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参照用 記事

多様体上のとある公式: 計算練習

オンライン上の某所にて「次の等式がよくわからん」と:

 \tilde{\varphi} S = \varphi_* \circ S \circ {\varphi_*}^{-1}

解釈を試みてみます。\require{color}%
\newcommand{\R}{{\bf R}}%
\newcommand{\shf}[1]{ \mathscr{#1} }%
\newcommand{\sla}{ \: / \: }%
\newcommand{\In}{\mbox{ in }}%
\newcommand{\hyp}{\mbox{-}}%
\newcommand{\tr}{\mathrm{tr}}%
\newcommand{\Keyword}[1]{\textcolor{green}{#1} }%
\newcommand{\For}{\Keyword{ \mbox{For } } }%
\newcommand{\Define}{\Keyword{\mbox{Define } }}%
\newcommand{\Then}{\Keyword{\mbox{Then } } }%
\newcommand{\Assert}{\Keyword{ \mbox{Assert } } }%
\newcommand{\hom}[1]{ [\!(#1)\!] }%
\newcommand{\where}{ \Keyword{\mbox{ where } } }%

この等式は結局、次の図式の可換性として表現されます。

\require{AMScd}
\begin{CD}
(\shf{T}_M \otimes \shf{T}_M^*)(U) @>{\varphi_* \otimes (\varphi^{-1})^*}>> (\shf{T}_M \otimes \shf{T}_M^*)(\varphi(U)) \\
@V{\hom{\hyp}}VV                                     @VV{\hom{\hyp}}V \\
Hom(\shf{T}_M, \shf{T}_M)(U) @>{Hom( (\varphi_*)^{-1}, \varphi_*)}>> Hom(\shf{T}_M, \shf{T}_M)(\varphi(U))
\end{CD}

内容:

記号の約束(状況設定)

  1. M : (なめらからな)多様体
  2. x, y\in M多様体の点
  3. U, V\subseteq M : 開集合
  4. \varphi, \psi:M \to M : (なめらかな)可逆写像
  5.  TM : 接バンドル
  6.  T^* M : 余接バンドル
  7. T\varphi:TM \to TM : 接写像
  8. T_x\varphi:T_x M \to T_{\varphi(x)}M : 接写像のファイバー、R-線形写像
  9.  \shf{T}_M(U) := \Gamma_M(U, TM) : 接バンドルの U 上の、局所セクション空間、C^\infty_M(U)-加群
  10.  \shf{T}^*_M(U) := \Gamma_M(U, T^*M) : 余接バンドルの U 上の、局所セクション空間、C^\infty_M(U)-加群

書き方の約束

関数〈写像〉への引数渡し〈argument passing〉をすべて丸括弧で書くと、わかりにくいこともあるので次の約束をします。

  1. U 上の局所セクション s の、点 x\in U での値は s_{|x} と書く。実数値関数のときもこの書き方を使う。
  2. C^\infty_M(U)-加群準同型射 \Phi に対して、局所セクション s を引数に渡す場合は \Phi s (併置)または \Phi[s] と書く。丸括弧 \Phi(s) は使わない。なお、ブラケットは通常のグルーピング括弧としても使う(引数渡し専用ではない)。
    [追記]この規則が一部守られてないところがありました。修正しました(が、完全かどうかは不安)。[/追記]
  3. ベクトルバンドルのファイバーからファイバーへのR-線形写像に対して、ファイバーの要素を渡す場合も上記と同様の書き方を使う。

微分の定義

多様体のあいだの写像 \varphi, \psi:M \to M は、なめらかな可逆写像で、接写像のすべての点でのファイバーは線形同型写像だとします。\varphi, \psi:M \to M に対して、“\varphi微分 \varphi_*”と“ \psi の双対微分 \psi^*”を定義します。

上下のアスタリスクを使う書き方は僕は嫌いですが(微分らしく見えないし、色々と紛らわしい!)、よく使われています。微分/双対微分も開集合 U に依存しますが、ここでは明示しません(暗黙に適当な開集合上で考える*1

緑色のキーワードを使った半形式的記法で定義します。見ればわかると思います。まずは“微分”:


\For X\in \shf{T}_M(U), y\in \varphi(U)\\
\Define (\varphi_* X)_{|y} := (T_x \varphi) [X_{|x}]  \where x = \varphi^{-1}(y) \\
\Then \varphi_* X \in \shf{T}_M(\varphi(U))

この定義は、\varphi が可逆であることに依存しています(一般性に欠ける)。以下で、可逆性に依存した議論をしますが、いちいち注意はしません。さて、次に“双対微分”:


\For \tau\in \shf{T}_M(\psi(U)), x\in U\\
\Define (\psi^* \tau)_{|x} := (T_x \psi)^\star [\tau_{|y}]  \where y = \psi(x)\\
\Then \psi^* \tau \in \shf{T}_M^*(U)

ここで、アスタリスクではない星印が付いた (T_x \psi)^\star は、接写像のファイバーの双対線形写像です。ベクトル空間と線形写像の双対は黒い星印 \star にします、アスタリスクを使い過ぎなので。

\psi = \varphi^{-1} だとして、開集合 V = \varphi(U) 上の双対微分を考えると:

  • \psi^* = (\varphi^{-1})^*: \shf{T}^*_M(\varphi^{-1}(V)) \to \shf{T}_M^*(V)

V = \varphi(U), U = \varphi^{-1}(V) なので、

  •  (\varphi^{-1})^*: \shf{T}^*_M(U) \to \shf{T}_M^*(\varphi(U))

\varphi_*,\: (\varphi^{-1})^* が定義される領域〈開集合〉が一緒なので、次のようなテンソル積は定義可能です。

  •  \varphi_* \otimes (\varphi^{-1})^* :\shf{T}_M(U) \otimes_{C^\infty_M(U)} \shf{T}^*_M(U)) \to \shf{T}_M(\varphi(U)) \otimes_{C^\infty_M(\varphi(U) )} \shf{T}_M^*(\varphi(U))

テンソル積をとるときの可換環 C^\infty_M(U),\: C^\infty_M(\varphi(U)) は同型なので、暗黙に同一視しています。

冒頭の謎の等式のなかに出てくる \tilde{\varphi} はこのテンソル積です。

  •  \tilde{\varphi} := \varphi_* \otimes (\varphi^{-1})^*

より詳しく書き下すなら:


\For X\in \shf{T}_M(U), \omega\in \shf{T}^*_M(U)\\
\Define \tilde{\varphi}[X\otimes \omega] := 
   (\varphi_*[X]) \otimes ( (\varphi^{-1})^*[\omega] ) \\
\Then \tilde{\varphi}[X\otimes \omega] \in \shf{T}_M(\varphi(U)) \otimes_{C^\infty_M(\varphi(U))} \shf{T}_M^*(\varphi(U))

テンソル加群とホム加群

加群に関する記法の約束だけしておきます。

R可換環とします。A, BR 上の加群とします。R が可換なので、加群は両側加群と考えます。

A, BR 上のテンソル積は A\otimes_R B と書きます。混乱の恐れがなければ単に A \otimes B とも書きます。

A から B へのR-加群準同型射の全体に加群構造を入れたR-加群Hom_R(A, B) と書きます。混乱の恐れがなければ単に Hom(A, B) とも書きます。

f:A \to A', g:B \to B' が2つの加群準同型射ならば、射のテンソル

  • f\otimes g:A\otimes B \to A'\otimes B'

が定義できます。

h:A' \to A, g:B \to B' が2つの加群準同型射ならば、射のホム

  •  Hom(h, g):Hom(A, B) \to Hom(A', B')

が定義できます。h方向が逆なことに注意してください。具体的な定義は:


\For u\in Hom(A, B)\\
\Define Hom(h, g)[u] := g \circ u\circ h \\
\Then Hom(h, g)[u] \in Hom(A', B')

ここまで、登場するすべての加群の係数環は同じ R としてきましたが、次の状況を考えます。

  • A, BR 上の加群
  • A', B'R' 上の加群
  • 環の同型 r:R' \to R がある。

このとき、射 f, g, h は、r:R' \to R, r^{-1}:R \to R' を介して加群準同型射になっているとします。この状況でも、射のテンソル積/ホムを考えることができます。

  • f\otimes g:A\otimes_R B \to A'\otimes_{R'} B'
  •  Hom(h, g):Hom_R(A, B) \to Hom_{R'}(A', B')

R, R' は環として同型なので、同一視してしまうこともあります。前節の C^\infty_M(U),\: C^\infty_M(\varphi(U)) の同一視がその例です。

図式のセットアップ

加群テンソル積やホムを、領域〈開集合〉ごとに作ることを、次のような記法で表現することにします。

  • (\shf{T}_M \otimes \shf{T}_M^*)(U) :=   \shf{T}_M(U) \otimes_{C^\infty_M(U)} \shf{T}_M^*(U)
  • Hom(\shf{T}_M, \shf{T}_M)(U) := Hom_{C^\infty_M(U)}(\shf{T}_M(U), \shf{T}_M(U) )

次のような加群準同型射があります。

  •  \varphi_* : \shf{T}_M(U)  \to  \shf{T}_M(\varphi(U))
  •  (\varphi^{-1})^* : \shf{T}_M^*(U) \to \shf{T}_M^*(\varphi(U))
  •  (\varphi_*)^{-1} : \shf{T}_M(\varphi(U)) \to \shf{T}_M(U)

これらを組み合わせて次の図式を考えることができます(まだ図式が可換かどうかは分かりません)。

\require{AMScd}
\begin{CD}
(\shf{T}_M \otimes \shf{T}_M^*)(U) @>{\varphi_* \otimes (\varphi^{-1})^*}>> (\shf{T}_M \otimes \shf{T}_M^*)(\varphi(U)) \\
@V{\hom{\hyp}}VV                                     @VV{\hom{\hyp}}V \\
Hom(\shf{T}_M, \shf{T}_M)(U) @>{Hom( (\varphi_*)^{-1}, \varphi_*)}>> Hom(\shf{T}_M, \shf{T}_M)(\varphi(U))
\end{CD}

ここで出てきた凹レンズ括弧は、テンソル加群とホム加群の同型を与える加群準同型射で、次のように定義します。


\For X\in \shf{T}_M(U), \omega\in \shf{T}_M^*(U)\\
\Define \hom{ X\otimes \omega } := \lambda\, Y\in \shf{T}_M(U). \langle \omega \mid Y \rangle X\\
\Then \hom{ X\otimes \omega } \in Hom_{C^\infty_M(U)}(\shf{T}_M(U), \shf{T}_M(U))

定義内の、\lambda\, \cdots はラムダ記法です。\langle \hyp \mid  \hyp \rangle は双対ペア (\shf{T}_M^*(U), \shf{T}_M(U)) のペアリングで、加群の意味で双線型形式です。

3つの補題

前節の図式の可換性を示すための補題を準備します。

  1. 逆関数微分公式
  2. スカラー倍公式
  3. 写像に沿った双対性
逆関数微分公式

今使っている記法で書くと、逆関数微分公式は次の形になります。(別な記法では別な表現になります)


(\varphi^{-1})_* = (\varphi_*)^{-1} : \shf{T}_M(\varphi(U)) \to \shf{T}_M(U)

噛み砕いて書けば:

 
\For W\in \shf{T}_M(\varphi(U)), x\in U\\
\Assert ( (\varphi^{-1})_*[W] )_{|x} = ( (\varphi_*)^{-1}[W])_{|x}

微分を定義している接写像のファイバーを確認すると:

  •  T_y(\varphi^{-1}) : T_y M \to T_x M \where x = \varphi^{-1}(y)
  •  T_x \varphi : T_x M \to T_y M \where y = \varphi(x)
  •  (T_x \varphi)^{\dashv} : T_y M \to T_x M \where x = \varphi^{-1}(y)

線形写像の双対に \star を使ったのと同じ理由(区別を付けるため)で、線形写像の逆には \dashv を使っています。((-1)乗記号で混乱する事例は「(-1)乗記号の憂鬱と混乱」参照。)

 W\in \shf{T}_M(\varphi(U)),\; y = \varphi(x),\; x = \varphi^{-1}(y) として、逆関数に関連する以下の式はすべて等しくなります。

  1.  ( (\varphi_*)^{-1} [W])_{|x}
  2.  ( (\varphi^{-1})_* [W])_{|x}
  3.   T_y(\varphi^{-1}) [W_{|y} ]
  4.  (T_x \varphi)^{\dashv}  [W_{|y} ]

逆関数微分公式の証明は割愛します。

スカラー倍公式

写像 \varphi :M → M があると、開集合 V \subseteq M 上の実数値関数(スカラーとも呼ぶ) b\in C^\infty_M(V)U = \varphi^{-1}(V) 上のスカラーに引き戻すことができます。この(プレ結合による)スカラー引き戻しを次にように書きます。

  •  \varphi^\flat[b] := b\circ \varphi
  •  (\varphi^\flat[b])_{|x} := (b\circ \varphi)_{|x} = b_{|\varphi(x)}
  •  \varphi^\flat  : C^\infty_M(V) \to C^\infty_M(\varphi^{-1}(V))
  •  \varphi^\flat  : C^\infty_M(\varphi(U)) \to C^\infty_M(U)

スカラーの引き戻しは \varphi^\ast(b) と書かれることが多いですが、アスタリスクを使い過ぎなのでフラット記号にします。

局所セクション(ベクトル場)のスカラー倍と、写像微分のあいだの関係に次があります。


\For a\in C^\infty_M(U), X\in \shf{T}_M(U) \\
\Assert \varphi_*[a X] = (\varphi^{-1})^\flat [a] \,\varphi_*[X] \mbox{ on }\shf{T}_M(\varphi(U))

これは y\in \varphi(U) に対して両辺の値を計算してみれば分かります。


\quad \mathrm{LeftHandSide}_{|y} \\
= (\varphi_*[a X])_{|y} \\
= (T_x \varphi)[ (a X)_{|x} ] \where x = \varphi^{-1}(y) \\
= (T_x \varphi)[ a_{|x}\, X_{|x} ] \\
= a_{|x} (T_x \varphi)[  X_{|x} ] \\
= a_{|\varphi^{-1}(y)} (T_x \varphi)[  X_{|x} ] \\
= ( (\varphi^{-1})^\flat [a] )_{|y} \, (\varphi_*[X])_{|y} \\
= \mathrm{RightHandSide}_{|y}

写像に沿った双対性

\varphi微分/双対微分に関連して次の2つの加群準同型射がありました。

  •  (\varphi^{-1})^* : \shf{T}_M^*(U) \to \shf{T}_M^*(\varphi(U) )
  •  (\varphi_*)^{-1} : \shf{T}_M(\varphi(U)) \to \shf{T}_M(U)

この2つの加群準同型射は、(加群の意味で)互いに双対な関係にあります。次のような図式で見ると少しは分かりやすいかも知れません。

\xymatrix{
  {}
  & {\shf{T}_M^*(U)} \ar[r]^{(\varphi^{-1})^*} \ar@{.}[dl] \ar@{<-->}[dd]|{\mbox{dual}}
  & {\shf{T}_M^*(\varphi(U) )} \ar@{.}[dr] \ar@{<-->}[dd]|{\mbox{dual}}
  & {}
\\
  {C^\infty_M(U)}
  & {}
  & {}
  & {C^\infty_M(\varphi(U))}
\\
  {}
  & {\shf{T}_M(U)} \ar@{.}[ul]
  & {\shf{T}_M(\varphi(U))} \ar[l]^{(\varphi_*)^{-1}} \ar@{.}[ur]
  & {}
\\
}

双対性を規定する等式〈公式〉は次のようです。


\For \omega \in \shf{T}_M^* (U), W \in \shf{T}_M(\varphi(U)) \\
\Assert \langle (\varphi^{-1})^* [\omega] \mid W \rangle = (\varphi^{-1})^\flat [ \langle \omega \mid (\varphi_*)^{-1} [W]\rangle  ]

y\in \varphi(U) に対する等式は:


\langle (\varphi^{-1})^* [\omega] \mid W \rangle_{|y} = \langle \omega \mid (\varphi_*)^{-1} [W]\rangle_{|\varphi^{-1}(y)}

この等式を計算で確認します。


\quad \mathrm{LeftHandSide}\\
= \langle (\varphi^{-1})^* [\omega] \mid W \rangle_{|y} \\
= \langle ( \varphi^{-1})^* [\omega]_{|y} \mid W_{|y} \rangle \\
= \langle T_y(\varphi^{-1})^\star [\omega_{|x} ] \mid W_{|y} \rangle \where x = \varphi^{-1}(y) \\
= \langle \omega_{|x}  \mid T_y(\varphi^{-1}) [W_{|y}] \rangle ↓逆関数の微分公式\\
= \langle \omega_{|x}  \mid ( (\varphi_*)^{-1} [W] )_{|x} \rangle \\
= \langle \omega \mid (\varphi_*)^{-1} [W]\rangle_{|x} \\
= \langle \omega \mid (\varphi_*)^{-1} [W]\rangle_{|\varphi^{-1}(y)} \\
= \mathrm{RightHandSide}\\

図式の可換性

可換性を示したい図式を再掲します。

\require{AMScd}
\begin{CD}
(\shf{T}_M \otimes \shf{T}_M^*)(U) @>{\varphi_* \otimes (\varphi^{-1})^*}>> (\shf{T}_M \otimes \shf{T}_M^*)(\varphi(U)) \\
@V{\hom{\hyp}}VV                                     @VV{\hom{\hyp}}V \\
Hom(\shf{T}_M, \shf{T}_M)(U) @>{Hom( (\varphi_*)^{-1}, \varphi_*)}>> Hom(\shf{T}_M, \shf{T}_M)(\varphi(U))
\end{CD}

 S\in (\shf{T}_M \otimes \shf{T}_M^*)(U) を取って、二通りの計算をしますが、S が次の形のときを調べれば十分です。


\For X \in \shf{T}_M(U) , \omega \in \shf{T}_M^*(U)\\
\Define S := X\otimes \omega \\
\Then S\in (\shf{T}_M \otimes \shf{T}_M^*)(U)

次の疑問符のところで結果が一致すればいいわけです。

\xymatrix{
  {S = X\otimes \omega} \ar@{|->}[r]^-{\varphi_* \otimes (\varphi^{-1})^*} \ar@{|->}[d]_{\hom{\hyp}}
 & {\varphi_*[X]\otimes (\varphi^{-1})^*[\omega]} \ar@{|->}[d]^{\hom{\hyp}}
\\
 {\hom{X\otimes \omega} } \ar@{|->}[r]^-{Hom( (\varphi_*)^{-1}, \varphi_*)}
 & {?}
}

時計回りの計算と反時計回りの計算をします。


\quad \mathrm{Clockwise} \\
= \hom{ \varphi_*[X]\otimes (\varphi^{-1})^*[\omega] } \\
=  \lambda\, Z\in \shf{T}_M(\varphi(U)).\langle (\varphi^{-1})^* [\omega] \mid Z\rangle ( \varphi_*[X] )\\

\:\\
\quad \mathrm{AntiClockwise} \\
= Hom( (\varphi_*)^{-1}, \varphi_*)[\, \hom{X\otimes \omega} \,] \\
= \varphi_* \circ\hom{X\otimes \omega} \circ (\varphi_*)^{-1} \\
= \varphi_* \circ (\lambda\, Y\in \shf{T}_M(U).\langle \omega \mid Y\rangle X) \circ (\varphi_*)^{-1}

得られた式に、W \in \shf{T}_M(\varphi(U)) を渡してみます。


\quad \mathrm{Clockwise} [W] \\
= ( \lambda\, Z\in \shf{T}_M(\varphi(U)).\langle (\varphi^{-1})^* [\omega] \mid Z\rangle ( \varphi_*[X] ) )[W] \\
= \langle (\varphi^{-1})^* [\omega] \mid W\rangle\,  \varphi_*[X]  ↓双対性の公式 \\
= (\varphi^{-1})^\flat [\langle \omega \mid ( \varphi_*)^{-1} [W] \rangle] \, \varphi_*[X] \\

\:\\
\quad \mathrm{AntiClockwise} [W] \\
= ( \varphi_* \circ (\lambda\, Y\in \shf{T}_M(U).\langle \omega \mid Y\rangle X) \circ (\varphi_*)^{-1}) [W] \\
=  \varphi_* [\, (\lambda\, Y\in \shf{T}_M(U).\langle \omega \mid Y\rangle X) [ (\varphi_*)^{-1}[W] ] \,]\\
=  \varphi_* [\, \langle \omega \mid (\varphi_*)^{-1}[W]\rangle X \,] ↓スカラー倍公式 \\
=  (\varphi^{-1})^\flat[  \langle \omega \mid (\varphi_*)^{-1}[W]\rangle ] \, \varphi_* [X ] \\

時計回りと反時計回りが一致しました。

結論と感想

前節の図式の可換性を等式で書けば次のとおり。

  •  \hom{\tilde{\varphi}[S]} = \varphi_* \circ \hom{S} \circ (\varphi_*)^{-1}

S\hom{S} などを同一視すると冒頭の等式になります。思いのほか、示すのが大変でした。

第2節の「書き方の約束」で述べた変更以外は、だいたい慣用の記法を使いました。オーバーロード(記号の多義的使用)を多少は解消するようにしたのですが、それでもまだオーバーロードが激しくて紛らわしいですね。多様体のあいだの写像により、セクションの空間がどう動くかを最初に整理しておいて、あとは加群の代数的計算に集中するようにすると楽になる気がしました。

気力があれば、記法と計算法をもうちょいマシにしたいところですが、気力がぁ‥‥

*1:上下アスタリスク記法や暗黙の開集合を推奨しているわけではありません。むしろ嫌い、やめて欲しい。今日のところは一般的・多数派な記法に迎合しています。