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参照用 記事

あーあ、こりゃダメだわ、郡司ペギオ-幸夫さん

ことの発端は、圏論勉強会二次会。「脳や生物に圏論を使っている人がいるよ」って話が出ました。それが、郡司ペギオ-幸夫さん。僕は「それは面白そうだ」と、かなり好奇心をそそられました。が、容易にアクセスできる資料がないんですよね。

でも、なぜか僕は、郡司ペギオ-幸夫さんの名前も神戸大学の先生であることも知っていたので、実は彼の新書本を持っているんじゃないかと、… … 探したけどないわ。たけをさんによると、郡司さんの書籍(新書じゃなくて大きな単行本)は、

これは『現代思想』の1994~96年の連載を単行本化したもののようで。

ん? 1994~96年じゃないけど、『現代思想』1999-4月号がありました。特集「システム論」てやつ。「システムの話なら読んでみるべ」とか思ったのかな? 実際のところ、システム論つっても、僕がイメージするものじゃなかったですけど。で、このなかに、「時計としての時間、または過去・現在・未来の起源」(p.120 - p.139)という郡司さんの論文記事がありました。第4節(p.130からp.136)は、なんかバリバリに圏論な記述だったんで、その主張を追いかけてみたんですが、… … これはダメです。

彼の発想や意見のなかには、まじめに理解し追求すべきものが含まれているのかもしれませんが、「圏論を応用している」とか「圏論を道具に使っている」とか、そういうハナシでは全然ないです。もうムチャクチャ。こういうふうな言及と記述の仕方では、衒学的アクセサリー、こけおどしと言われてもしょうがないでしょう。

グンニャリ、ゲンナリ、ガックリ。ぼのたけさん、内海さんの見解、あるいは忠告はあたっていたようです。

もし気力が湧いたら、なにがどうムチャクチャでダメダメかを解説するかも知れません(不毛な感じがするから、気力湧かないかもね*1)。タチが悪いと感じた一点だけ指摘しておきます。

解説の一部はちゃんとした説明になっているし、用語や記法も適切です。例えば、グラフから自由圏を生成する関手Fと、圏の構造を忘却する関手Uの随伴性は、次のようにキチンと書いています。

  • Cat(F(G), C) = Grph(G, U(C)) (=は同型のつもり)

こういうちゃんと書いてあることは、他の文献(標準的な教科書)にも載っているので、新しい知見は得られません(が、とりあえず正しい)。さて肝腎の、郡司さん独自の概念や推論になると、説明らしい説明がないのですよ。いきなり飛躍した結論に飛んでしまうのです。不注意に読んでいると、前段の正しい説明や式が、後段の飛躍した結論を合理化しているかのように錯覚してしまいます。

まー、なんつうか、雰囲気としては:
ピタゴラスの定理 a2 + b2 = c2 ってのがあります。これはですね、…(正しい説明)…。というわけで、リンゴ2個とバナナ2本はチキン二羽と等価なのです。

「リンゴ2個とバナナ2本はチキン二羽と等価」という言明自体は、ひょっとしてなんか意味があるのかも知れないけど、ピタゴラスの定理(これ自体は正しい)がその根拠だと言われても、「ハァーーーッ???」としか反応できないでしょ、そんな感じ。

かなり古い論文の数ページだけを読んでの印象なので、僕の見当違いである可能性はあります。たけをさんの注意書きをそのまま引用します。このエントリーにもこの注意を適用してください。

郡司さんという方をこの記事だけで判断するのは早計かも。以前も書きましたが、この数ページの記事だけでは材料が少なすぎますね。

その後の関連する記事:

*1:[追記]原文を引用してもどうせラチがあかないので、それはしませんでしたが、郡司さんのメチャクチャ解説のトピックである「余極限」を、もとの記号は保ったまま書き直す試みはしてみました→ http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama-memo/20081021/1224579369 ; でも、こんなことやっても別に意味ありません。「まともな教科書か論文を読め」で済む話ですわ。あー、バカみたい[/追記]