以下の絵は、新しいスタイルのトレース付き圏(トレース付きバランス圏とその特殊化)の公理を表しています。(長谷川真人さんの "On Traced Monoidal Closed Categories", 28 November 2007 より、「トレース付きモノイド圏の新しい定義」から再掲。)
ここで、タイトニング(Tightening)が自然性(Naturality)とも呼ばれています。これは、トレースが自然変換の性質を持つことですが、毎回「どこが自然なんだっけ?」と忘れてしまいます。なので、ここにメモしておきます。
子供が小さい頃、世田谷公園は良い遊び場でした。上の子(兄)がある程度大きくなってからは、兄弟で遊んでいるあいだ、僕はベンチに座って本や書類を読んだりしていても大丈夫でした。「タイトニングのどこが自然なんだ?」は、世田谷公園のベンチで考えた記憶があります。
(画像は http://www.asobi-map.com/setagaya.htm より)
先の絵だと、左右のタイトニングが一度に表現されていますが、左タイトニングだけだと次のようになります。(図式順記法に変えてあります。)
- TrA',BX((h×X);f) = h;TrA,BX(f)
この等式がなんらかの自然変換の自然性になっているはずです。
A, B, X を圏Cの対象として、トレースは、C(A×X, B×X)→C(A, B) というホムセットのあいだの写像として与えられます。ここで、B, X を固定して、Aだけを動かすとします。
すると、h:A'→A という射に対して、C(A×X, B×X)→C(A'×X, B×X) が、(f:A×X→B×X) |→ (h;f:A'×X→B×X) として定義できます。この定義により、C(-×X, B×X) は C→Set という反変関手となります。反変ホム関手の変形版ですね。
さて、TrA,BX を(自然変換らしく) τA と書きましょう。先の左タイトニングの等式は、次のように書き換えることができます。
- τA((h×X);f) = h;τA(f)
変数fを消して簡略化すると:
- (h×X)*;τA = τA;h* : C(A×X, B×X)→C(A', B)
可換図式にするなら:
C(A×X, B×X) -(τA)--> C(A, B) | | (h×X)* h* | | v v C(A'×X, B×X) -(τA')-> C(A', B)
τは、変形版反変ホム関手 C(-×X, B×X) と普通の反変ホム関手 C(-, B) のあいだの自然変換です。
[追記]
Aをパラメータ域とするパラメータ付き不動点演算子は、FixAX:C(A×X, X)→C(A, X) というホムセットのあいだの写像として与えられます。不動点演算子Fixでも、タイトニングとよく似た等式が成立しますが、これも自然性です。
問題の等式は、f:A×X→X、h:A'→A として、FixA'X((h×X);f) = h;FixAX(f) の形です。これは、φA = FixAX と置いて、(h×X)*;φA' = φA;h* と書けます。可換図式では:
C(A×X, X) -(φA)--> C(A, X) | | (h×X)* h* | | v v C(A'×X, X) -(φA')-> C(A', X)
φも、変形版反変ホム関手 C(-×X, X) と普通の反変ホム関手 C(-, X) のあいだの自然変換です。
[/追記]