|_0 := \{0, 1, 2\}`$ (3個の頂点)
  • $`|\Delta^2|_1 := \{\vec{01},\vec{12}, \vec{02}\}`$ (3本の辺)
  • $`|\Delta^2|_2 := \{ \SF \}`$ (1枚の面〈領域〉)

2-単体の各次元のセルに、圏 $`\cat{C}`$ の対象(0次元セル)、射(1次元セル)、射のあいだの等式(2次元セル)を対応させる写像を2-単体図式〈2-simplex diagram〉と呼びます。$`\cat{C}`$ に値をとる2-単体図式 $`\mrm{D} : \Delta^2 \to \cat{C}`$ の値割り当て〈value assignmet〉は次のように書けます。

  • $`\mrm{D}(0) := A`$
  • $`\mrm{D}(1) := B`$
  • $`\mrm{D}(2) := C`$
  • $`\mrm{D}\left(\vec{01}\right) := (f: A\to B)`$
  • $`\mrm{D}\left(\vec{12}\right) := (g: B\to C)`$
  • $`\mrm{D}\left(\vec{02}\right) := (h: B\to C)`$
  • $`\mrm{D}\left(\SF\right) := (\alpha :: f;g \twoto h: A\to C)`$

最後の $`\mrm{D}\left( \SF \right)`$ は、等式 $`f;g = h`$ ですが、2-射の形式で書いています。

このように定義された2-単体図式 $`\mrm{D}`$ は、$`\cat{C}`$ 内の可換三角形と同じものです。$`\mrm{D}`$ は以下のようにも書けます。

$`\quad \xymatrix{
{}
& B \ar[dr]^g
&{}
\\
A \ar[ur]^f \ar[rr]_h
&{}
&C
}\\
\quad \text{commutative }\In \cat{C}
`$

関手ターゲットの図式

図式の域となる図形(例えば2-単体)を、その図式の形状〈shape〉と呼びます。この意味での「形状」は「域」と同義語です。図式の余域である圏は、その図式のターゲット圏〈target category〉と呼びます。前節の2-単体図式は、2-単体 $`\Delta^2`$ を形状として、圏 $`\cat{C}`$ をターゲット圏とする図式、つまり $`\Delta^2`$-shaped $`\cat{C}`$-targeted diagram です。

ターゲットが圏ではなくて関手である図式を考えます。そのためには、セルを二種類に分類します。圏の構成素に対応するセルをc-セル〈c-cell〉('c' は "category" から)、関手の値割り当て〈value assignment〉に対応するセルをf-セル〈f-cell〉('f' は "functor" から)と呼ぶことにします。

c-セルは、前節でセルと呼んでいたものなので特に説明することはありません。0次元のf-セルは、0次元のc-セルと同じです。1次元のf-セルは、矢印 $`\mapsto`$ で描くことにします。1次元f-セルには、関手 $`F`$ の“対象の値割り当て” $`A \mapsto F(A)`$ に対応させます。

2次元のf-セル(とその境界)は、次のような四角形として描きます。

$`\quad \xymatrix{
0 \ar[r] \ar@{|->}[d]
& 1 \ar@{|->}[d]
\\
2 \ar[r]
& 3
}`$

この2次元f-セルと境界(c-セルも混じる)が作る形状に、ターゲット関手 $`F:\cat{C} \to \cat{D}`$ の“射の値割り当て”を対応付けます。その対応付けが関手ターゲットの図式〈functor-targeted diagram〉(の一例)です。上の四角形を形状とする図式 $`\mrm{D}`$ の対応付けは次のように書けます。

  • $`\mrm{D}(0) := (A \In \cat{C})`$
  • $`\mrm{D}(1) := (B \In \cat{C})`$
  • $`\mrm{D}\left(\vec{01}\right) := (f:A \to B \In \cat{C})`$
  • $`\mrm{D}(2) := (F(A) \In \cat{D})`$
  • $`\mrm{D}(3) := (F(B) \In \cat{D})`$
  • $`\mrm{D}\left(\vec{23}\right) := (F(f):F(A) \to F(B) \In \cat{D})`$

$`\mrm{D}\left(\overset{\mapsto}{02}\right), \mrm{D}\left(\overset{\mapsto}{13}\right)`$ は、関手 $`F`$ の“対象の値割り当て”です。

  • $`\mrm{D}\left(\overset{\mapsto}{02}\right) := (A \mapsto F(A))`$
  • $`\mrm{D}\left(\overset{\mapsto}{13}\right) := (B \mapsto F(B))`$

2次元f-セルである四角形領域は、関手 $`F`$ の“射の値割り当て”となります。2次元f-セルを $`\overset{\mapsto}{02}\overset{\mapsto}{13}`$ と書くなら:

  • $`\mrm{D}\left( \overset{\mapsto}{02}\overset{\mapsto}{13} \right) := (f \mapsto F(f) )`$

$`\cat{S}`$ が、c-セルとf-セルが混じった図形であるとき、$`\cat{S}`$ を形状〈域〉として、関手 $`F:\cat{C}\to\cat{D}`$ をターゲット〈余域〉とする関手ターゲット〈functor-targeted〉の図式 $`D:\cat{S} \to F`$ を定義できます。特に、今ここで問題にする関手ターゲットの図式は、形状がプリズムである図式です。次節でプリズムについて述べます。

プリズム形で関手ターゲットの図式

プリズム〈prism〉は以下のような図形です。

$`\quad \xymatrix{
0 \ar[rr] \ar[dr] \ar@{|->}[dd]
&{}
&1 \ar[dl] \ar@{|->}[dd]
\\
{}
& 2 \ar@{|->}[dd]
&{}
\\
{0'} \ar[rr] \ar[dr]
&{}
&{1'} \ar[dl]
\\
{}
&{2'}
&{}
}`$

頂点〈0次元セル〉の集合は:

$`\quad \{0, 1, 2, {0'}, {1'}, {2'} \}`$

これらの頂点達は、上側の〈天井の〉2-単体 $`\Delta^2`$ と下側の〈床の〉2-単体 $`{\Delta'}^2`$ を0次元境界になります。6本の1次元c-セルと縦方向に3本の1次元f-セルがあります。側面の3つの面(四角形)は、c-セルとf-セルを境界に持つ2次元f-セルです。

$`F:\cat{C} \to \cat{D}`$ を関手として、プリズムから $`F`$ への図式〈プリズム形で$`F`$-ターゲットの図式 | prism-shaped $`F`$-targeted diagram〉 $`\mrm{D}`$ の値割り当ては次のようになります。

  • $`\mrm{D}(0) := ( A \In \cat{C})`$
  • $`\mrm{D}(1) := ( B \In \cat{C})`$
  • $`\mrm{D}(2) := ( C \In \cat{C})`$
  • $`\mrm{D}\left(\vec{01}\right) := (f: A \to B \In \cat{C})`$
  • $`\mrm{D}\left(\vec{12}\right) := (g: B \to C \In \cat{C})`$
  • $`\mrm{D}\left(\vec{02}\right) := (h: A \to C \In \cat{C})`$
  • $`\mrm{D}\left(\SF\right) := (\alpha :: f;g \twoto h : A\to C \In \cat{C})`$
  • $`\mrm{D}(0') := ( F(A) \In \cat{D})`$
  • $`\mrm{D}(1') := ( F(B) \In \cat{D})`$
  • $`\mrm{D}(2') := ( F(C) \In \cat{D})`$
  • $`\mrm{D}\left(\vec{0'1'}\right) := ( F(f): F(A) \to F(B)\In \cat{D})`$
  • $`\mrm{D}\left(\vec{1'2'}\right) := ( F(g): F(B)\to F(C) \In \cat{D})`$
  • $`\mrm{D}\left(\vec{0'2'}\right) := ( F(h) : F(A) \to F(C) \In \cat{D})`$
  • $`\mrm{D}\left(\SFD\right) := (\beta :: F(f); F(g) \twoto F(h) : F(A) \to F(C) \In \cat{D})`$

縦方向のf-セルには、関手 $`F`$ の対象・射の値割り当て〈value assigment〉を対応付けます(割り当てを割り当てる)。

天井の2-単体を形状とする2-単体図式は、圏 $`\cat{C}`$ の可換三角形となり、床の2-単体を形状とする2-単体図式は、圏 $`\cat{D}`$ の可換三角形となります。

プリズム形の $`F`$-ターゲットの図式 $`\mrm{D}`$ は以下のように描けますが、全体が単一の圏内に収まっているわけではなくて、上側の天井部分は圏 $`\cat{C}`$ 内に描かれ、下側の床部分は圏 $`\cat{D}`$ 内に描かれています。三角形内のイコール記号はその三角形の可換性を示します。

$`\quad \xymatrix{
A \ar[rr]^f \ar[dr]_h \ar@{|->}[dd]
&{} \ar@{}[d]|{\alpha\, =}
&B \ar[dl]^g \ar@{|->}[dd]
\\
{}
& C \ar@{|->}[dd]
&{}
\\
{F(A)} \ar[rr]^{F(f)} \ar[dr]_{F(h)}
&{} \ar@{}[d]|{\beta\,=}
&{F(B)} \ar[dl]^{F(g)}
\\
{}
&{F(C)}
&{}
}`$

一般に、$`\cat{S}`$ がc-セルとf-セルが混じった図形で、$`F`$ が関手のとき、関手をターゲットとする図式は $`\mrm{D}:\cat{S} \to F`$ と書いてましたが、これはもはや関手ではないので、明示的に図式〈diagram〉であることを示すために以下のように波線矢印を使うことにします。

$`\quad \mrm{D} : \cat{S} \leadsto F`$

この節で定義したプリズムを $`\mbf{Prism}`$ とすると、プリズム形で$`F`$-ターゲットの図式〈prism-shaped $`F`$-targeted diagram〉 $`\mrm{D}`$ は:

$`\quad \mrm{D} : \mbf{Prism} \leadsto F`$

関手 $`F`$ の域圏・余域圏も明示的に書くなら:

$`\quad \mrm{D} : \mbf{Prism} \leadsto (F: \cat{C} \to \cat{D})`$

欠損プリズム形図式の充填

前節のプリズム $`\mbf{Prism}`$ から、1次元c-セル $`\vec{01}`$ を取り除いた図形を欠損プリズム〈deficient prism〉と呼ぶことにします。欠損プリズムを $`\mbf{Prism}^-`$ と書きます。右肩のマイナスは、1次元c-セルが1本抜けていることを示唆します。$`\vec{01}`$ が存在しないと、$`0, 1, 0', 1'`$ を頂点とする四角形領域〈側面〉も在りません。床の三角形と2つの側面四角形はあります。

$`\quad \xymatrix{
0 \ar[dr] \ar@{|->}[dd]
&{}
&1 \ar[dl] \ar@{|->}[dd]
\\
{}
& 2 \ar@{|->}[dd]
&{}
\\
{0'} \ar[rr] \ar[dr]
&{}
&{1'} \ar[dl]
\\
{}
&{2'}
&{}
}`$

欠損プリズムはプリズムの部分図形なので、次のような包含写像があります。

$`\quad \mbf{Prism}^- \hookrightarrow \mbf{Prism}`$

$`\mbf{Prism}^-`$ 上で定義された図式 $`\mrm{E}`$ と、$`\mbf{Prism}`$ 上で定義された図式 $`\mrm{D}`$ があるとして、次の状況を考えます。

$`\quad \xymatrix{
{\mbf{Prism}^-} \ar@{~>}[dr]^{\mrm{E}} \ar@{^{(}->}[dd]
& {}
\\
{}
&{(F:\cat{C} \to \cat{D})}
\\
{\mbf{Prism}} \ar@{~>} \ar@{~>}[ur]_{\mrm{D}}
&{}
}\\
\quad \text{commutative}
`$

このようなとき、図式 $`\mrm{D}`$ は図式 $`\mrm{E}`$ の拡張〈extension〉といいます。拡張は、欠損していた $`\vec{01}`$ の値 $`\mrm{D}\left(\vec{01}\right)`$ だけで決まります。$`\mrm{D}\left(\vec{01}\right)`$ をフィラー〈filer〉と呼びます。図式 $`\mrm{D}`$ は、図式 $`\mrm{E}`$ をフィラー $`\mrm{D}\left(\vec{01}\right)`$ で充填〈filling〉して作った図式です。

欠損プリズム上の〈欠損プリズムを形状とする〉図式 $`\mrm{E}`$ が、一意的にプリズム上の拡張を持つとき、一意拡張性〈unique extension property | 一意充填性 | uniqu filling property〉を持つといいます。

フィラー $`\mrm{D}\left(\vec{01}\right)`$ は、床の辺〈1次元c-セル〉の値 $`\mrm{E}\left(\vec{0'1'}\right)`$ の持ち上げ〈lift〉ともいうので、一意持ち上げ性〈unique lifting property〉ともいいますが、「一意持ち上げ性」は別な状況で使う言葉として、ここでは使わないほうがいいと思います。

欠損プリズム上の図式 $`\mrm{E}`$ は、$`\vec{01}`$ の値を未知数とする方程式とみなせます。フィラー $`\mrm{D}\left(\vec{01}\right)`$ は方程式の解です。一意拡張性〈一意充填性〉は、方程式の解がただひとつ存在することを意味します(「圏論におけるフレーム充填問題」「フレーム充填問題と解空間関手」参照)。

関手のデカルト射

関手 $`F:\cat{C}\to \cat{D}`$ があるとき、$`\cat{C}`$ の射 $`f`$ が($`F`$ に関して)デカルト射〈Cartesian morphism〉であるとは次のことです。

  • $`\mrm{E}\left(\vec{12}\right) = f`$ である図式 $`\mrm{E}:\mbf{Prism}^- \leadsto F`$ は一意拡張性〈一意充填性〉を持つ。

これだけでは、この定義がなぜ/どこから出てきたのかサッパリわかりません。おおよそデカルト射は、関手 $`F`$ に関して“水平方向の射”になります。関手 $`F`$ は、圏 $`\cat{C}`$ をファイバー $`F^{-1}(Y)`$ 達に分割しますが、ファイバーの方向を垂直方向としたときに、$`\cat{D}`$ の方向と同じ向きに走る射が“水平方向の射”です -- やっぱり、サッパリわからないかも知れませんが。

由来や動機はともかくとして、関手 $`F`$ のデカルト射という概念は定義できたので、その全体を $`\mrm{Cart}(F)`$ と書くことにしましす。$`\mrm{Cart}(F) \subseteq \mrm{Mor}(\cat{C})`$ なので、$`\mrm{Cart}(F)`$ は $`\cat{C}`$ の射のクラス〈class of morphisms〉です。

今詳しく説明はしませんが、次の事実は重要です。

  • 圏 $`\cat{C}`$ のアロー圏 $`\mrm{Arr}(\cat{C})`$ から $`\cat{C}`$ への余域関手〈codomain functor〉を $`\mrm{Cod} : \mrm{Arr}(\cat{C}) \to \cat{C}`$ とする。関手 $`\mrm{Cod}`$ のデカルト射は、$`\cat{C}`$ 内のプルバック四角形である。

ファイバー付き圏

関手 $`P:\cat{E} \to \cat{B}`$ が次の条件を満たすときファイバー付き圏〈{fibred | fibered} category〉といいます。

  • $`\cat{B}`$ の射 $`u`$ と、$`P(Y) = \mrm{cod}(u)`$ である対象 $`Y\in |\cat{E}|`$ に対して、$`P(f) = u`$ かつ $`\mrm{cod}(f) = Y`$ である($`P`$ の)デカルト射 $`f:X \to Y \In \cat{E}`$ が存在する。

上記の条件のなかに出てくるデカルト射 $`f`$ を、$`u`$ の $`Y`$ におけるデカルト持ち上げ〈Cartesian lift〉と呼びます。ファイバー付き圏 $`P`$ では、上記のような $`u, Y`$ に対してデカルト持ち上げが存在するのです。

フィバー付き圏の文脈では、関手の域圏をトータル圏〈total category〉、関手の余域圏をベース圏〈base category〉、関手自体を射影〈projection〉と呼びます。

2つのファイバー付き圏 $`P, Q`$ が同じベース圏を持つときは、$`P`$ から $`Q`$ への準同型射〈homomorphism〉の定義は次の図式で与えられます。

$`\quad \xymatrix{
{\cat{E}} \ar[dr]_P \ar[rr]^\Phi
&{}
&{\cat{F}} \ar[dl]^Q
\\
{}
&{\cat{B}}
&{}
}
\quad \text{commutative }\In \mbf{CAT}
`$

三角形は厳密に〈等式により〉可換で、関手 $`\Phi`$ はデカルト射を保存する(デカルト射をデカルト射に移す)関手です。

より一般的な場合に、ファイバー付き圏のあいだの準同型射をどう定義すべきか? は、なかなか難しい問題です。

ファイバー付き圏については、アンジェロ・ヴィストリのテキスト(解説論文)の第3章がよくまとまっています。

このテキストは、20年近く前の記事で紹介しました。

以下の過去記事でも言及しています。

現時点でも、ヴィストリの解説はおすすめできます。