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参照用 記事

ギリシャ文字が足りない(2-関手のために)


\newcommand{\mrm}[1]{\mathrm{#1}} 
\newcommand{\cat}[1]{\mathcal{#1}} 
\newcommand{\twoto}{\Rightarrow }
\newcommand{\In}{\text{ in } }
\require{color} % 緑色
\newcommand{\Keyword}[1]{ \textcolor{green}{\text{#1}} }%
\newcommand{\For}{\Keyword{For }  }%
\newcommand{\Where}{\Keyword{Where }  }
自然変換や2-射はギリシャ文字小文字で書くのが習慣です。例えば次のように:

\quad \alpha:: F \twoto G : \cat{C} \to \cat{D} \In {\bf Cat}

一部のギリシャ文字は、その用途が習慣的に決まっています。習慣なので破っても問題ありませんが、あえて習慣から外れたことをしたいとは思いません。

内容:

モノイド圏 α, λ, ρ, σ

モノイド圏の結合律子〈associator〉、左単位律子〈left unitor〉、右単位律子〈right unitor〉はそれぞれ、α, λ, ρ で書くのが習慣です。

\For A, B, C\in |\cat{C}|\\
\quad \alpha_{A, B, C}:(A\otimes B) \otimes C \to A\otimes (B\otimes C) \In \cat{C}\\
\quad \lambda_{A}: \mrm{I} \otimes A \to A \In \cat{C}\\
\quad \rho_{A}:  A \otimes \mrm{I} \to A \In \cat{C}

左単位律子のラムダは、ラム記法のラムダとかぶりますが、まー、しょうがないです。

モノイド圏が対称モノイド圏のとき、その対称〈symmetry〉は σ で書くのが習慣です。

\For A, B, \in |\cat{C}|\\
\quad \sigma_{A, B}:A\otimes B \to B\otimes A \In \cat{C}

僕は、\sigma_{A, B} より象形文字記法の \mrm{X}_{A,B} をよく使います。

デカルト/余デカルト圏 π, ι, θ

デカルト圏では直積からの射影を持ちます。射影は π で書くのが習慣です。

\For A, B\in |\cat{C}|\\
\quad \pi^1_{A, B}: A\times B \to A \In \cat{C}\\
\quad \pi^2_{A, B}: A\times B \to B \In \cat{C}

デカルト圏では直和からの入射(余射影〈coprojection〉とも呼ぶ)を持ちます。入射は ι で書くのが習慣です。

\For A, B\in |\cat{C}|\\
\quad \iota^1_{A, B}: A \to A + B \In \cat{C}\\
\quad \iota^2_{A, B}: B \to A + B \In \cat{C}

僕個人の習慣ですが、始対象からの唯一の射は θ で書いています。

\For A \in |\cat{C}|\\
\quad \theta_{A}: {\bf 0} \to A \In \cat{C}

逆感嘆符(¡)で書くのが辻褄が合っていると思いますが、逆感嘆符は入力が容易ではないのでシータ〈テータ〉を使っています。ゼロ対象(始対象かつ終対象)を持つ圏のゼロ射もシータを使っています。

\For A, B \in |\cat{C}|\\
\quad \theta_{A, B}: A \to B \In \cat{C}

随伴系 η, ε

随伴系〈adjunction〉の単位と余単位は η, ε で書くのが習慣です。以下のアスタリスクは、横結合の図式順演算子記号です。

\For \cat{C}, \cat{D} \in |{\bf Cat}|\\
\For G:\cat{C} \to \cat{D} \In {\bf Cat}\\
\For F:\cat{D} \to \cat{C} \In {\bf Cat}\\
\quad \eta :: \mrm{Id}_\cat{D} \twoto F * G : \cat{D} \to \cat{D} \In {\bf Cat}\\
\quad \varepsilon :: G*F \twoto \mrm{Id}_\cat{C} : \cat{C} \to \cat{C} \In {\bf Cat}

モナド μ, η

モナドの乗法と単位は μ, η で書くのが習慣です。

\For \cat{C} \in |{\bf Cat}|\\
\For F:\cat{C} \to \cat{C} \In {\bf Cat}\\
\quad \mu :: F*F \twoto F : \cat{C} \to \cat{C} \In {\bf Cat}\\
\quad \eta :: \mrm{Id}_\cat{C} \twoto F : \cat{C} \to \cat{C} \In {\bf Cat}

η が随伴系の場合とかぶってますが、同じ自然変換を指すので問題ありません。

[追記]あっ、随伴系の左関手とモナドの台関手に同じ文字 F を使ったので、「η が同じ自然変換を指す」がピンと来ないかもしれませんね。モナドの台関手を M にすると、M := F*G として、随伴系の左関手/右関手からモナドの台関手が定義されます。自然変換 \eta は随伴系とモナドで同じものを流用します。[/追記]

2-関手 ν, κ

さて、問題の2-関手です。2-関手は2-圏のあいだの準同型射であって、2-圏達の3-圏の1-射です。2-関手(ラックス2-関手を考える)にはモナドのときと同様な、乗法/単位と呼ぶべき構造射が備わっています。ギリシャ文字で書くべきでしょうが、特に定着した習慣はないようです。

僕は「乗法/単位だからモナドと同じでいいや」と μ, η を使っていましたが、やっぱり紛らわしいときがあります。それで、ν, ε とか ν, ι に変えました。しかし、ε も ι も既に習慣的に使われています。かぶってます。

まだ使われてなくて、ラテン文字と区別できるギリシャ文字を探したら、κ〈カッパ〉が使えそうです。

\For \cat{K}, \cat{L} \in |{\bf 2Cat}|\\
\quad (F, \nu, \kappa): \cat{K} \to \cat{L} \In {\bf 2Cat}\\
\Where\\
\quad \For f:A \to B, g:B \to C \In \cat{K}\\
\qquad \nu_{f, g}:F(f)*F(g) \twoto F(f*g) :F(A) \to F(C) \In \cat{L}\\
\quad \For A \in  |\cat{K}|\\
\qquad \kappa_A :\mrm{id}_{F(A)} \twoto F(\mrm{id}_A) :F(A) \to F(A) \In \cat{L}

ν, κ が他の習慣とかちあわない限り、ν, κ を使おうと思います。