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参照用 記事

概リー/ラインハート代数とコジュール接続

概リー/ラインハート代数は、多様体上の「(なめらかな)関数の環、接ベクトル場の括弧積マグマ(多様体ではリー代数ですが)、接ベクトル場による関数の微分」を抽象化・代数化した構造だと言えます。概リー/ラインハート代数上のコジュール接続は、「接バンドルとは限らないベクトルバンドルと、そのセクションに対する共変微分」を抽象化・代数化した構造です。

この記事では、コジュール接続とコジュール接続のあいだの射〈準同型写像〉を定義して、コジュール接続の圏を構成します。\newcommand{\dif}{\mathop{\triangleright}}%
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\newcommand{\In}{\mbox{ in }}%
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\newcommand{\For}{ \mbox{For }  }%
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\newcommand{\cat}[1]{\mathcal{#1} }%

内容:

動機:正方行列の微分

僕がリー/ラインハート代数に想定した用途は「多様体上の微分計算の道具」です。リー/ラインハート代数を使って微分計算の代数的側面をうまく抽出できそうだ、と思ったのです。

ここしばらく目標にしたいことは、多様体上の正方行列の微分です。多様体上に正方行列(の場)があるとき、特定の接ベクトル(の場)により方向微分したいのです。そのとき使う微分公式を導き出したいわけです。

正方行列と言ったのは、なんらかのベクトルバンドル E の自己写像〈endomorphism〉のバンドル  end(E) のセクションを、適当な局所フレームで成分表示したものです。E のセクションの微分があれば、双対ベクトルバンドル  E^* のセクションの微分も作れて、それらを組み合わせて  end(E) のセクションの微分が構成できます。

この意味での“正方行列の微分”を組み立てる過程は、与えられたコジュール接続(共変微分が付いたベクトルバンドル、またはセクション加群)から(一般化された)外微分を備えた非可換(かも知れない)代数〈多元環〉を構成する関手として定式化できます。この関手をエンド関手 End と呼ぶことにします -- endomorphism の end です。

微分ができる基盤としての多様体はリー/ラインハート代数(より正確にはリー/ラインハート代数層)として表現できます。コジュール接続とは、リー/ラインハート代数上の共変微分付き加群のことです。“お目当て”のエンド関手は、コジュール接続(=共変微分付き加群)の圏からの関手になります。

エンド関手の域圏〈domain category〉であるコジュール接続(=共変微分付き加群)の圏、エンド関手の余域圏〈codomain category〉、そしてエンド関手を定義していきたいと思います(この記事では完結しませんけど)。これらの圏・関手の共通下部構造としてリー/ラインハート代数(ここでは概リー/ラインハート代数を使う)があるわけです。

ネーミングと記号の約束

概リー/ラインハート代数層 // ネーミングと記号の約束」に従えば、概リー/ラインハート代数 RR = (R_A, R_B, \cdot_R, \dif_R) と書きますが、単一の概リー/ラインハート代数だけを扱うときは R = (A, B, \cdot, \dif) のようにも書きます。基礎体は全体を通して K に固定するので、基礎体への言及・表記は省略することがあります。

K-可換代数(結合的単位的可換代数)をK-環、あるいは単に環ともいいます*1。環A上の加群の圏を A\hyp{\bf Mod} と書きます。体Kに関しては、K\hyp{\bf Mod} = K\hyp{\bf Vect} = {\bf Vect}_K = {\bf Vect} とします。

テンソル積や双対は、Kに関するものかAに関するものか分からなくなるので、次のような書き方をします。

  • E\otimes_A F = (E\otimes F \In A\hyp{\bf Mod})
  • E^{* A} = (E^* \In A\hyp{\bf Mod})

添字が付かない \otimesK-テンソル積ですが、明確化のために \otimes_K と書くこともあります。

E, F\in |A\hyp{\bf Mod}| に対して、 Hom_A(E, F) は、集合としてはホムセット A\hyp{\bf Mod}(E, F) と同じですが、それを加群とみなしたものです。つまり、

  • \u{Hom_A(E, F)} = A\hyp{\bf Mod}(E, F) \In {\bf Set}
  • Hom_A(E, F) \in |A\hyp{\bf Mod}|

アンダーラインは加群の台集合〈underlying set〉を意味します。

End_A(E), Aut_A(E)A\hyp{\bf Mod} の対象ではありません

  • End_A(E) \in |A\hyp{\bf Alg}|
  • Aut_A(E) \in |{\bf Grp}|

ここで、A\hyp{\bf Alg}A-代数〈多元環〉の圏です。Aは環で可換性を仮定しましたが、A-代数は可換性を仮定しない結合的単位的代数です。「可換性を仮定しない」という意味で形容詞「非可換」を付けることがあります。

Hom_A(E,E) と書いたときは加群構造しか考えず、End_A(E) と書いたときは非可換代数構造まで考えると約束します。非可換代数の可逆元の全体を (\hyp)_{\times} と書くことにすると:

  • (End_A(E))_{\times} = Aut_A(E) \;\in |{\bf Grp}|

前節でベクトルバンドルE で表しましたが、ここから先でベクトルバンドルは出てきません。EA-加群を表します。気持ちとしては、ベクトルバンドルのセクション加群ベクトルバンドルと同じ記号で表す“記号の乱用” E = \Gamma(E) をしていると思ってもいいです -- あくまで気持ちの話ですが。

ベクトル空間、環、加群、非可換代数多元環〉の要素を次のように呼びます。これらの呼び名は、多様体に関する用語を流用しています。

  • A の要素をスカラーと呼ぶ。
  • K の要素を定数スカラー、または単に定数と呼ぶ。
  • 括弧積マグマ B の要素をベクトルと呼ぶ。
  • 括弧積マグマの双対加群 B^{* A} の要素を1-形式、または単に形式と呼ぶ。
  • A-加群  E の要素をセクションと呼ぶ。
  • 可換代数 End_A(E) の要素をエンドセクション〈end-section〉と呼ぶ。

エンドセクションだけはここで導入した造語です。エンドセクションは(成分表示すれば)正方行列だと思ってかまいません。重要なことはエンドセクションは(非可換かも知れない)掛け算が出来ることです。ベクトル、1-形式、一般のセクションは、掛け算(結合的二項演算)が出来るとは限りません。

エンドセクション(ほぼ正方行列)の掛け算が我々の主題です。今注目している掛け算は、可換環の掛け算でもなく、加群スカラー倍でもなく、非可換(かも知れない)代数〈多元環〉の掛け算です。乗法〈掛け算〉をこのテの非可換乗法の意味で使うとして、やりたいことは乗法的微分計算〈multiplicative differential calculus〉をキチンと定義することです。この話題に関して、何回かの記事が引き続くと思います。

概リー/ラインハート代数の外微分

R = (A, B, \cdot, \dif) を概リー/ラインハート代数として、スカラーA の要素)の外微分を定義しておきます。そのためには、R の1-形式の加群が必要です。

  •  \Omega^1(R) := B^{* A} := Hom_A(B, A)

と定義します。BA-加群であると同時に括弧積マグマですが、今はA-加群構造だけ考えて Hom_A(B, A)\in |A\hyp{\bf Mod}| を考えています。

しばらく、2-形式、3-形式などは考えないので、\Omega(R) := \Omega^1(R) と略記します。さらに、概リー/ラインハート代数 R がひとつに固定されている状況では \Omega := \Omega(R) と略記します。

概リー/ラインハート代数に関する微分〈exterior derivative〉 d:A \to \Omega は次のように定義します。


\For a\in A, X\in B\\
\quad d(a)(X) := X \dif a

この定義の背後には、次の事実があります; \Omega = Hom_A(B, A) だったので、d(a)\in Hom_A(B, A) となり、d(a):B \to A \In A\hyp{\bf Mod} 。よって、d(a)(X) \;\mbox{ for }X\in B を決めればいいわけです。

微分K-線形写像です。

  • d: A \to \Omega \In K\hyp{\bf Vect}

A\OmegaK-ベクトル空間の構造を持つので、「K-線形写像である」は意味を持ちます。K-線形性は定義からすぐに出ます。

また、外微分ライプニッツ法則を満たします。

  • d(a\cdot b) = d(a)\cdot b + a\cdot d(b)

ここで、ドットの意味は、左から右の出現順で「環の掛け算、Hom加群の左スカラー倍、Hom加群の左スカラー倍」です。

  1.  (\cdot): A\otimes_K A \to A \In K\hyp{\bf Vect}
  2.  (\cdot): Hom_A(B, A)\otimes_K A \to Hom_A(B, A) \In K\hyp{\bf Vect}
  3.  (\cdot): A \otimes_K Hom_A(B, A) \to Hom_A(B, A) \In K\hyp{\bf Vect}

ライプニッツ法則の書き方を変えてみると:

  • \forall X\in B.\, (d(a \cdot b))(X) = (d(a)\cdot b)(X) + (a\cdot d(b) )(X)
  • \forall X\in B.\, (d(a \cdot b))(X) = (d(a)(X) \cdot b) + (a\cdot d(b)(X) )
  • \forall X\in B.\, X\dif (a \cdot b) = (X \dif a)\cdot b + a\cdot (X\dif b)

ドットの意味には注意してください。最後の等式は、概リー/ラインハート代数の公理として保証される(定義を参照)ので、外微分ライプニッツ法則は成立します。外微分 d は、形を変えた導分作用 \dif に過ぎません。


\qquad (\dif) \\
\qquad \uvin  \\
\quad Hom_K(B\otimes_K A, A)\\
\cong Hom_K(A, Hom_K(B, A) )\\
\supset Hom_K(A, Hom_A(B, A) )\\
= Hom_K(A, \Omega )\\
\qquad \lvin\\
\qquad d

コジュール接続

概リー/ラインハート代数から1-形式の加群と外微分は一意的に決まるので、1-形式加群と外微分も添えて  R = (A, B, \cdot, \dif, \Omega, d) のように書くことにします。もっと短く書きたいときは R = (A, B, \Omega) 。典型例に「多様体上の関数環、接ベクトル場のリー代数、1次微分形式の加群」の3つ組があります*2

これから、概リー/ラインハート代数 R 上のコジュール接続〈Koszul connection〉を定義します。コジュール接続は、多様体上の“微分できるベクトル量”の定式化と解釈できます。

コジュール接続の構成素は2つあるので、E = (\u{E}, \nabla_E) と書きます。ここで、

  1. \u{E} \In |A\hyp{\bf Mod}| (コジュール接続の加群〈underlying module〉)
  2. \nabla_E : \u{E} \to \u{E} \otimes_A \Omega \In K\hyp{\bf Vect} (コジュール接続の共変微分〈covariant derivative〉

2番目の式が意味するところはけっこう複雑です。\u{E}\OmegaA-加群なので、A に関するテンソル\u{E}\otimes_A \Omega は作れます。\u{E},\; \u{E}\otimes_A \OmegaK-ベクトル空間の構造を持つので、一旦A-加群構造を忘れてK-ベクトル空間の圏に入れます。その状況で \nabla_EK-ベクトル空間の圏の射、つまりK-線形写像だということです。

そろそろ記号の乱用 E = (E, \nabla_E) = (E, \nabla) を使うことにして、コジュール接続が満たすべき法則は、\nabla_E = \nablaライプニッツ法則です。


\forall a\in A, \xi\in E\\
\quad \nabla (\xi\cdot a) = \nabla(\xi)\cdot a + \xi \otimes d(a)

ここで、ドットが2つとテンソル積記号が出てきますが、次の意味です。

  1. 左辺のドット: (\cdot):E \otimes_K A \to  E \In K\hyp{\bf Vect}加群の右スカラー倍)
  2. 右辺のドット: (\cdot): (E \otimes_A \Omega)\otimes_K A \to  E \otimes_A \Omega \In K\hyp{\bf Vect}加群の右スカラー倍)
  3. テンソル積記号: (\otimes) : E \times \Omega \to E\otimes_A \Omega A-係数の双線形写像

記号 '\otimes' は、ベクトル空間や加群テンソル積の意味と、要素レベルの積の意味でオーバーロード〈多義的使用〉されています。要素レベルの積は、次のような双線形写像です。

  • E \times \Omega \ni (X, \omega) \mapsto X\otimes \omega \in E\otimes_A \Omega

要素レベルのテンソル積(双線形写像)を線形化すると \id_{E\otimes_A \Omega} になります。このことをオーバーロードを使って表現すると:

  • (\otimes) = \id_{E\otimes_A \Omega} : E\otimes_A \Omega \to E\otimes_A \Omega

何がオーバーロードされているか(同じ記号で表現されているか)というと:

  1. テンソル積空間/テンソル加群
  2. 双線形写像
  3. 双線形写像の線形化である線形写像

混乱することがあるのでご注意ください。

ライプニッツ法則は、右スカラー倍に対して述べましたが、左スカラー倍を使うほうが多いかも知れません。加群の係数環〈スカラー環〉が可換なので、左右の違いは本質的ではないのですが、けっこう引っかかる原因になるかも知れません。様々なライプニッツ法則の形を比較検討する機会はいずれあるでしょう(今日はしない)。

コジュール接続のあいだの射:どう考える?

コジュール接続のあいだの射〈準同型写像〉をどう定義するか? これはずっと僕の悩みの種です。最初に思い付いた定義は、加群射のEPペア〈embedding-projection pair〉を使う定義でした。その後、色々と拡張とか修正とかしてみたのですが、あまりうまくハマりません。結局、EPペアを使う定義が“無難”という点では一番いいような気がします。今回も、EPペアを使う定義を採用します(不満がないわけじゃないけど)。

EPペアの圏の復習をします。\cat{C} を圏とします。この圏から新しい圏 EP(\cat{C}) を次のように作ります。

  • |EP(\cat{C})| := |\cat{C}|
  • EP(\cat{C})(X, Y) := \{(e, p)\in \cat{C}(X, Y)\times \cat{C}(Y, X) \mid e;p = \id_X\}

ここで、 e;p = p\circ e は圏の結合です。圏としての構造の残りの部分は推測できると思います。注意すべき点は、EPペア=(EPペアの圏の射) の向きは e の向きに合わせていることです。p の向きに合わせた場合はPEペアの圏になります。

  • PE(\cat{C}) := (EP(\cat{C}))^{op}

どんな圏に対してもそのEPペアの圏を作ることができますが、ここでは加群の圏に対してEPペアの圏を作ります。

コジュール接続の圏

R = (A, B, \Omega) を概リー/ラインハート代数として、(E, \nabla_E),\; (F, \nabla_F)R 上の2つのコジュール接続とします。E,\; F (ほんとは \u{E},\; \u{F} と書くべきだが)は定義よりA-加群です。

コジュール接続のあいだのコジュール接続射〈morphism of Koszul connections〉の構成素は、次のEPペアです。

  • (e, p):E \to F \In EP(A\hyp{\bf Mod})

EPペア (e, p) がコジュール接続射であるための条件は、次の図式が可換になることです。

\xymatrix@C+1.5pc@R+1pc{
  {E} \ar[r]^{e} \ar[d]_{\nabla_E}
  &{F} \ar[d]^{\nabla_F}
\\
  {E\otimes_A \Omega}
  &{F\otimes_A \Omega} \ar[l]^{p\otimes_A \id_\Omega }
}\\
\mbox{commutative in }K\hyp{\bf Vect}

共変微分A-線形ではないので、可換図式を考える圏はK-ベクトル空間の圏です。ただし、e,\; pA-線形写像加群射〉です。

加群のEPペア (e, p) がコジュール接続射であるための条件は次のように言い換えられます。

  • EPペア (e, p) により \nabla_F から誘導された共変微分\nabla_E と一致する。

“誘導された共変微分”とは、次のように定義される E 上の共変微分です。

  • \nabla' := (p\otimes_A \id_\Omega)\circ \nabla_F \circ e: E \to E\otimes_A \Omega

このように定義された \nabla' が共変微分になること、つまり、ライプニッツ法則を満たすことは次のように確認できます。


\quad \nabla'(\xi \cdot a ) \\
= ( (p\otimes_A \id_\Omega)\circ \nabla_F \circ e)(\xi \cdot a) \\
= (p\otimes_A \id_\Omega)(\nabla_F (e (\xi \cdot a) ) )\\
= (p\otimes_A \id_\Omega)(\nabla_F (e(\xi) \cdot a) ) )\\
= (p\otimes_A \id_\Omega)
   (\, (\nabla_F (e(\xi)) \cdot a + e(\xi)\otimes d(a)   \,)\\
= (p\otimes_A \id_\Omega)(\nabla_F (e(\xi) ) \cdot a 
   + (p\otimes_A \id_\Omega)(e(\xi)\otimes d(a) )\\
= ( (p\otimes_A \id_\Omega)\circ \nabla_F \circ e)(\xi) ) \cdot a 
   + (p\otimes_A \id_\Omega)(e(\xi)\otimes d(a) )\\
= \nabla'(\xi) \cdot a 
   + (p\circ e)(\xi) \otimes d(a) \\
= \nabla'(\xi) \cdot a 
   + \xi \otimes d(a)

\nabla'の定義とEPペアの定義を使っています。

加群のEPペア (e, p) がコジュール接続射であることは \nabla_E = \nabla' と同じことです。

コジュール接続射である2つのEPペアの結合〈合成〉が再びコジュール接続射になること、恒等EPペアがコジュール接続射になることはすぐに確認できるので、概リー/ラインハート代数 R 上のコジュール接続とコジュール接続射は圏を構成します。この圏を {\bf KoszConn}[R] 、基礎体 K まで明示するときは {\bf KoszConn}[R/K] と書きます。次のような構造の階層があります。

\xymatrix {
  {E = (E, \nabla_E)} \ar@{}[r]|{\mbox{in}}
  &{ {\bf KoszConn}[R/K] } \ar@{.}[dl]|{\mbox{over} }
\\
  {R = (A, B, \Omega)} \ar@{}[r]|{\mbox{in}}
  &{ {\bf AlmLieRineAlg}[K] } \ar@{.}[dl]|{\mbox{over} }
\\
  {K} \ar@{}[r]|{\mbox{in}}
  &{ {\bf Field} }
}

そしてそれから

今日定義した圏 {\bf KoszConn}[R] について調べる必要があるのですが、それを後回しにしてでも、構造の階層をもう一段積み重ねたいですね。そうすると、階層の図は次のようになります。

\xymatrix {
  {H = (H, \nabla_H, l_H, r_H)} \ar@{}[r]|{\mbox{in}}
  &{ {\bf TridKoszConn}[E/R/K] } \ar@{.}[dl]|{\mbox{over} }
\\
  {E = (E, \nabla_E)} \ar@{}[r]|{\mbox{in}}
  &{ {\bf KoszConn}[R/K] } \ar@{.}[dl]|{\mbox{over} }
\\
  {R = (A, B, \Omega)} \ar@{}[r]|{\mbox{in}}
  &{ {\bf AlmLieRineAlg}[K] } \ar@{.}[dl]|{\mbox{over} }
\\
  {K} \ar@{}[r]|{\mbox{in}}
  &{ {\bf Field} }
}

H はコジュール接続を拡張した構造で、乗法的微分計算の舞台となるものです。正方行列の掛け算、縦ベクトルと正方行列の掛け算、横ベクトルと正方行列の掛け算など(に相当する)様々な掛け算が自由にできて、それらの“量”に対する微分も自由にできるような構造です。

暫定案です(変わるかも知れないです)が、追加された階層の構造は三叉コジュール接続〈tridental Koszul Connection〉と呼ぼうかと。「三」はライプニッツ法則が新たに三つ追加されることからです。

*1:単位元はなくてもいいことが多いですが、当面は単位元ありの環を考えます。

*2:多様体上の接ベクトル場の空間はリー代数の構造を持ちますが、概リー/ラインハート代数ではリー代数の構造を仮定していません。