年に2,3回、誰かに向かって同じ話をしている気がするので、ブログ記事にしておきます。$`
\newcommand{\Imp}{\Rightarrow }
\newcommand{\Iff}{\Leftrightarrow }
\newcommand{\mrm}[1]{\mathrm{#1}}
\require{color}
\newcommand{\Keyword}[1]{ \textcolor{green}{\text{#1}} }%
\newcommand{\For}{\Keyword{For } }%
\newcommand{\Define}{\Keyword{Define } }%
`$
論理記号のなかで、$`\land`$(論理AND、連言)、$`\lor`$(論理OR、選言)、$`\lnot`$(論理NOT、否定)を誤解する人はあまりいない*1のですが、$`\Imp`$(含意)、$`\Iff`$(同値、双条件〈biconditional〉)については誤解している、あるいはモヤッと捉えている人がけっこういるようです。
集合 $`X`$ を固定して、$`X`$ から二値真偽値の集合 $`\{\mrm{true},\mrm{false}\}`$ への写像〈関数〉の全体を $`\mrm{Map}(X, \{\mrm{true},\mrm{false}\})`$ と書きしょう。$`\mrm{Map}(X, \{\mrm{true},\mrm{false}\})`$ の要素は、$`X`$ 上の述語〈predicate〉と呼びます。また、集合 $`X`$ のすべての部分集合の集合(ベキ集合〈powerset〉)は $`\mrm{Pow}(X)`$ と書きます。
$`X`$ 上の述語と、$`X`$ の部分集合は次のように1:1対応します。
$`\quad (p:X \to \{\mrm{true},\mrm{false}\}) \longleftrightarrow \{x\in X\mid p(x)\}`$
この対応を前提としたときに、以下の対応表は間違っています。ダメです。
述語に関して | 部分集合に関して | 部分集合の一言説明 |
---|---|---|
$`\land`$ | $`\cap`$ | 共通部分 |
$`\lor`$ | $`\cup`$ | 合併 |
$`\lnot`$ | $`{^\mrm{c}}`$ | 補集合 |
$`\Imp`$ | $`\subseteq`$ | 包含関係 |
$`\Iff`$ | $`=`$ | 等しい |
ダメな対応表を修正すると:
述語に関して | 部分集合に関して |
---|---|
$`\land`$ | $`\cap`$ |
$`\lor`$ | $`\cup`$ |
$`\lnot`$ | $`{^\mrm{c}}`$ |
$`\Imp`$ | ? |
$`\Iff`$ | ? |
? | $`\subseteq`$ |
? | $`=`$ |
疑問符のところは、広く合意された記号がないことを表します。僕が普段使っている記号でいいなら:
述語に関して | 部分集合に関して |
---|---|
$`\land`$ | $`\cap`$ |
$`\lor`$ | $`\cup`$ |
$`\lnot`$ | $`{^\mrm{c}}`$ |
$`\Imp`$ | $`\triangleright`$ |
$`\Iff`$ | $`\diamond`$ |
$`\vdash`$ | $`\subseteq`$ |
$`\equiv`$ | $`=`$ |
$`\triangleright,\,\diamond`$ は個人的に使用しているだけなので、全然一般性はありませんが、定義は次のようです。
$`\For A, B \in \mrm{Pow}(X)\\
\Define A \triangleright B := A^\mrm{c} \cup B\\
\Define A \diamond B := (A \triangleright B)\cap ( B \triangleright A)
`$
$`\vdash`$ は比較的よく使われている記号で、$`\vdash`$ の左側の命題(述語だと思ってよい)を仮定すれば右側の命題が導出されることを示します*2。
集合 $`X`$ 上で常に真である恒真述語を $`\top = \top_X`$ とすると、次が言えます。
- $`\top \longleftrightarrow X`$ と対応する。
- $`\top \vdash (p \Imp q)`$ は、$`p \vdash q`$ と同じこと。
- $`\top \vdash (p \Iff q)`$ は、$`p \equiv q`$ と同じこと。
ともかく、最初に挙げたダメな対応表を想定していた人には、「それは間違いだ」と言っておきます。