http://twitter.com/#!/oto_oto_oto/status/21809570707931136 :
subobject classifier で定式化される部分対象とMonoだったかSubで定式化される部分対象は同じものなんだろうか。
http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama/20101230/1293682058 :
クリスマスにトポスを勉強しなかった人は正月にでも勉強したほうがいいのでしょうかね。
トム・レインスターの解説では、素朴集合論の直感を前提に、トポスを外から眺める話が出てきます。人によっては、この見方が分かりやすく納得感があるかもしれません。僕は素朴イイカゲン派なので、分かりやすかったです。で、紹介します。
反変関手Sub
圏のサイズの問題を避けたいので、小さな圏を相手にします。ただし、集合圏Setだけは例外です(Setは小さくない)。
Cが(小さい)圏だとして、X∈|C| に対して、Xを余域とするモノ射の全体を MonoC(X) とします。以下、下付きのCは省略して Mono(X) と書きます。Cが大きい(小さくない)と、Mono(X) も大きいでしょうが、Cが小さいのでそのテの心配はご無用。
Cは、引き戻し(pullback)が常に存在する圏だと仮定します。f:A→B in C に対して、f*:Mono(B)→Mono(A) という写像(射じゃなくて写像です)を定義しましょう。
m∈Mono(B)、つまり m:Y→B in C だとして、f*(m):X→A を、次の図が引き戻しになる射m'として定義します。
X --→ Y
m'| |m
v v
A --→ B
f
モノ射mの引き戻しm'はモノ射なので、m∈Mono(B) ならば m'∈Mono(A) は保証できます。しかし、引き戻しは up-to-iso でしか決まらないので、適当なm'を選ぶ必要があります。Mono(A)もMono(B)も集合なので選択公理が使え*1、写像f*は定義できます。
とはいえ、up-to-isoの不定性はけっこう鬱陶しいので、Mono(X)上に同値関係を入れて割り算(quotient set)しておきます。
- (m1 〜 m2 in Mono(X)) ⇔ (m1 = i;m2 となる同型iが存在する)
この〜が同値関係であることは各自確認のこと。Sub(X) := Mono(X)/〜 と定義します。集合Sub(X)の要素が、Xのサブオブジェクトです。Sub(X)は、Xのすべてのサブオブジェクトの集合なので、普通の言葉ではXのベキ集合(powerset)です。注意すべきは、Sub(X)は圏Cのなかにあるのではなくて、圏Cを外から操作して、Cの外側にSub(X)を作っていることです。圏Cの中に住んでいる人から見ると極めて超越的で、まったく認識できない操作/対象物です。
先ほどの、f*:Mono(B)→Mono(A) は、Sub(B)→Sub(A) としても定義できるし、f*:Sub(B)→Sub(A) のほうがむしろキッチリとした定義ができます。さらに、Sub(f) := f* とすると、Subは C→Set という反変関手となります(これも各自確認してね)。Set上の反変ベキ集合関手(contravariant powerset functor)をPowとすると、SubはPowにとても似ています。Sub:C→Set は、Pow:Set→Set をロールモデルとして定義されたと言っていいでしょう。
Subの表現対象Ω
一般に、F:D→Set が反変関手(F:Dop→Setが共変関手)のとき、R∈|D| がFを表現するとは、次の同型(≒)が成立することです。
- F(X) ≒ D(X, R)
厳密には、自然同型(成分がすべて同型である自然変換) γX:F(X)→D(X, R) を具体的に与える必要があります。対象Rが定義する反変ホム関手をR^とするならば、FとR^が関手圏SetDopのなかで同型ということになります。
トポスのサブオブジェクト・クラシファイアーは、反変関手Subを表現する対象です。Cをトポス、Ωをサブオブジェクト・クラシファイアーだとすると、次の同型が成立します。
- Sub(X) ≒ C(X, Ω)
これは、Cの対象Xごとに集合の同型(1:1対応写像)があり、全体を束ねると自然同型になっていることです。
C(X, Ω)→Sub(X) の方向の写像がどう与えられるかというと、また引き戻しを使います。t:1→Ω (1は終対象)はモノ射なので、次の引き戻しmはモノ射です。(・は無名の対象を示す。)
・--→ 1
m | |t
v v
X --→Ω
f
f∈C(X, Ω) に対してmはup-to-isoでしか決まりませんが、Sub(X)に落とせば一意的な定義となります。つまり、C(X, Ω)→Sub(X) はハッキリと定義できます。
こうして定義した写像 C(X, Ω)→Sub(X) が可逆であるためには、サブオブジェクトを代表するモノ射 m:・→X が与えられたとき、上の四角形図式が引き戻し図(publlback diagram)となるようなfが一意的に存在する必要があります。この要請がサブオブジェクト・クラシファイアーの公理に他なりません。mから決まるfを f = χm = χ(m) と書くことがあります。これは、集合圏における部分集合の特性関数をまねた記法です。
今までの話に引き戻しと終対象が出てきたので、圏Cは有限完備である必要があります。そして、C内にサブオブジェクト・クラシファイアーΩ(真を意味する t:1→Ω を伴う)が存在すればCはトポスになります。サブオブジェクト・クラシファイアーの条件を繰り返すと、t:1→Ω の引き戻しによって定義される C(X, Ω)→Sub(X) が可逆写像であることです。
ホムセットC(X, Ω)は、Sub(X)よりは分かりやすい集合ですが、それでもCの内部からは見えません。Cがデカルト閉ならば、指数対象ΩXが存在するので、これならCの内部から見えて、「Xのベキ集合」として認識できます。全面的にデカルト閉じゃなくても、Ωを底とする指数が存在すれば十分です。
まー要するに、対象Xのベキ集合とみなせるナニカを定義するメカニズムがサブオブジェクト・クラシファイアーです。「Sub(X)が外延的、C(X, Ω)が内包的」とかいうと、なんか哲学みたいでカッコイイ(またはバカミタイ)かもしれません。