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圏論とコンピューティング・サイエンス(とか勢いで書いてみる)

20世紀の最後の20年ほどで、コンピューティング・サイエンスはある意味で爆発的とも言える発展をしたのですが、圏論はそれをささえた枠組み(の少なくとも1つ)だったろうと思います。例えば、代数/余代数の双対は圏論なしの定式化は考えにくいし、部分関数や例外を整合的に扱う方法もモナドなしでは難しいだろうし、一般的な型理論(indexed categories, fibred categories)も計算向きモデル論(institutions)もかなりマクロな圏論を使う必要があります。

僕は、非常に(嫌になるくらい:-))具象的なプログラミングやマークアップの世界でジタバタしてきたわけで、当然ながら、現場で「圏論のケの字」も口にしたことはありません。が、それでも無意識に(ときに自覚的に)カテゴリカルに考えることが多く、その意味で“隠れカテゴリスト”だったのです。個人的経験から言えば、泥臭い実務の場でさえアブストラクト・ナンセンス(ウルトラ・メタな方法)は有効に機能します。

いずれにしても、ここ四半世紀のコンピューティング・サイエンスの成果(の一部だけど)が、実務レベルではほとんど認知されてないし、ましてや応用もされてません。これでいいのか?という気はしますね。

とかいうと、「アカデミズムと現場にそのくらいのディレイがあるのは当然」という意見が出るでしょう。しかし、コンピューティング・サイエンスは新興科学ですから、現場からはるか先を走っているとは思えないのですよね。例えば(事情が違うのは承知で引き合いにだしますが)、博物学ではない生物学は新興科学でした。僕が高校生の頃、(教科書に載っていたのかどうか記憶は定かでないけど)ワトソン/クリックのDNA二重らせんの話は確かに聞きました。この事例では、発見から高校の授業までほぼ20年です。

実際問題としては難しい点は多々あるのですが、もうちょっと科学的にやれないものか、という感じがするのですよ。科学的とは、迷信、伝承、噂、星占い、根性、躾、軍隊、神風、詐欺などに頼らないことです(「ソフトウェア工学について思うこと」も参照)。