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基底とフレーム、丸く収まる妥協案

世間一般では、「基底」「フレーム」が何を意味するかは曖昧だけど、まーしょうがないよね、という話をしました。僕は区別したいけど、習慣は変わりませんからね。でも、改善案を探るのは無意味ではないでしょう。

Vはベクトル空間で dim(V) = m とします。φ, Φ, φ は次の意味だとします(「ベクトル空間の基底とフレームは違う」で導入した記法)。

  1. φは、{1, ..., m} → V という写像で、φの像集合 Im(φ) = {φ(1), ..., φ(m)} ⊆ V はVの基底
  2. Φ := Im(φ) = {φ(1), ..., φ(m)}
  3. φ は、φから誘導される(一意に決まる)線形写像 φ:Rm → V

注意すべきことは:

  • φからΦは一意に決まるが、先に集合としてのΦが与えられたときに、Φ = Im(φ) となる写像φは一意には決まらない(m!個の候補がある)。
  • φからφは一意に決まる。同型な線形写像 f:Rm → V から f:{1, ..., m} → V も一意に決まり、対応 φ \mapsto φ, f \mapsto f は互いに逆になる。

呼び名に関して次の曖昧性があります。

  • 集合Φも写像φも「基底」と呼ぶことがある。
  • 写像φも線形写像φも「フレーム」と呼ぶことがある。

写像 φ:{1, ..., m} → V は、「(Vの)基底」と呼ばれることも「(Vの)フレーム」と呼ばれることもあるわけです。それなら、φを「基底フレーム」と呼べばいいんじゃないの? 安直過ぎる? 苦し紛れの妥協案ではあるけど:

  1. 単なる集合としての基底Φは、基底集合と呼ぶ。
  2. 像が基底集合になる写像φは、基底フレームと呼ぶ。
  3. 線形写像φは、線形フレームと呼ぶ。

こうすれば、三者を区別しようと思えば区別できます。そして、曖昧性は省略から生じると解釈できます。

  1. 基底集合の「集合」を省略して単に基底と呼ぶことがある。
  2. 基底フレームの「フレーム」を省略して単に基底と呼ぶことがある。
  3. 基底フレームの「基底」を省略して単にフレームと呼ぶことがある。
  4. 線形フレームの「線形」を省略して単にフレームと呼ぶことがある。

三者を区別して呼び分けたい人も、曖昧なまま多義的に使いたい人も使える用語法で、丸く収まると思う。