2008年に次の記事を書きました。
それと関連する記事:
読者・購入者にとって便利で妥当だと思える判断をすると、著者・出版者には苦しい、というジレンマを述べました。
2008年のあの当時と比べて小額決済の環境は改善されていると思います。キンドルやiPadのような新しい電子出版プラットフォームも出てきました。しかし、本質的に事情が変わったのかというと、そうは思えません。個人デジタル出版はやっぱり難しいでしょうね。
それでもずっと僕は、個人(あるいはそれに近い小規模)での出版には興味を持ち続けています。自分が考えたり調べたりしたことを書いて伝える行為は好きなので、それに課金できて収益になれば随分と幸せだろうな、と思うからです。
実は情報商材ASPで買ってみたのだった
2008年にあの記事を書いたとき、info* といった名前のいわゆる「情報商材」を扱っているサイトを調べてみました。デジタルないしは紙媒体の著作物の販売と決済のシステムを提供しています。それらのサイトは、なんかアヤシサ満点、煽り文句キンキラのギトギトなサイトで、そこで何かを販売することは躊躇してしまいます。
キンキラ・ギトギトは好みの問題だからまー置いといて、僕がイヤーな感じをいだいたは、著作物のテーマのほとんどが、人の弱みや劣等感に絡んでいることです。「FXで大儲け」「万馬券とれる」「あなたもモテるようになる」「ハゲが治る」「簡単に痩せる」など。そして値段が3万とか5万とか、常識ハズレに高額です。
僕は、安い冊子を探して買ってみました。公表するのはマズイ気がしてずっと書かなかったのですが*1、1年半たっているので、もういいでしょう。
■□ ご注文内容 □■注文ID :#######
販売者(インフォプレナー):●●●●
商品名 :本は定価で買うな!古書店よりも安く欲しい本を激安で手に入れる方法
商品金額 :1000円(税込)
商品種別 :ダウンロード販売
※情報等をデジタルコンテンツ(主にPDFなど)として、
インターネット経由でダウンロードしていただきます。
販売ページURL :http://evil.example.com/
特定商取引URL :http://evil.example.com/tokuho.html
特定商取引メールアドレス:evil-info-book@example.com
「本を激安で入手」のノウハウで、価格は千円です。表紙はこんなです。
中身をバラすのはさすがに気が引ける*2ので目次だけ。
情報としては、この目次で全てです。ようするに、「アマゾンマーケットプレイスで買ったら安い」という情報を千円で売っていたわけです。「ぱぱらっち2Free」(http://mamazy.com/papazy/papa2/)は、アマゾンの書籍を検索できる携帯サイトです。
この冊子がなんで15ページもあるかというと、アマゾンマーケットプレイスの使い方を、ステップごとに画面キャプチャを貼って説明しているからです。
ほとんど詐欺
全部が全部詐欺まがいとは言いませんが、基本的な手法は、「事前に内容は一切見せず、人の弱みや劣等感に訴える煽り文句を使って、どうでもいい情報を高額で買わせる」というものでしょう。
「情報商材業界のダークサイドに巻き込まれないために知っておくべきこと」(http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2008/10/27/4269)によると:
筆者は実際に何点か購入(もしくは内容が暴露されているサイトで閲覧)してみたのだが、内容は想像通り「すべてネットで入手できる」、もしくは「ほとんど役に立たない」「古い」情報がほとんどであった。
これは笑っちゃうんですが、どんな情報をつかませられたかというと:
- 「競馬で絶対に損しない方法、損したら全額返済いたします。」 価格3000円 →「競馬を予想します、しかし馬券は買わずに貯金してください。これで競馬をして、損も絶対にしません」
- 「ルイ・ヴィトンを60%以下で購入する方法」価格不明 →「フランスに行って買う」
公開性と評価システム
「個人デジタル出版で儲け、られそうにない」に既に書いたことですが、やはり内容の一部は事前に確認できて、レビューやフィードバックのメカニズムがないとダメでしょうね。
情報商材ASPの決済システムは、システムとしてはよく出来ています。購入者側のユーザーインターフェースも使いやすく、ちゃんと作ってあるようでした。売り上げランキングだけじゃない評価システムを設けるのもたやすいことでしょう。が、彼らのビジネスモデルからして、内容に関する評価システムは受け入れられないのだと思います。
内容の一部を公開できて、評価・フィードバックのシステムを備えていて、あやしくないプラットフォームは見当たりませんでした。最近の事情は知らないので、ひょっとして、その後にできているかもしれませんが。
なんでこんな状況になってしまうのかと言うと、人の弱みにつけ込まず、煽らないで、適正な価格(1000円から5000円くらい)で、評価・フィードバックを受け付け、メンテナンスもするようなコンテンツの提供は、実際のところ相当に困難だからでしょう。だからと言って、人の弱みにつけ込み、煽りまくって、法外な価格で、評価・フィードバックを一切受け付けず、売り逃げするようなコンテンツが正当化されるかというと、それはないでしょうけど。
結局のところ僕には、「どうするのが望ましいか」は分かっても、「それを可能とする方法」は思いつきません。悲しい。