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参照用 記事

コジュール接続の一般射は一般的だった

昨日の記事「コジュール接続の圏 その2」で:

ちょっと思いついたこと(一般射という概念)があるんで、それのメモみたいなもんです。


一般射〈generic morphism〉 一般的(過ぎるかも)

実際、コジュール接続のあいだの一般射という概念は一般的でした。用途によっては一般的過ぎてつまらないかも知れません。ここでの一般的とは次の意味です。

  • X, Y がコジュール接続のとき、任意のイントラベース・ベクトルバンドル射(条件は付けない) XY は、XからYへの一般射を(標準的に)定義する。

別な言い方をすると、

  • KoszConngen[M] から圏 VectBdl[M] への忘却関手は充満忠実である。

これを示すには、昨日の記事で述べた“fに沿った微分射”に関して少し調べます。

設定として、Mは(なめらかな)多様体で、R-可換環R-ベクトル空間である可換環)の層 Φ = ΦM = CM(-) と、Φ-加群の層 Ω = ΩM は通常通り、d:Φ→Ω は標準的な外微分とします。

X, Y はΦ-加群(の層)だとします。とりあえず今は、X, Y がベクトルバンドルのセクション空間でなくてもかまいません。f:X→Y はΦ-加群射だとして、D:X→Y\otimesΩ がf-微分〈f-derivative morphism〉であることは、昨日の記事で定義したとおり -- 変形したライプニッツ法則を要求します。(層のあいだの射=自然変換の成分は上付き添字で書くとします。)

  • For U∈Open(M), a∈Φ(U), x∈X(U)
    DU(x・a) = (DUx)・a + f(x)\otimesdUa

X→Y\otimesΩ の形のf-微分射の全体を Derf(X, Y\otimesΩ) とします。Derf(X, Y\otimesΩ) は、Φ-加群にもR-ベクトル空間にもなりませんが、次の性質を持ちます。(ΦまたはRによるスカラー倍演算'・'は左も右も許します。)

  1. D, D'∈Derf(X, Y\otimesΩ) なら、差 D' - D はΦ-加群射である。
  2. 実数 t に対して、t・D + (1-t)・D' はf-微分射である。

Xがベクトルバンドルから作られた加群(X = Γ(E))で、f = idX の場合は、f-微分射は共変微分になります。次の命題達は定義からただちに同値です。

  1. ∇はベクトルバンドルEの共変微分である。
  2. ∇∈CovDer(E)
  3. ∇∈DeridX(X, X\otimesΩ) (X = Γ(E))

以下、E, F はM上のベクトルバンドルで、X = Γ(E), Y = Γ(F) 、f:X→Y はΦ-加群射であるとします。f\otimesidΩ:X\otimesΩ→Y\otimesΩ を、f1:X\otimesΩ→Y\otimesΩ と略記します。このとき:

  1. ∇∈CovDer(E) ならば、f1\circ∇ ∈Derf(X, Y\otimesΩ)
  2. ∇'∈CovDer(F) ならば、∇'\circf ∈Derf(X, Y\otimesΩ)

これらは直接計算で示せます。f1\circ∇ も ∇'\circf も Derf(X, X\otimesΩ) に入るので、差を取ることができて、先の「f-微分射の差はΦ-加群射である」から、差 f1\circ∇ - ∇'\circf はΦ-加群射になります。

これらの事実から、次が成立します。

  • KoszConngen[M]((E, ∇), (F, ∇')) \cong VectBdl[M](E, F)
  • (f, A) ←→ f

右から左への対応は、f := (f)*, A := f1\circ∇ - ∇'\circf と定義します。

ちょっと別な話題; 任意のベクトルバンドルE上に共変微分が存在するので、Eごとに共変微分を超越的に選ぶ操作を S(E) = (E, ∇), ∇∈CovDer(E) とします。1:1の対応〈全単射VectBdl[M](E, F)→KoszConngen[m](S(E), S(F)) が存在するので、Sは関手 S:VectBdl[M]→KoszConngen[M] とみなせます。

忘却関手を U:KoszConngen[M]→VectBdl[M] 、関手の図式順結合記号を'*'として S*U = Id が成立するので、SはUのセクション関手になります。忘却関手のセクション関手の空間 SectFunctor(U) = Γ(U) を調べるのは面白いかも知れません。