あれ、Kuwataレポートが出てたのね(アンテナが検知してなかったので http://d.hatena.ne.jp/hirataraSideB/20090522/p1 経由で知りました)。
今回は割と予定通りの進行になり、
わっ、割とね。いつもがひどすぎるってことかな。
まずは圏の構成要素のおさらいから。以下はセミナー資料からの引用。
- ...(省略)
- f;g の結合可能性: dom(f) = cod(g)
そこはそのまま引用しちゃダメなトコロ。dom(f) = cod(g) が間違っているもん。逆だわ。
f の余域と g の域が一致するとき f;g という結合が可能である
これが正しいです :-)
任意の対象 a, b に対して a -> b となる射が存在する。
これはウソ。例えば、N(自然数全体)の離散圏で、2→3 という射は存在しないでしょ、n→n という恒等射しかないのだから。Nの普通の大小順序をもとに作った圏(セミナー内ではOrderとして紹介)では、2→1 の射はありませんね、n→m の射があることは n≦m と同じことですから。単純平面タングル(SPT)の圏でも、2→1 のような射(紐の模様)はありません。実際、奇数個の点を描いて失敗した人がいるわけで、失敗とは「模様=射」が存在しないこと。
- 任意の射 f に対して a -> b となる対象 a, b (dom(f) = a, cod(f) = b) が存在する。
なら正しいです。
例えば Web ページ同士のハイパーリンクは圏になってるんじゃないかな。
AからBへのリンクと、BからCへのリンクがあっても、AからCへのリンクがあることは保証されないから、このままでは圏になりません。でも、この発想はスジがいいんですよ。
一般的に、有向グラフがあったとき、そのグラフの「パスの圏」とか「自由生成された圏」と呼ばれる圏が作れます。ハイパーリンクの例で言えば、A→C という物理的なリンクがなくても、「たどって行ける」なら仮想的なリンクがあるとみなすのです。「パス」ってのは、たどる経路のことね。
グラフから自由生成された圏はいろんな場面で使う重要な概念です。そればかりか、自由生成する行為は関手とみなせて、それはモナドの事例にもなっています。もう少しこぢんまりした(しかし本質的には変わらない)例を挙げるなら、有限グラフからその反射的推移的閉包(のグラフ)を作る操作がモナドになってますね。
ブラウザの更新ボタンを恒等射だと言い張る。
これはいいかも。恒等射の雰囲気が出ている。
気になるところはこんくらいかな。