そのうち(忘れる前に)書きたいとは思っています。
当日に追記はしたのですが、もう少し。
Mがモノイドのとき、M+とM-はMのコピーで、a∈M に対して、a+∈M+ と a-∈M- が存在しています。M+は、モノイドとしてもMとまったく同じ、M-にはMと逆順の積を入れます; つまり、a-b- = (ba)- となります。
M+とM-の単位元どうしを(それだけを)同一視した直和を M+∨M- と表します。M+∨M- は、もはやモノイドではありませんが、M+の要素どうし、M-の要素どうしなら積を定義できます。部分的な積が定義されたモノイドもどきです。
部分的な積であっても畳み込み積の定義には差し障りがないので、「半群の上の畳み込み積」で述べた方法で、二値ブール代数を係数半環とした畳み込み積を導入します。可算無限まで扱いたいなら、「可算な総和可能性」の方法を併用します。係数半環が二値ブール代数なので、足し算はベキ等となります。
そうしてできたベキ等半環には、M+とM-が、生成元として自然に埋め込まれています。生成元のあいだの関係式として次を考えます。
- a-a+ = 1
- a+a- + 1 = 1
これらの関係も考慮した半環をSとしましょう。
上記二番目の等式は、不等号を用いて a+a- ≦ 1 と書いても同じです。この関係式の由来は、文字列aを左に連接するオペレーターLaと、aによるゾゾウスキ導分Da のあいだの次の関係です。Xは任意の形式言語(文字列の集合)です。
- Da(La(X)) = X
- La(Da(X)) ⊆ X
SのなかでM+で生成された部分半環をS+、M-で生成された部分半環をS-とします。S+∩S- = {0, 1} で、S+∪S- はSを生成します。θ(a+) = a-、θ(a-) = a+ と定義すると、θは、半環S全体の対合に拡げることができます。
ベキ等半環Sは、正負の符号が付いた生成元、関係式、対合などの構造を持ちます。これらの構造が、ゾゾウスキ導分とゾゾウスキ共役の性質を写しとっているんじゃないかと期待してます。
[追記 date="2013-10-26"] ゾゾウスキ導分(Brzozowski derivative)は、その名前(導分=微分)からも分かるように微分作用素と類似していると考えられています。とはいえ、この類似は「そこはかとなく」であって、どこまで信用していいか分からない感じです。
- a-a+ = 1
- a+a- + 1 = 1
この等式は、なんとなく、ほんとになんとなくですが、位置と運動量の関係を連想させます。a+のモデルである左連接作用素Laは、無限小移動のようなものです。そしてa-のモデルである形式言語のゾゾウスキ導分は微分作用素のようなもの(かも知れない)です。
上記の2つの等式から a+a- + a-a+ = 1 が出てきますが、具体的なモデル(形式言語)においては次の形です。
- LaDa + DaLa = 1
変数による掛け算作用素Lと微分作用素Dの関係(ワイル代数の関係式)は「DL - LD = 1」なので、なんか似てなくもないです。
微分と言えばライプニッツの法則ですが、形式言語のゾゾウスキ導分では次が成立します。
- Da(X・Y) = Da(X)・Y + ε(X)・X・Da(Y)
ここで、・は言語の連接による積、+は言語の合併、εはイプシロン指標です。
このライプニッツの法則を一般的に扱うには、イプシロン指標を持つ半環を考えて、その半環に働く作用素の等式とみなすことになります。半環Sのイプシロン指標は、Sから半環 {0, 1} への半環の準同型として定義できます。
うーん、やっぱり「そこはかとなく」ですね〜。微分との類似性から、もうちょっと強い主張が言えればいいのですが。
[/追記]