以下、パランパランとしたとりとめもない話。
よく知られている代数系を圏にまで拡張すると面白いことが起きることがあります。例えばモノイド圏は、モノイドのベースを圏にしたものですが、とても役に立ちます。
「僕がエフイチにハマる打算的理由(と、ステファネスク師匠)」とか「デカルト半環圏の定義を確認してみる(デカルト半環作用圏のために)」で述べた半環圏は、半環のベースを圏にしたもので、これまた役に立ちます。Catyの型システムはデカルト半環圏をモデルに持ちます。
クリーネ代数を圏にしたクリーネ圏は、非決定性の状態遷移プログラムを記述するときに、クリーネ代数より柔軟で自然な枠組みを提供します。デクスター・コォゼンが圏論なしで(あるいは圏論を避けて)やったことの一部はクリーネ圏で定式化したほうが(僕には)分かりやすくなります。
あるいはまた、基点付き空間の基本群より、(基点を特定しない)空間の基本亜群(fundamental groupoid)のほうが見通しがよいように思います。亜群は圏の一種です。高次のホモトピー群は、基本高次亜群(fundamental higher groupoid)に一般化されるようです。亜群を使うという手法は、ホモトピー型理論では基本的みたいだし。
一方で、圏じゃない代数系から圏を搾り出すこともできます。カロウビ展開圏(カロウビ包絡圏)の構成と同じ方法で、モノイドから圏を作れます; モノイドMのベキ等元の全体を対象として、{(a, x, b) | a, x, b ∈M, a, bはベキ等, afb = f} として射の全体と定義します。これで圏ができます。N = {0, 1, 2, ...} と掛け算から圏を作ると、対象が2つ、射が4つの小さな圏になってしまうので、もとのモノイドの情報はだいぶ失われますが。
圏から出発して、ベクトル空間や多元環(代数)を作る話もあります。群の群環を真似て圏環みたいなものが作れないか? と思ってウダウダ考えていたこともあります。
後で知ったのですが、ここらのことは、脈体(nerve)という形で一般的に定式化できるみたいです、今だに圏の脈体よく知らんけど。